まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

私の2023年を漢字一文字で表してみると

2023-12-30 18:19:56 | インド
2023年がもう終わろうとしている。本当はもう少し前にこれを書きたかったのですが、ぎりぎりになってしまいました。自分にとっての今年の漢字は「印」です。この一番の理由は、インドです。インドを漢字で書くと「印度」になり、一文字で表すと「印」になります。



今年は、かなりの比重でインドに関わってきましたが、歴史的にみてもインドに関わる出来事がありました。日本では、あまりマスコミで取り上げられなかったのですが、2023年はインドの年と言っても過言ではないでしょう。

1)2023年はインドの年



インドでは2023年にG20が開催されました。グローバルサウスの盟主として、共同声明をまとめ上げるのは至難の技と思われていた状況にも関わらず、インドは見事にまとめあげました。

そして月面着陸の成功。これは快挙でした。そして、今年、インドの人口が中国を抜き世界一に。これまで小学校から世界で一番人口が多いのは中国と教わってきた常識が、今年覆りました。またインド映画がアカデミー賞で作曲賞を受賞しました。これも快挙です。

今年、クリケットのワールドカップがインドで開催されました。残念ながら優勝はできませんでしたが、インドは世界ランキング1位の国としての実力を世界に見せつけました。また2028年のロサンゼルスオリンピックにもクリケットが公式種目として採用されることになりました。

科学、経済、文化の様々な分野で、インドが存在感を増した年だったと言えるでしょう。

2)インド大使館



今年は東京の九段にあるインド大使館に何度も通いました。いろいろとセミナーが開催されたからなのですが、20回くらい行きました。

インド大使館は、日本武道館や、靖国神社に近いお堀端にあります。大使館の施設は塀に囲まれていて、気軽には入れない雰囲気ですが、施設内に立派なオーディトリアム(シアター)があり、そこで様々なセミナーやイベントが開催されています。

また、今年は、ご縁があって、シビ・ジョージ駐日インド大使に招かれて、最上階にある執務室を訪問することもできました。ベランダからは武道館や千鳥ヶ淵の景色が一望でき、桜の季節の景色は壮観だったということです。

3)インドからの訪問者たち



今年はインドからも様々な方が訪日されましたが、その現場で立ち会うことができました。インド準備銀行総裁のシャクティカンタ・ダス氏や、グジャラート州のパテル首相、オディシャ州首相、ビハール州の政府関係者の方、インド東北地方の国会議員団の皆さんなど様々な方のお話を伺うことができました。

4)インド関係で著名人と会う



公益財団法人の日印協会という組織の会員になっているのですが、そこの主催の朝食会、昼食会などで、様々な著名人の方々のお話を聞くことができました。黒田日銀総裁、小野寺元防衛大臣、当時外務大臣だった林芳正氏、櫻井よしこ氏、上川陽子外務大臣などでした。

5)日印協会





日印協会とは、1903年に、大隈重信、渋沢栄一、長岡護美の3名が中心となって設立された団体で、日本とインドとの友好親善のための事業を行ってきました。



2023年の11月に新宿の中村屋で日印協会の会員交流会が数年ぶりで開催されたのですが、菅元総理やシビ・ジョージ駐日インド大使も出席されました。安倍元首相の後を継いで今年から菅元総理が日印協会の会長になっています。上の写真は私が撮ったものですが、こんなに近い距離で菅さんのお話を聞けるというのはすごいことでした。

6)日本で、世界で活躍するインド人経営者



日印協会の朝食会で、亀田製菓CEOのジュネジャ・レカ氏にお会いしましたが、今年は世界中でインド人経営者の活躍が光りました。



今年、スターバックスのCEOもインド人のラスクマン・ナラシムハン氏になりました。これ以外にもマイクロソフト、グーグル、アドビ、YouTubeなど世界の有名企業のCEOをインド人が務めていますし、英国のスナグ首相もインド人ですね。

7)話題になった印象派





今年は、いろいろな展覧会がありましたが、印象派は相変わらずの人気でした。私は、一昨年、原田マハさんの『ジヴェルニーの食卓』を読んでから、印象派には興味を持っていました。また数年前、シンガポールのナショナル・ギャラリーで開催されていた印象派の展示も鮮明に記憶に残っています。

「印象派」という言葉は、モネの『印象・日の出』(Impression, solely levant)という作品名から由来するのですが、英語、フランス語の"impression"という言葉と、日本語の「印象」という言葉が実にイメージが一致している気がします。

「印象」は心の中にイメージとしてくっきりと残すというような意味です。"Impression"も同じような意味の言葉ですね。

8)Hacoaのキーホルダーに印字



八重洲ミッドタウンにオープンしたHacoaのお店は、福井県鯖江市の木工ブランドなのですが、ここのキーホルダーがずっと気になっていて、いつか買おうと思っていたのですが、12月、ついに購入。名前を印字してもらいました。書体は選べたので、Century Gothicにしました。文字数の制限はなかったのですが、シンプルにしました。ささやかな贅沢です。



9)インボイス制度



「印」の漢字とはちょっと違いますが、読みが同じなので、「インボイス」も入れてみました。

今年の10月から「インボイス制度」が始まりました。私は個人事業主にはなっているし、「適格請求書」が発行できないと、仕事が発注できないケースも予測できたので、適格請求書発行業者登録をしました。消費税の納税などこれからどのようになるのかよくわからないこともありますが、何とかチャレンジしていきたいと思います。

10)インミン・ブルー



高校の後輩に日本画家の藤城正晴氏がいますが、彼から新たに発見されたこのブルーの話を聞きました。オレゴン大学の研究室で、偶然に発見された青だということです。Yはイットリウム、Inはインジウム、Mnはマンガンを意味しているそうです。この顔料を藤城氏が日本画に取り入れ、発表したのが「色景」というシリーズ。インミンブルーの青がこの画像だと十分に再現されていないのですが、青と白のミニマルな世界の中に、よく見ると白い雲のリアリティーが再現されているんですね。



北斎が彼の作品に取り入れた「ベロ藍」という色は、もともとはプロシャ(今のドイツ)の研究室で偶然生まれたプルシャン・ブルーという青でした。インミンブルーも絵画の世界で革命を起こしてほしいと思っています。

11)インベージョン



インベージョン=侵略も今年の重要なワードでしたね。ロシアとウクライナはいまだ決着がつかず、今年は新たにハマスとイスラエルの問題が浮上しました。長い歴史的背景があるので、簡単には片付かない問題です。

ところで、「印」という漢字の起源を調べてみました。



一番左の甲骨文字の解析では、この文字を「人を力で押さえつける仰臥させる行為」と定義しています。左上の三本の指のような形は「爪」を意味しているそうです。右側の部分は人が膝まづき、手を後ろ手にして仰け反っているようにも見えます。これは力で人を抑えつけるインベージョンと同じ行為を意味しているのではないかと思ってしまいます。

漢字は甲骨文字から始まって、金文、小篆というふうに進化して現代の漢字になっていくのですが、甲骨文字では仰け反っていた人が、金文や小篆では、前屈した背中を上から押さえつけられているかのように見えます。

「印」の意味は、上から抑えつけるという意味で、スタンプや印鑑を意味するようになるのですが、もともとは力や権力で圧迫するという意味が込められていたんですね。

12)インクルージョン



これまた「印」の漢字とは直接的な関連はないのですが、「インクルージョン」という言葉もまた重要なキーワードでした。日本だと「ダイバーシティー」(多様性)はよく使われるのですが、海外では「インクルージョン」も非常によく使われていますね。性別、年齢とか人種など、区別なく社会の一員として受け入れていくという考え方です。

今年、シンガポールで「&Juliet」というミュージカルを見ました。今まで見たうちで一番素晴らしいミュージカルと言っても過言ではないのですが、「インクルージョン」をテーマにした作品だったのではないかと思います。



ということで、ちょっと無理やりまとめてみた感じですが、今年のまとめとさせていただければと思います。無理やり何かを人に押しつけるという行為こそ「印」という漢字の起源なので、これでよろしくお願いいたします。

2024年が皆様にとりましても良い年となりますようお祈りいたしております。
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2023年のクリケット・ワールドカップで絶好のチャンスを逃したインド

2023-12-10 16:03:45 | インド
ODI形式による2023年クリケット・ワールドカップは、インドで10月5から開幕しました。クリケットの試合は伝統的な競技方法では5日間くらいかかるのですが、投球数等に制限を設け、1日(約7時間)で終了するようにした方式がODIです。さらに投球数を短くして約」3時間くらいで勝敗がつくようにしたものがT20という形式になります。こちらもワールドカップが開催されていますが、今年インドで開催されたものはODIのワールドカップでした。ODIのワールドカップは4年に一度開催されています。



10カ国が参加し、総当たり戦でグループステージを戦い、準決勝に進出したのは、1位インド、2位南アフリカ、3位オーストラリア、4位ニュージーランドでした。1位のインドは全戦全勝でした。名門イングランドは勝ち残れず、アフガニスタンはあと少しで準決勝に残れるところまで行きました。

準決勝を勝ち残ったインドとオーストラリア。その決勝戦は、11月19日に、グジャラート州のナレンドラ・モディ・スタジアムで開催されました。そこまで無敗で勝ち進んできたインドは、グループステージでオーストラリアに勝利しています。インドの勝利はほぼ確実でした。

世界ランキングの1位はインド。しかも10戦全勝。インドが準決勝でニュージーランドと戦ったのは11月15日、オーストラリアが南アフリカを破った試合は11月16日、決勝の11月19日まではインドのほうが1日分休養できています。オーストラリアは慣れない国での長期滞在で、しかも負傷者の数も多く、どうみてもオーストラリアは不利です。さらに、ここ数年、ワールドカップで勝利するのは、ほぼホスト国という事実もありました。

さらに2023年のインドは、いろんな出来事で国威が最高潮に盛り上がっている時です。



まず国際政治の分野では、今年インドでG20が開催され、モディ首相が政治的手腕を見せつけました。アフリカなどグローバルサウスをG20に引き込んだという功績が評価されていました。次にインドの無人探査機チャンドラヤーン3号が、8月23日に月面着陸に成功しました。南極に着陸したのは世界初でした。また人口が中国を抜き、インド映画のRRRがアカデミー賞で歌曲賞に輝きました。そして、クリケットでインドが勝利すれば、今年は大フィーバーになるはずでした。



さらに、決勝戦が行われるのは、モディ首相のお膝元のグジャラート州アーメダバード。13万2000人収容可能というこのスタジアムは、クリケットだけでなく、サッカーやフットボールの競技場と比べても世界トップクラスのスタジアムです。しかもそれが開催されるのが、インド最大の祭りであるディワリが終わった直後という盛り上がり最高潮のタイミング。

しかし、何ということか、インドはオーストラリアに敗北してしまうのです。オーストラリアはコイントスで後攻を選ぶのですが、先攻のインドは、次々とウィケット(アウト)を取られ、何とか50オーバーまで凌ぐのですが、ランの数は240。ウィケットの数は10でした。通常は打つのがうまい選手を前半に集めるのですが、インドは11人目の選手まで打順が回ってしまいました。

後攻のオーストラリアは、240以上のランを稼げば勝利となります。当初の予想ではインドは300以上のランを達成するとみられていたのですが、240は楽勝とは言わないですが、わりと達成可能な数字です。最初は、オーストラリアがそこまで行けないのではないかという感じもありましたが、二番手のトラビス・ヘッドがセンチュリーを達成します(100ランを稼ぐこと)。最終的には137ラン稼ぐのですが、規定投球数をまたずに241ランを達成して勝利してしまいました。



インドの落胆といったらありませんでした。勝てるはずの試合に、負けてしまったのですから。

インドのヴィラット・コーリが、今回のワールドカップを通してのMVPとして表彰されたのですが、決勝に負けていたのであまり嬉しそうではありませんでした。彼はこの大会で765のランを稼ぎ、ランの数ではナンバーワンでした。また平均ラン数も95.62というすごいものでした。ODIでの累積のセンチュリーの数(100ラン以上を達成すること)も、このワールドカップのニュージーランド戦で50を達成し、これまでインドのレジェンドのサチン・テンドゥルカルの記録を超えて、世界のトップとなっていました。



一回の試合で最も多くのランを稼いだのは、オーストラリアのグレン・マックスウェルでした。これはアフガニスタン戦で、負けそうな試合をこの選手の活躍で覆した試合でした。



あと、こちらはボウラー(投げる側)のランキング。いずれのカテゴリーもインドの選手がトップです。



インド選手の活躍は目覚ましいものがあったのですが、最後の決勝戦で不運に見舞われ、勝利を逃してしまいました。

ちなみに、今年、南アフリカで開催された女子T20ワールドカップもオーストラリアが優勝していました。



2024年に行われるワールドカップはT20が男女とも開催されます。男子が西インド諸島と米国の共同開催。女子がバングラデシュでの開催です。その翌年、はODIの男子がパキスタンでICCチャンピオンシップトロフィーという大会が予定されていますが、女子はインドでのワールドカップがあります。26年はT20ワールドカップの男子がインド・スリランカで、女子がイングランドで開催されます。27年は南アフリカ。ジンバブエ、ナミビアでのワールドカップ、そして28年はT20男子ワールドカップもありますが、ロサンゼルスオリンピックです。

2024年のT20ワールドカップ(男子)は、ロサンゼルスオリンピックの絡みもあって、アメリカがクリケットの国際舞台に登場してくるという重要なイベントになります。開催場所および時期はすでに確定しています。アメリカは3都市、西インド諸島は4都市で、期間は2024年6月4日から30日となります。参加国もすでに決まっています。

トータルで20カ国が参加するのですが、ホスト国は自動的に参加資格を持つので、アメリカと西インド諸島は参加します。また2022年大会での上位8カ国も自動的に参加。あとは国際ランキングの上位国から追加(今回でいうとアフガニスタンとバングラデシュの二カ国)。さらに地域予選の勝者が追加となります。日本はEAP(東アジアパシフィック)の地域予選のグループに入るのですが、2023年の予選で、EAPからはパプア・ニューギニアの出場が決まりました。

2024年女子T20ワールドカップはバングラデシュで開催予定ですが、参加国は、ホスト国としてバングラデシュが、2023年のワールドカップの上位6カ国(オーストラリア、イングランド、インド、ニュージーランド、南アフリカ、西インド諸島)、2023年のICCのT20女子世界ランキングから一カ国(パキスタン)残り二カ国は2024年に開催される予選を勝ち残った国となります。

この予選に参加できる国は、アイルランド、スリランカ、そして地域予選の勝者となります。日本は2023年の9月に行われたEAP(東アジアパシフィック)地区予選に参加したのですが、残念ながら勝ち残れませんでした。勝者はバヌアツでした。世界との壁はまだまだ高いですね。



こちらは最近のワールドカップ、そして今後の予定です。2028年にはロサンゼルスオリンピックでクリケットが公式種目で採用されています。世界ランキング一位という威信をかけてインドが金メダルを目指してくるでしょうが、オーストラリア、南アフリカ、ニュージーランドなども見ものです。もちろんクリケット発祥の国であるイングランドもプライドはありますし、アメリカ、西インド諸島は開催国の意地もあります。グローバルサウスの国の活躍も期待できますね。今後のクリケットの盛り上がりに注目していきたいと思います。

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インドで開催中のクリケット・ワールドカップ2023の途中経過ハイライト

2023-11-13 15:57:57 | インド
2023年10月5日から始まったクリケット・ワールドカップ(ODI)も予選リーグが昨日で終了し、いよいよ、上位4チームによる決勝トーナメントが11月15日から始まります。日本では全く報道されないスポーツですが、2028年のロサンゼルス・オリンピックには公式採用される競技なので、動向を知っておくことは重要かと思います。

現在行われているクリケットの試合はODI(One Day International)と言って、競技時間が7時間くらいかかる形式のものです。ロサンゼルス・オリンピックで行われるものは、T20Iという形式のもので、約3時間くらいの競技です。T20Iのワールドカップも別に開催されているので、ちょっと複雑ですが、今回インドで開催されているものはODIのワールドカップです。

全部で10カ国が参加しています。上位7カ国は次の2027年の出場シード権を獲得するのですが、それ以外の国は戦って参加資格を獲得しなければなりません。前回の記事で、「英国の最下位が決定」と大変失礼なことを書いてしまったのですが、その後、3勝したので、かろうじて7位に入れました。

参加国すべてと対戦するので、予選リーグは全部で9試合あります。一つのチームは、1日1試合しかできず、また次の試合は数日をおいて行われるので、かなりの長期戦になります。最初の試合から今日まで一月以上経っていて、この間、インド各地のスタジアムで開催されるので、インド以外の選手は相当大変なのではと想像します。移動も疲れるし、また食事の心配もあります。長期間だと、お腹を壊す心配もありますし、病気にかかる心配もあります。そんな中で、ヨーロッパの選手や、オーストラリア、ニュージーランドなどの選手が頑張っているのは、それだけで敬服に値します。

快進撃を続けるインド



インドは今回のワールドカップの予選リーグを一位で通過しました。9戦全勝です。一位のチームは、四位のチームと戦い、二位と三位が戦い、それぞれの勝者が決勝で戦うのですが、インドは、11月15日にニュージーランドと戦います。これに勝ったチームは、11月19日の決勝戦で頂点に輝くことになります。インドはどのチームにも勝っているので、王者になれる可能性は高いのですが、運もありますので、楽観はできません。

こちらは、現在までのところのデータです。



左上のHighest Scoreというのは、一つの試合の中で一人の選手が獲得したランの数です。オーストラリアのグレン・マクスウェル選手が、前の記事でも紹介した対アフガニスタン戦で達成した201ランという記録です。その横のMost Runsは累積のランの数。インドのスーパースターのヴィラット・コーリ選手が594というラン数を達成しています。そしてMost Wicketsというのは、ウィケットを倒したりして、相手をアウトにした数が最も多い投球(ボウリング)をした選手。オーストラリアのアダム・ザンパ選手がこれに輝いています。

左下の45というのは、予選リーグで行われた試合数が45ということです。あと、準決勝二つと決勝を残すのみとなっています。その右のHighest Inning Scoreというのは1イニングの最多得点となります。ODIもT20Iも1イニングしかありませんので、一つの試合の中でのチーム最多得点となります。これは南アフリカの428ランです。428の右にスラッシュ5と書いてありますが、これはウィケットの数(アウトになった数)が5であったということを示しています。アウトの数が10になれば、そのチームのイニングは終了ということになります。

その右のBest Win Performanceというのは勝率です。インドは9戦して9勝していますので、勝率は100%です。こちらが、勝率のランキングです。



上位7カ国に入れたのは、インド、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、パキスタン、アフガニスタン、イングランドでした。最下位は負け数はオランダ、バングラデシュと同じですが、点差でスリランカとなりました。

レジェンドとなったインドのヴィラット・コーリ選手



先ほどの2023年ワールドカップでの累積ラン数でNo.1となっているヴィラット・コーリ選手ですが、実質的にインドNo.1のレジェンドとなったという評判です。これまでインドのトップ・レジェンドといえば、サチン・テンドゥルカル選手でした。ヴィラット・コーリ選手は現役のトップ選手として記録を塗り替えつつあります。



また、ヴィラット・コーリ選手は、インスタグラムのフォロワーが、現在、2億6千万を超えています。スポーツ選手としては、Chiristiano Ronaldo(6億1千万)、Lionel Messi(4億9千万)に次ぎ世界の3位。Justin Bieber (2億9千万)や、Taylor Swift(2億7千万)にも迫っています。

注目すべきアフガニスタンの活躍



アフガニスタンは、惜しくも決勝トーナメントには進出できなかったのですが、10チーム中6位という記録でした。イングランド、パキスタン、スリランカ、オランダには勝利し、オーストラリアにももう少しで勝てそうでした。国情を思えば、スポーツをやっている余裕などないはずと思われそうですが、クリケットの快進撃が国に希望を与えているという見方もできます。

アフガニスタンは次のワールドカップへの進出もできますし、また来年アメリカ+西インド諸島で開催される予定のT20Iクリケット・ワールドカップでも是非、活躍してほしいと思います。

そして、今回のワールドカップでは、是非インドに勝っていただきたいと思っています。今年は、G20、月着陸、インドの人口が世界一になったこと、そしてインド映画『RRR』の快挙などインドの年なので、ワールドカップ世界一もそれに付け加えていただければと思います。
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クリケット・ワールドカップ2023でのアフガニスタンとオーストラリアの伝説の試合

2023-11-08 18:21:20 | インド
2023年10月5日から11月19日まで、インドでクリケット・ワールドカップが開催されています。4年に一度開催のクリケットODIのワールドカップなのですが、今年はインドが開催国です。世界の10カ国が参加して、インド各地で試合が行われているのですが、11月7日にムンバイで開催されたアフガニスタンとオーストラリアの試合が素晴らしかったので、それについて語っておきたいと思います。

その前に、クリケットと言ってもあまり日本では人気がないので、このワールドカップのこともほとんど知られていないので、まずこれについて説明しておきたいと思います。

クリケットの国際試合は以下の3つのフォーマットで行われています。



一番左の「テスト」というのがクリケットの最も伝統的な試合形式です。基本的に2チームのみの対戦で、5日間をかけて戦います。もちろんランチタイムやティータイム(英国発祥のスポーツなのでこれは重要)があります。

しかしこんなに長期間の試合では、ワールドカップのような試合は不可能です。で、試合結果が1日で出るようにODI(ワンデイ・インターナショナル)という試合形式ができました。投球は6球で1オーバーという単位になっているのですが、1イニングの投球数を300球(50オーバー)と制約することで、試合が1日(約7時間)で終わるようにしました。この投球数に達しなくても、アウトの数が10になれば、そのチームの攻撃は終了します。

ODIの形式によるワールドカップは男子が1975年から開始しました。女子のワールドカップは何とそれよりも早く、1973年に開始しています。今回、インドで開催されているのはこのODI男子のワールドカップで、13回目のものになります。参加国は10カ国。総当たり戦で、上位4カ国が準決勝に進みます。また上位7カ国は次の2027年のワールドカップ出場のシード権が得られます。

T20I(トゥエンティ・トゥエンティ・インターナショナル)というのはさらに試合時間を短くできるようにした試合形式で、1イニングの投球数を120球(20オーバー)と制限しています。こちらもアウトの数が10で攻撃は終了です。T20と最後のIを付けずに使われることも多いです。男子のT20のワールド・カップは2024年にアメリカと西インド諸島合同で開催される予定です。また2028年のロサンゼルスオリンピックで採用されるクリケットはT20Iのフォーマットで開催されます。



上の図は、男子の国別ランキングです。T20I、ODI、Testと3種類の世界ランキングがICC(国際クリケット連盟)のサイトに出ています。どのカテゴリーもインドが世界の一位です。ちなみに日本はT20Iでは世界ランキングは50位です。アジアやオセアニアは世界のトップクラスの国が揃っているので、オリンピックの予選を勝ち抜くのも大変です。

こちらは女子のランキングです。



女子は「テスト」の試合は行われないので、ODIとT20Iだけですが、どちらもオーストラリアが世界ランキングのトップです。日本は世界ランキングの51です。女子もアジア圏は強敵揃いですね。

さて現在インドで開催中のワールド・カップのお話です。



参加国は、インド、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、英国、オランダ、パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュ、スリランカの10カ国。まもなく準決勝が始まりますが、前回優勝国の英国はすでに最下位で敗退しています。インドは、これまで全勝している唯一の国で、準決勝進出をいち早く決めています。11月7日の試合でアフガニスタンに勝ったオーストラリアも準決勝に進むことが決まりました。

アフガニスタンがクリケットのワールドカップで活躍しているというのは、日本ではほとんど知られていない事実かと思います。アフガニスタンといえば、難民の話とか、タリバンの話ばかりで、クリケットが強い国という印象はほぼないかと思います。が実はクリケットの強い国なんですね。

今回のワールドカップでも、英国、パキスタン、スリランカ、オランダに勝利し、オーストラリアに勝てば、準決勝進出への希望があったのですが、残念ながら負けてしまいました。

オーストラリアとの試合に先立って、インドのクリケットのレジェンドのサチン・テンドルカルがアフガニスタン・チームを訪問したというニュースがありました。



中央のグレーのポロシャツを着た人物が、インドでは誰もが知る伝説のプレーヤーのサチン・テンドルカルです。インドのナショナルチームのキャプテンでもありました。どういう経緯で、彼がアフガニスタンチームを訪問したのかはわかりませんが、ニュース報道によれば、彼のアドバイスのおかげで、強敵オーストラリアを撃退するためのヒントを得たということです。

「遠くに飛ばす」とかは考えず、ボールに集中することが重要だというアドバイスだったそうです。そのおかげで、アフガニスタンのイブラヒム・ザドランは、この試合で、アフガニスタン・チームとしては初のセンチュリーを達成してしまうのです。



センチュリーというのは100ランということです。野球とかは「点」を競い合いますが、クリケットでは「ラン」を競い合います。野球だと走者がいない場合のホームランは1点ですが、クリケットでのホームラン(ノーバウンドで外周の境界線を超える)は6ラン、ゴロで境界線に到達した場合は4ランとなります。

一人のバッツマン(野球でいうバッター)はアウトにならない限り、延々と打ち続けられるので、ランを稼いでいけば100ラン=センチュリー達成も可能ということになります。しかし、センチュリー達成というのは快挙には違いありません。

イブラヒム・ザドランのセンチュリーのおかげもあって、先攻のアフガニスタンは291ランという圧倒的なランを稼ぎ出します。対するオーストラリアはこれ以上のランを達成できないと負けになってしまいます。これは相当なプレッシャーです。

バッツマンの後方のウィケットにボールを当てたり、ノーバウンドの飛球をキャッチしたりするとアウトになって、アウトが10になるとそれで攻撃が終了してしまいます。オーストラリアは数十球で次々とアウトを取られます。また球数もどんどん減っていきます。91ランの時点で、アウト数は7になってしまっていました。このままいけばアフガニスタンの勝利はほぼ確実でした。

ところが、ここで奇跡が起こります。オーストラリアの6番手の選手として登場したグレン・マックスウェル(Glenn Maxwell)が、まるで映画のような活躍をするのです。



何と、マックスウェルが201ランという歴史的な大記録を達成してしまうのです。しかも、途中、脚が痙攣して、走ることもままならない状態になってしまいました。しかし、彼はほぼ片脚で、6ランや、4ランを量産していきます。そして、ついにアフガニスタンに逆転勝利してしまうのです。規定投球数もあと20数球でつきる寸前でした。またあと3つアウトになればそこで試合は終了してしまうことろでした。信じられない展開で、オーストラリアの準決勝進出が決まりました。そしてアフガニスタンの準決勝への道が閉ざされました。

しかし、アフガニスタンがクリケットで頑張っているという事実、そしてこういう試合が行われたという事実を知ることができてよかったです。


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インドのG20におけるマルチラテラリズム

2023-09-20 17:29:41 | インド
2023年9月9日、10日の二日間、インドのニューデリーにてG20サミットが開催されました。今年は日本の広島でG7が開催されましたが、G20とは何か、インドのG20サミットの成果はどうだったのか、そして今回浮上してきた「マルチラテラリズム」というのは何なのかを簡単に解説してみたいと思います。

まずお断りしておかなければならないのは、私はインドに関する広告ビジネスの経験は長いのですが、国際政治の専門家ではないので、知識不足の点もあるかもしれないということです。しかしながら、今年の春先から、東京のインド大使館で開催されていたG20のための各種説明会に何度か参加していましたので、私なりの視点で語れるところも多いのではないかと思います。

G20とは?

先進国7カ国をメンバーとするG7に対し、新興国を含む20カ国で構成され、主に世界的な経済・金融問題を議論する場として1999年に発足した枠組みがG20です。2008年から、首脳会合(サミット)が開催されるようになりました。

参加の20カ国とは、G7(フランス、アメリカ、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、EU)に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコとなります。基本的には国の首脳が参加します。

また、20カ国以外にも、今回のG20サミットには、バングラデシュ、コモロ(アフリカ連合代表国)、エジプト、モーリシャス、オランダ、ナイジェリア、オマーン、シンガポール、スペイン、アラブ首長国連邦の首脳も参加。アジア開発銀行(ADB)、経済協力開発機構(OECD)、国際連合、世界銀行、世界保健機構(WHO)、世界貿易機関(WTO)などの国際機関も参加しています。

G20のサミットは、一年に一度、各国持ち回りで開催され、2022年はインドネシアのバリ、今年の2023年がインドのニューデリー、来年2024年がブラジルのリオデジャネイロでの開催となっています。

G20サミットでは、会議のまとめとして、首脳宣言が発表されるのですが、今回のインドでは、首脳宣言が初日に発表されました。実は、このサミット本番の前までに、様々な会議が事前に開催されていて、G20サミット本番は、まとまった成果を発表する場という位置づけなので、今回のように初日に発表するというのもありなんですね。

インドのマルチラテラリズム外交

G20の直前まで、首脳宣言がまとまるかどうかは危ぶまれていました。西欧諸国は、ウクライナ問題に関して、ロシアに対しての厳しい姿勢が示されないと、首脳宣言を認めないという感じでした。また、ロシアは、ウクライナ問題に関して一方的に追求される場合は、首脳宣言を認めない姿勢でした。グローバルサウスの国々は、先進国優先の影響で、自分たちの立場が軽んじられることは許せないという立場でした。

国と国との関係は込み入っており、すべての国を満足させられる首脳宣言は不可能ではないかと思われていました。しかし、結果としては、予想に反して、インドは、参加国を満足させられる首脳宣言を作り上げるのに成功しました。その裏には、様々な外交努力があったことと思います。

日本のマスコミは、首脳宣言は、ロシアへの非難を盛り込まなかったため、不十分な出来栄えだったと評しました。しかし、ロシアへの非難を盛り込んでいたら、ロシアはこれを認めることはなかったでしょう。そうなると首脳宣言が頓挫していた可能性があります。また、ロシアとの関係が深いインドとしても、ロシアを敵に回すような表現は避けたかったと思います。

最終的に、インドは、ロシアへの非難を盛り込まず、しかしながら侵略戦争への非難を盛り込む形で、万人が賛同できるような首脳宣言に仕上げました。参加していなかったウクライナは、この首脳宣言に不満を表明していたようですが、首脳宣言はG20サミットで承認されたのです。



上の画像が首脳宣言の表紙です。"Leaders' Declaration"が首脳宣言ということなのですね。首相や、大統領など様々な名前がありますが、それぞれの国を代表する指導者ということなんですね。

今回のG20サミットの背景にあったのは、インドの「マルチラテラリズム」という考え方です。日本語にすると「多国間主義」となります。多くの国との関係を重視した外交という意味です。

「ラテラル」("lateral")というのは、「側面の」とか「横の」という意味です。"Bilateral"と言えば、「二国間の」という意味になります。「マルチラテラル」というと、多くの国との関係を重視するということになります。

世界の政治は、多くの国のいろんな関係が複雑に重なり合って成立しています。二国間の関係は、他の国々に影響を与えます。ロシアと欧米の緊張感は、世界の経済に大きな影響を与えています。米中関係が悪化すると、日本にも大きな影響が出ます。

二国間の関係も多面的です。例えばインドと中国の関係で言えば、国境紛争があったりして、中国とは仲が悪いのですが、経済的には貿易相手国としては重要なパートナーです。そういう相反する関係が共存しています。

そういう多国間の関係に着目して、最適なバランスを考え、すべてのメンバーに対しての最適解を導き出す。特定国だけの利益を優先せず、全体としての最適解を見つけていくという考え方です。

SDGsの基本的な考え方に「誰も置き去りにしない」というのがあります。国際関係の中でこれまで置き去りにされてきたグローバルサウスの国々も、自分達をもっと対等に尊重してほしいという願望があります。今後の経済発展や、地球環境を考えるにあたって、グローバルサウスは益々重要になっていきます。

インドが提唱する「マルチラテラリズム」は、先進国だけでなく、グローバルサウスの国々をも満足させるためのものだったんですね。

首脳宣言で印象的だった言葉

首脳宣言は83のパラグラフからできています。その中で様々なことが語られているのですが、印象に残った言葉を、日本語と原文の英語で数点ご紹介いたします。



まず最初に前文の最初のパラグラフで登場してくるのがこの概念です。今回のG20サミットのテーマを文章で提示します。マルチラテラリズムの精神そのものなのですが、このステートメントに対しては、誰も否定することはできません。



貧困、不平等、気候変動、パンデミック、紛争などは今日地球規模の問題として人類に影響を及ぼしているのですが、とくにその皺寄せの犠牲になっているのが女性、子供など弱い立場にある人々ということですね。これに対しても異議を申し立てる国はないでしょう。また、アフリカやグローバルサウスの国は、「まさにその通り」と思ったことでしょう。



我々は共に、より良い未来を構築する機会を得ている。ということで参加国がすべて、前向きに問題解決に関わっているということを強調します。こういう機会に加わることができたアフリカ諸国やグローバルサウスが嬉しくなる表現です。



女性の活躍をアピールしているパラグラフです。インドでは、女性の教育レベルが低く、ジェンダー格差が存在しているのですが、それを改善するための取り組みを前文に入れています。これはインドだけでなく、世界各国の女性からは賛同を得られるステートメントです。



この8番目のパラグラフの「領土取得を追求するための武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならない」という部分は、ロシアのウクライナ侵攻を間接的に示しているのですが、これをロシアと限定せずに、一般論にしているところが味噌です。ロシア以外に、中国がもしも台湾に攻め入ることがあれば、それも大問題だし、いろんな国で起こるかもしれない武力行使を含めて一般論として非難しています。これはロシアと限定はしていないので、ロシアとしても基本的に認めてもよいのでしょう。ウクライナ侵攻は「領土取得追求のための行為ではない」と主張することも可能で、ロシアとしてはいろんな形で正当化することは可能です。

「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」という言葉で、核兵器を持つ国を威嚇しています。この数ヶ月前に、G7でモディ首相も広島を訪れていますが、そこで見た核の恐ろしさが、このフレーズの行間に存在しているのでは
ないかと思います。



パラグラフ14はこの短いセンテンスから成っています。「今日の時代は戦争の時代であってはならない」というのはとても印象的な言葉です。ウクライナでは戦争が行われているのですが、それに対するインドの立場、グローバルサウスの立場をも表しているのではないかと思います。感情的になって、殺し合うことよりも、助け合うことのほうが重要課題ではないのかと。



多国籍主義を再活性化しようと、首脳宣言は主張しています。「多国籍主義」というものが、世界史の中で、存在した時代や地域もあったかもしれません。ヨーロッパでも19世紀とかにもあったかもしれませんし、中国の春秋戦国時代なんかもそんな時代だったかもしれません。インドは諸外国との駆け引きの中で主導権を争いながら、同時に平和を実現していくという時代を生きているのかもしれません。

ニューデリーのG20サミットの首脳宣言は、哲学的、思想的でもあり、文学的でもあると感じるのは私だけでしょうか?仏教やヒンドゥー教を作りだし、ゼロを発見し、数学の基礎を作り出したインド。高度が教育を背景に、多くのグローバル企業のリーダーにインド人が成っている(英国の首相にも)、そしてその技術は月着陸さえも可能にしてしまう。そんな状況の中でこの首脳宣言を見ると、その行間に溢れる哲学、人類愛、宗教観を感じて、感動してしまうのです。

G20サミットに至るまでの道のり



上の画像は、東京の九段にあるインド大使館の建物ですが、今年の春先からG20のロゴのポスターが建物の外に掲示されていました。今年のG20のテーマは、"One Earth. One Family, One Future"というものでした。「ひとつの地球、ひとつの家族、ひとつの未来」というメッセージです。

ここに盛り込まれているのは、SDGsや環境問題で、みんなで力を合わせて地球を守っていこうという姿勢や、貧富の差や、飢餓などを含む南北問題、平和など様々なメッセージです。

今年の春先からG20関連の様々な情報共有会が東京のインド大使館で開催されていました。情報は英語のみで、日本のマスコミはほあまり参加していなかったようなので、日本での情報はかなり限定的でした。

こちらのスライドは科学関連の分化会で共有されたチャートです。



このスライドの一番上にあるのはG20の作業の流れというもので、これが3つの部分に分かれています。左からシェルパトラック、ファイナンストラック、そしてエンゲージメント10と記されています。

「シェルパ」というのは、もともとは、ヒマラヤ登山者のために、道案内をしたり、荷物を運んだりする役割の人間なのですが、翻って、山頂(サミット)を目指す指導者のために、事前準備を手伝い、登頂を成功に導くという意味になります。今までも、この言葉は使われてきたのですが、インドで開催されるG20サミットにおいては、「シェルパ」という言葉は実にリアリティーをもって響いたものと思われます。

「シェルパトラック」は13のワーキンググループと、4つのイニシアティブに別れます。13のワーキンググループは、農業、腐敗の防止、文化、デジタルエコノミー、災害リスク削減、開発、教育、雇用、環境と気候のサステナビリティー、エネルギー転換、健康、貿易と投資、観光。4つのイニシアティブとは、研究とイノベーション、宇宙経済リーダーズ会合、G20エンパワー、G20主席科学諮問者円卓会議です。

ファイナンストラックというのは、フレームワークワーキンググループ、国際金融アーキテクチャー、インフラワーキンググループ、サステナブルファイナンスワーキンググループ、金融包摂のためのグローバルパートナーシップ、財務・保健合同タスクフォース、国際課税アジェンダ、金融セクターの問題など9つのワーキンググループで構成されています。

そして、一番右の10のエンゲージメントというのは、B20(ビジネス)、C20(シビル)、L20(労働)、S20(サイエンス)、議会20、SAI20(最高監査機関)、スタートアップ20、Think 20, アーバン20、ウィメンズ20、ユース20の10の分化会です。

こちらは10のエンゲージメントの一つのアーバン20の説明会の様子です。



こちらの写真は、インド大使館のアーバン20の説明会の様子です。都市問題などを論じるアーバン20の分科会の取りまとめは、最終的には、グジャラート州のアーメダバードでの会議で行われました。そこにはアーバン20の参加都市の一つ東京の首長の小池都知事も参加しています。日本ではあまり話題になりませんでしたが。

アーバン20はアーメダバードでしたが、観光はゴアだし、他の分科会は、インドのいろんな場所で開催されました。その各分科会で取りまとめられた結論がG20のシェルパ会議で集約され、首脳宣言となっていくわけです。首脳宣言はG20のサミットで議論されたものをまとめたものではなく、この数ヶ月、各地の各分科会で議論されてきた論文をさらにまとめたものだったんですね。数多くの人々の大変な努力のおかげで、首脳宣言がまとまったわけです。

そんなことを理解して、G20を見ると、サミット(頂上とい意味)というのが、ヒマラヤの山のように聳えて見え、その頂上に翻るのが首脳宣言という旗であり、そこに登頂するために実に多くのシェルパたちが働いていたという絵が見えてきます。
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