まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

110階から見えていたマンハッタンの景色—あれから20年

2021-09-13 00:46:10 | トラベル
あの日から20年が経った。2001年の9月11日のあの事件が起きる約一ヶ月前の金曜日の朝、私はニューヨークのワールドトレードセンターの展望台にいた。この上の写真が110階の展望台から私が撮影した写真だ。

朝霧がかかった景色の中央に、エンパイヤステートビルがかすかに見えていた。そのずっと上はセントラルパーク。手前の低い建物が立ち並ぶ地域は、グリニッジビレッジや、ソーホー、トライベッカと呼ばれる地域。右手はチャイナタウン。

ここはマンハッタンがまさに一望できる場所であった。まさか、この一ヶ月後にこの場所が消えてなくなるなんて誰が予想できただろう。このビルの中にいて、命を失った多くの人たちは、こんな景色を見ながら仕事をしていた。やがて恐ろしい事件が起こるなんて想像することもなく。

もしも、その日が一月ほど早まっていたとしたら、あるいは、私のニューヨーク出張の予定が一月ほど遅れていたとしたら、と考えると恐ろしい。この展望台を訪れていることは、どこにも記録に残っていないから、行方不明者リストにも載らずに、失踪ということになっていたのかもしれない。

この階から少し下のほうに飛行機が突っ込み、火炎が迫ってくる。窓から真下を見下ろすと、目がくらみそうな高さだ。このビルにいて、亡くなった方達の目に、この景色はどのように映っていたのだろう。考えるだけでも恐ろしい。同時多発テロで犠牲になった多くの方々のご冥福をお祈りいたします。

その出張で私がニューヨークに入ったのは8月3日。広告写真の撮影のためだった。前日までインドで某カメラメーカーのコマーシャルの撮影をしていたが、シンガポールで一泊し、東京トランジットでニューヨークに到着した。



ニューヨークは以前、出張ではよく来ていたが、もう5年ぶりくらいになる。これまで何度もマンハッタンに滞在したが、この時初めてマンハッタンの南の地区のトライベッカに宿を取った。撮影場所がまさに、ワールドトレードセンターだったので、その近くがよいということで、コスモポリタンホテルという小さなホテルに宿泊した。



その撮影は、某日系ビジネス機器メーカーのインド向けの広告キャンペーンのものだった。国際的なイメージをアピールするために、様々な国籍の人間を100人集めて、ワールドトレードセンターをバックに撮影するというものだった。ニューヨークに入ってから、キャスティングの調整で、数日かかっていたが、撮影は8月6日の月曜日に無事に行われた。



広告は9月頭にインドの新聞や雑誌で出稿することになったが、同時多発テロを受けて、すぐに背景のワールドトレードセンターの画像を、別の建物に差し替えるということになった。この作業は淡々と行われ、広告はすぐに差し替えられ、広告はまもなく出稿された。



ホテルのそばに、消防署があった。何度もその前を通ったが、訓練をしている姿も目撃した。同時多発テロの時、この消防署の署員は真っ先に救助に向かったに違いない。救助に向かって命を落とした消防署員も多数いたと聞いている。

撮影の前に日本から来たスタッフと一緒に、ワールドトレードセンターの展望台に上がり、展望台のカフェで打ち合わせをすることにした。トップの写真はその時のものだ。建物に入る時、飛行場にあるようなX線チェックがあった。テロに対する警備がすでに強化されていたようだ。

スタッフの一人が持っていた日本からのお土産の缶入りのお菓子がX線でひっかかり、けたたましい音が鳴った。お菓子だということを説明し、建物に入れてもらえた。こんな厳しい警備をしていたが、飛行機が直接建物に突っ込んでくるなんて誰が想像できたろう。

110階の展望台には、土産物屋があり、コーヒーショップもあった。私たちは、クリームチーズのベーグルとコーヒーを飲みながら、そこで撮影の段取りの打ち合わせを行った。まだ朝の時間だったので、人はあまりいなかった。

911が来ると、その時のことをいつも思い出す。あれから20年。この事件で命を失った多くの人々のことを思うといたたまれなくなりますが、こういうことは二度と起きないことを祈ります。



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9月9日のヒョンビン対ジャッキー・チェンの戦い

2021-09-06 18:32:50 | 広告
9月9日は、EC (Eコマース)の世界ではとても重要な日です。11月11日は独身の日ということで、ECが圧倒的な売り上げの日として有名なのですが、9月9日も重要なのですね。中国語では、9は“jiu”と発音します。中国語は四声という4種類の抑揚があるので、日本語ではなかなか説明しにくいのですが、一旦下がって上がる感じです。

この音と同じ文字が「久」という漢字。9が二つ重なっているので、「久久」という言葉と同じ音になります。日本語だと「ひさびさ」ということになりますが、中国語だと、「長い間」とか「永遠に」というようなすごくいい意味になります。日本語では、9は「苦」を連想して、どちらかというと嫌われる数字ですが、中国語圏では、8と並んでとても縁起のよい数字なんですね。

というわけで、ECの世界では、9月9日は大きなセールが行われる日として重要になっているのです。

私はシンガポールに住んでいるのですが、8月中旬から9.9という文字をやたら目にしました。EC上でのセールの告知なんですが、シンガポールでもECが活況を呈していて、LazadaやShopeeというECが大々的な宣伝を展開しています。

今年の9.9対決は、Lazadaが、「愛の不時着」でお馴染みのヒョンビンをアンバサダーとして起用。



それに対抗して、Shopeeがジャッキー・チェンを起用しています。



この両者の広告対決は熾烈を極め、テレビ、ネット、屋外看板、バス広告などかなりの露出がありました。

しかも、この広告キャンペーンは、シンガポールだけでなく、リージョナルの展開ということで、東南アジア各国で展開されているようです。Shopeeのジャッキー・チェンのコマーシャルを下に添付しましたが、これを見るだけでも、シンガポール、マレーシア、フィリピン、タイで展開されていますし、何と同じコンテンツがポルトガル語でブラジルでも展開されています。

こちらがLazadaのコマーシャルです。



で、こちらがShopeeのコマーシャル。



コマーシャルの作りとしては、Lazadaのほうが作りが凝っていますが、アンバサダーの契約料としてはどっちがどっちなのでしょう。9.9はもともとは中国語の「久久」がルーツなので、中華圏でしか意味がないと思っていたのですが、Shopeeの例を見ても、中華圏とは関係なく、フィリピンとかブラジルで9.9のプロモーションをやっているのですね。

最近は日本からも越境ECということで、Shopeeなどもかなりプロモーションしていますが、現地では手に入りにくい商品も日本から直接郵送で販売されています。化粧品や、食品などが多いのですが、例えば、こんなのも売られています。

https://shopee.sg/-Direct-from-Japan-Kubara-Honke-Kayanoya-Atsuyaki-Tamago-no-Moto-Instant-Bouillon-for-Tokyo-Style-Japanese-Thick-Omelet-Made-in-Japan--i.510054814.13102495225?position=18

日本でも東京以外では買えない東京限定の茅乃舎の厚焼き卵の素などもシンガポールで入手可能になっているんですね。Shopeeの購買者は現地の消費者なんですが、現地在住の日本人でも重宝するような商品があったりするので、越境ECがどんどん発展してくれると私のような海外在住者には助かります。

海外で日本の商品を買うと送料もかかるし、かなり割高になるイメージがあるのですが、ある程度の金額以上になると送料無料というのも多く、日本とそんなに変わらない値段で(ものによっては日本よりも安く)買えたりするものもあるようですね。

こういう越境ECが盛んになってくると、国際的な販売の形態もどんどん変わっていくのでしょうね。若い人たちは、実際の店舗ではなくどんどんオンラインで購入するようになっていきます。コロナでステイホームが一般化し、買い物をオンラインでするというのが当たり前になると、国境に関係なくこういう商売が増えていくのでしょう。
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