まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

シンガポール2021年ナショナル・デー・パレードの音楽パフォーマンス

2021-08-29 17:11:07 | シンガポール
シンガポールは8月9日が独立記念日、「ナショナル・デー」は、祝日になっていて、大規模なイベントが行われますが、今年は、コロナ感染を避けて、少しずらして8月21日に開催されました。場所は、マリーナベイの水上ステージ、観客はかなり絞って行われました。前半はわりと儀式的なもので、後半はエンターテインメント的なものですが、シンガポールの一体感を確認するための一大イベントとなっています。



今年の後半はアニメと歌とダンスのショーでしたが、3人の男性歌手が、クィーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を歌い出してから、シンガポール大学のサテライト会場での学生たちのダンス、そして、メイン会場でのパフォーマンスから、5つの星が空中で、シンガポールの国旗の月と星を形作るまでの一連の流れが非常によくできていたと思います。

「ボヘミアン・ラプソディ」や、「ケセラセラ」、「We Shall Overcome」などの懐かしい曲が挿入されているのはすぐにわかったのですが、最初から最後まで流れているのは一つの曲なのだと思っていました。歌詞のところどころに“Wings”という歌詞が出ていて、シンガポール大学のグランドに描かれた翼の形や、メイン会場の翼のグラフィック、そして、5つの星とサテライト会場で描かれる月の形の人文字(文字ではないですが、絵文字とすれば文字ですね)がシンガポール国旗の形に決まるエンディングで流れる“Wings Are Made To Fly”という歌詞。テーマが一貫しているし、メロディーも、リズムも統一感があったので、一つの曲のように聞こえました。しかし、実は、全然違ういくつもの曲をつなぎ合わせたものだったのです。



たまたま東京オリンピックの開会式でも、スーザン・ボイスの「翼をください」の英語のカバー曲が使われました。これについては、私の記事をご参照ください。また、シンガポールのナショナルデーイベントの数日後に行われた東京パラリンピックの開会式。そのテーマが、“We Have Wings”というものでした。このシンガポールのこのパフォーマンスも“Wings”なので、偶然にも同じようなテーマが見事に重なり、しかも昨年頭に私が自分の会社に付けた名前が“Wings2Fly”(ウィングズ・トゥー・フライ)だったので、偶然ではありながら何か運命的なものを感じておりました。

シンガポールのこの“Wings Are Made To Fly”という歌詞を持つこの曲は一体なんという曲なのだろうと調べてみたのですが、なかなかわかりませんでした。ナショナルデーに参加した若者たちが歌っているからには有名な曲に違いない。こんな曲をオリジナルで作れるアーティストはシンガポールにはおそらくいないし、こんな曲が作れたらそれこそ世界的に話題になっているはず。

なかなか検索にひっかからなかったのですが、先週の金曜日の午後、偶然に歌詞の一部がヒットした時は、とても嬉しかったです。それは、10年くらい前に登場したイギリスのガールズグループLittle Mixの“Wings”という曲でした。(昔は4人でしたが現在は3人のようです)



Mama told me not to waste my life
She said spread your wings my little butterfly

という歌詞で始まるこの曲だったのです。サビの部分で、“Wings Are Made To Fly”という歌詞が登場しています。素晴らしい!このパフォーマンスを企画した人は、よくこの曲を持ってきたと思いました。

しかしいろいろと調べていると、この曲は重要な部分で使われているけれど、実際には、全く違う複数の曲がつなぎ合わされていて、一つの曲のように聞こえているのだということを発見しました。見事な構成です。どういう曲が実際に繋がれていのかというのをまとめて紹介しておきたいと思います。

まず、こちらが実際のパフォーマンスの動画です。シンガポール以外でも見られることを祈ります。前半が3人の男性歌手が登場するシーンです。



そして後半です。3人の女性歌手が、「ケセラセラ」で登場します。「ケセラセラ」の後、早着替えでLittle Mixの“Wings”となっていきます。



この中で使われていた原曲を、流れに従って、紹介していきたいと思います。



まず最初は、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」の導入部分。

Queen “Bohemian Rhapsody”



「ボヘミアン・ラプソディ」では、“Mama, just killed a man…”という母親への語りかけの歌詞が登場しますが、ナショナルデーのイベントでは、これは使われていません。しかしこの後に登場してくる3つの楽曲が、母親との会話を歌詞にしているところがまた素晴らしいです。「ケセラセラ」もリトルミックスの「Wings」も母親が言ったことがテーマになっています。導入の「ボヘミアン・ラプソディ」の母親への語りかけというテーマが、この後のいくつかの曲につながっているという構成が見事だと思いました。

そんな中で登場する次の曲は、パニックアットザディスコという米国のグループの“High Hopes”。歌詞の歌い出しが“Mama said”です。母親が言ったことというテーマが繋がります。

Panic! At the Disco “High Hopes”



そして、3人の女性シンガーが登場して歌うのが、懐かしのドリス・デイの「ケセラセラ」。



Doris Day “Que Sera Sera”



早着替えの後、リトル・ミックスの“Wings”です。



Little Mix “Wings”



“Wings”の歌詞にまざって聞こえてくるのが、“What’s wrong with being confident”というデミ・ロヴァートの歌う“Confident”という曲。

Demi Lovato “Confident”



そして、“We Shall Overcome”。懐かしい。昔の有名なプロテストソングですが、いろんな人が歌っていました。こちらはジョーン・バエズのバージョン。

“We Shall Overcome”



そして、トロイ・シヴァンの “Youth”。

Troye Sivan “Youth”



一瞬の静けさの中で聞こえてくるのは2005年のNDP(ナショナル・デー・パレード)ソングの“Reach Out for the Skies”という曲のワンフレーズ。



Rui En & Taufik, NDP 2005 Theme Song “Reach Out for the Skies”



そしてFunの“We Are Young”。

Fun “We Are Young”





そして最後のフレーズは、再び、リトルミックスの“Wings”の“Wings Are Made To Fly”という歌詞。全く別々の曲を切り貼りして、見事につなぎ、一つのパフォーマンスとしたのは見事です。古い曲もあれば、かなり新しい曲もあり、これらを国家的なイベントで使うというシンガポールの感度は素晴らしいと思います。



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ニューノーマルに向けて飛翔しようとしているシンガポール

2021-08-24 18:11:45 | 新型コロナウィルス
シンガポールは8月19日、入国規制を一部緩和するという発表をしました。ワクチン接種率が高まり、大規模感染拡大のリスクが少なくなったので、海外との人の往来を段階的に再開し、経済と国際ハブとしての地位を回復しようというのが狙いです。シンガポールでは重要産業である、観光、旅行、航空などの業界を一刻も早く救いたいという配慮もあります。

ドイツ及びブルネイに関しては、シンガポールとの相互の行き来が可能になりました。今後は、その国の状況によって、こういう国が増えていくものと思われます。日本からのシンガポール入国は、まだ2週間の隔離が必要で、入国許可申請なども必要ですが、隔離先は指定ホテルでなくてもよくなりました。大半の国は、隔離は指定ホテルのみで、さらにインド、バングラデシュ、ミャンマー、ネパール、パキスタンなどはシンガポールへの入国が認められていません。

シンガポールでは、クラスターがいくつか発生していたので、飲食店での店内飲食が7月22日から禁止されていました。その後、感染者が徐々に減ってきて、店内飲食が解禁されたのが8月10日なのですが、店内飲食できるのが、ワクチン接種完了者のみという条件が付けられました。

ホーカーセンターというエアコンの無い飲食スペースでは、ワクチン未接種者も飲食できますが、通常の飲食店は入店時にワクチン接種を確認されます。



シンガポールでは、スマホに入っているアプリで、ワクチン接種完了者かどうか識別できるようになっています。



こちらがシンガポールの追跡アプリのTrace Togetherの画面ですが、この左上に表示されているチェックマークがそれです。2回目接種終了から2週間経ってからこのマークが表示されます。各レストランや、フードコート等の入り口で、係員がこの表示を確認し、フードコートだと、ステッカーをつけられたりします。ワクチン未接種だと持ち帰りのみになります。

このTraceTogetherのアプリですが、昨年から使われていて、飲食店、オフィスビル、ショッピングモール、各店舗に入る際には、このアプリからQRコードをスキャンする必要がありました。



最近はQRコードの代わりに、こんな端末が設置してあり、アプリを立ち上げた状態で、スマホを翳すと、チェックインができるようになりました(QRコードのみの所もありますが)。チェックイン端末は、スマホやタブレットなどで行っているところもいくつかあります。



さらに体温測定も多くのところで行われています。人がいちいち体温計でチェックするのではなく、体温を測る装置が固定で置かれていて、入場者はおでこか、手のひらで体温を測り、熱がある場合は入れないということになります。

シンガポールは、追跡アプリは徹底的に活用しているのですが、ワクチン接種に関してもかなり強力にプッシュしています。8月22日時点で、人口の78%が2回目接種を完了しています。これは世界でもトップレベルの数値です。



コロナ感染が原因で重篤化したり、死に至るのはワクチン未接種者がほとんどだとわかっているので、政府は人命を救うためにワクチン接種をさらに推し進めています。

こちらは高齢者でまだワクチン接種をしていない人に語りかけるシンガポールのリー・シェンロン首相の動画です。



かなり強い口調で、「まだ接種をしていない人は接種してください」と訴えています。

日本のように「打つかどうかは自己判断です」とか「打たないという選択も自由です」などとは言いません。非常時で生命が危険にさらされている状況では、打たないという選択を積極的に認めたくはないのです。ワクチン未接種者は、やがて感染し、重篤化するというリスクを負い続けるわけですので、そういうリスクを最小限にしたいということなんですね。

ワクチン接種に関するデマを放置しないための対策はずっと行われてきましたし、副反応の不安よりもワクチン接種することの意味を強調することにより、ワクチン接種率を高めてきました。

シンガポールでは、ワクチン未接種者は、レストランで食事もできないし、コンサートやイベント等への参加も難しくなってきます。また旅行などもワクチン接種が条件となります。しかし国民の大半が接種完了することで、飲食が自由にできるようになり、結婚式や宗教的な儀式に参加できるようになり、スポーツ観戦や、コンサート、演劇、イベントができるようになります。そして経済は立ち直り、観光も、海外旅行も、出張もできるようになります。あくまでもワクチン接種という条件がつくのですが。

日本はまだワクチン接種完了者が40%程度です。ということは半数以上の人がコロナに感染するリスクを負っているということで、非常事態宣言を何度も出し続けなければいけない状況が続くのです。日本政府はもっと必死になってワクチンを確保しないといけないし、国民の命を守るための努力を続けなければならないのだと思います。
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東京オリンピック2020の余韻と波紋

2021-08-14 15:15:42 | オリンピック

オリンピックが終了しました。私たちの多くはまだその余韻の中にいます。すでに選手たちも自国に帰りましたが、世界各地で、オリンピックに纏わるエピソードが報道されています。たまたま入手したものをご紹介してみたいと思います。

昨日(8月13日)シンガポールの新聞を見ていたら、オリンピックに関連するいろんな記事が出ていました。シンガポールの代表的新聞である“The Straits Times”に出ていた記事です。



100メートルハードルで金メダルに輝いたジャマイカのパーチメント選手は、準決勝のレース当日、誤って競泳会場に向かってしまったのですが、たまたまそこにいたボランティアがタクシー代を出してくれたので、何とか競技に間に合ったという話です。後日、パーチメント選手はこの女性を探し出し、タクシー代を返済して、決勝で獲得した金メダルを見せ、ジャマイカのユニフォームを渡して感謝を伝えました。一連の様子を収めた動画がこちらです。

https://www.instagram.com/tv/CSRl4aqhYXP/?utm_source=ig_web_copy_link

この記事によれば、そのボランティア(実際はボランティアではなく、近畿日本ツーリストが委託したオリンピック関係スタッフのようですが)の女性の名前は“Trijana”(トリヤナ)で、日本人とセルビア人のハーフ。パーチメント選手のツイッターを見たジャマイカの観光大臣のエドマンド・バートレット氏(Edmund Burtlett)は、Trijanaさんにジャマイカ旅行をプレゼントすることをオファーしたとのことです。そしてそれに答えて、Trijanaさんが、ジャマイカのユニフォーム姿をインスタグラムにアップしたのですが、それが上の新聞に出ていた写真です。この話題、世界中に拡散されています。

こちらにもその記事が出ています。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/trijana_jp_61164842e4b07b9118a9de85

この記事以外にも、ネットを見ていると、各国選手から日本への感謝、ボランティアの対応に感動したとのコメントなどが数多く寄せられています。招致活動の時の“Omotenashi”が実証されたということですね。

また、メダルを獲ったインド選手が凱旋した様子もシンガポールの新聞の記事になっていました。一ページ全部がインドの記事です。インド国内では大フィーバーになっていますね。



そしてこちらは、本国シンガポールの記事。シンガポールは、残念ながら一つもメダルを獲れませんでした。そのためネットで選手への誹謗中傷が拡大しているので、シンガポールのハリマ・ヤコブ大統領が警鐘を鳴らし、選手に対しては、「オリンピックで頑張った皆さんは我が国の誇りです」と一人一人に語りかけたということです。



また、女子アーチェリーで金メダルに輝いた韓国のアン・サン選手が、韓国で誹謗中傷を受けているというニュース。何と「短髪」であるからという信じられない理由です。金メダル剥奪を迫っているとのこと、何と恐ろしいですね。



また、新聞に出ていた記事ではないですが、女子砲丸投げで金メダルを獲得した中国の鞏立姣選手に対し、中国中央テレビ(CCTV)は鞏選手を「男性的な女性」と形容し、「いつ結婚して子どもを持つのか」、「女性の人生の計画」があるのかどうかなどの質問をして顰蹙を買っているというのもネットで話題になっていました。日本の元野球選手が女子ボクシングに対してテレビで行なった問題発言もありましたが。



さらに、別のニュースで、台湾の人気スターの「小S」こと徐熙娣(ディー・スー)が地元の台湾選手ばかり応援する投稿をSNSにあげていたことから、中国での大手スポンサー契約が解消になったというのがありました。



中国本土で人気の芸能人は、もともと台湾とか香港の人が多かったので、有名ブランドのアンバサダーにも数多く起用されているのですが、オリンピック が関係するとこういうところにも問題が出てくるのですね。

ここで取り上げたのは、ほんの一部です。いいエピソードもあれば、悲しいエピソードもあります。日本はコロナ感染拡大と、経済への打撃でいろいろ大変ですが、オリンピックの余韻と波紋はじわじわと世界に広がっています。日本のいいイメージも広まっていてくれることを祈ります。
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人類が力を合わせて困難に打ち勝った証、としての東京2020

2021-08-12 17:58:55 | オリンピック
東京オリンピック2020が終了しました。コロナ感染拡大をはじめ、運営組織の問題など様々な問題がありましたが、多くの選手がコメントしているように、また、事後調査の結果にもあるように、「開催してくれてよかった」と思いました。

実は、私自身はオリンピックにはあまり乗り気がしていませんでした。多くの日本国民もそんな気分だったかと思います。私はシンガポールにいるのですが、シンガポールの新聞、The Straits Timesなどの論調も、オリンピックに関してはかなり否定的なトーンでした。シンガポールだけでなく、BBCやニューヨークタイムズなど、各国の主要メディアもネガティブな論説を展開していました。



私は、もともと、東京がオリンピック招致に参加した時から、あまり乗り気ではありませんでした。オリンピックを招致するための大義が感じられなかったからです。何故、日本で、東京でやらなければならないのか?そこのところが腑に落ちませんでした。「復興五輪」というメッセージも、日本のためだけに世界を利用するという雰囲気があって、なんとなく違うんじゃないのかなと思っていました。



しかし、オリンピックが始まって、開会式を見た瞬間に、私の気持ちが急変します。コロナ禍を乗り越えて東京に集まってきた205の国と地域の選手たち。そして、難民選手団。よくぞこれだけの人々を世界中から集められた。なんだかんだ言われながら、よくぞこのイベントを実現できた。嬉しそうに入場してくる選手たちの笑顔を見た瞬間に、私は、オリンピックをこの時期、東京で開催することの「大義」を発見したのです。

コロナという感染症のおかげで、世界は大変な目に遭いました。世界中で多くの人が、人種や、文化や、宗教や、貧富の差に関係なく、同じ病気で苦しみ、多くの命が失なわれ、多くの人が仕事を失い、希望を失いました。旅行ができなくなり、打撃を受けた業界は数多く、経済も打撃を受けました。ロックダウンや、様々な規制で生活も不便さを強いられました。

歴史上まれにみる困難の中にありながら、逆境を乗り越えて実現したオリンピック。それを開催することによって、人類はどんな困難にも打ち勝つことができるということを証明できる。人類はコロナには決して負けたりしない。それだけのレジリエンス(強靭な忍耐力)を持っている。それを世界に発信し、人々を勇気づけ、ともに力を合わせて、コロナと戦っていこう、共存していこう。人類はそんなにひ弱ではない。力を合わせれば打ち勝てる。やればできる。それを実証する場所が、この東京オリンピックなのだ。それこそが東京でオリンピッックを開催することの大義なのだ、と感じたのです。

「おもてなし」をアピールしていた招致活動のときには見えなかった「大義」が、東京2020の開会式の選手入場を見てはっきり見えた気がしたのです。

橋本聖子会長は「今こそ、アスリートとスポーツの力をお見せするときです。その力こそが、人々に再び希望を取り戻し、世界を一つにすることができると信じています。世界は皆さんを待っています。私たち組織委員会は、半世紀ぶりとなるこの東京大会が、後世に誇れる大会となるよう、最後までこの舞台を全力で支えて参ります」と開会式で涙目で語りました。大人の事情が渦巻く組織委員会と政府と東京都の間で大変なご苦労があったことと思います。本当にお疲れ様でした。あまり、真剣に聞いている人は少なかったかもしれませんが、私はこの言葉の行間に「大義」の存在を感じていました。



東京オリンピックのテーマとして、「より速く、より高く、より強く」に付け加えて“Together”という言葉が加えられたのは象徴的でした。“Faster. Higher. Stronger”は、文法的には比較級です。“Together”は語尾が同じ音ですが、比較級ではありません。が、まるで「(これで以上に)共に」という比較級のように感じたのは私だけでしょうか。

この開会式の画像をあらためて見てみたら、これら4つの単語の上下に引かれていた線は5つの色。五輪の色の青、黄色、黒、緑、赤の五色だったのです。もともとの五つの大陸という意味に、競技を競い合いながら、共にあるという意味が付加されたのだと自分なりに勝手に解釈しました。

生まれはアフリカや、中国でありながら、様々な国に帰化して、それぞれの国の代表としてオリンピックに参加している選手も沢山いました。難民選手団など国を代表していない選手たちもいました。5つの大陸という区分がほとんど意味を持たないグローバルな時代に我々は生きているのだとあらためて思いました。

オリンピックのYouTubeチャンネルに、“The most emotional moments at Tokyo 2020”というタイトルの動画がアップされていましたのでシェアさせていただきます。オリンピックでの感動的なシーンをつないだものですが、勝ったシーンだけでなく、負けたシーンも入っているのが感動的です。

https://youtu.be/oR7OnwwB1fo

素晴らしい編集です。素晴らしいシーンが満載ですね。

自分でも、オリンピックで印象に残ったものをいくつかの切り口でまとめてみました。

Togetherを感じたシーン



国や人種を超えて、喜びを分かち合うシーンが多々見られました。スケートボード女子パークで、惜しくもメダルには届かなかった岡本碧優(みすぐ)選手を他の選手が集まって健闘を讃えるシーン、男子800メートルの準決勝でボツワナとアメリカの選手が接触して倒れた後、二人で仲良くゴールするシーン、男子走り高跳びで、カタールのムタズエサ・バルシム選手と、イタリアのジャンマルコ・タンベリ選手がそろって金メダルを獲得したシーンなど、みな“Together”を象徴していますね。これ以外にも、いろんな競技で、国を超えてお互いを讃え合うシーンは数えきれないくらいありました。開会式の選手入場の際の旗手が男女ペアだっただったのも“Toghether”を象徴していました。選手の女性比率も48.6%と史上最も高かったそうです。

限界を超えたシーン



コロナ禍でありながら、しかも高温多湿の真夏の東京というスポーツには適さない状況でありながら、世界記録が続々と出たことは奇跡的です。暑さに強そうな国の選手だったらわかるのですが、陸上男子400メートル障害でノルウェイのワーホルム選手が世界新で金メダルを獲ったのは衝撃的でした。他にノルウェイ選手のトライアスロン金メダル、ポーランドやイタリアの陸上での活躍など素晴らしかったですね。

日本の美学を感じたシーン



敗者にも敬意を払うとして、試合に勝っても決してガッツポーズをしなかった柔道の大野将平選手はカッコいいと思いました。負けた相手はそれだけで落ち込んでいる、勝った喜びを示すことで敗者はさらに落ち込むとして、戦った相手に思いやりを示す柔道の姿勢に武道のスピリットを見た気がしました。

また、このオリンピックを最後のレースと決めて、ストイックに走り終えた大迫傑(すぐる)選手。メダルには届かなかったですが、見事な走りでした。走りだけでなく、生き方がカッコいいですね。

笑顔でスポーツを明るくしたシーン



今回のオリンピックは、涙もありましたが、笑顔も溢れていました。メダル獲得という悲壮感がなく、スポーツを楽しんだ結果メダルがついてきたというシーンが多くありました。中でも女子バスケットボール。たまたまチームのキャプテンの高田真希選手や、馬瓜エブリン選手が豊橋出身ということもあり、応援していたのですが、体格のハンディをものともせず、最後は銀メダルを獲ってしまいました。決勝戦で負けても非常に清々しい見事な負け方でした。試合を楽しんでいた、という選手のコメントにも感動しました。

陸上女子やり投げで57年ぶりに決勝に進出した北口榛花(はるか)選手も、惜しくも入賞できませんでしたが、その存在自体が素晴らしかったです。私の妻も絶賛していて、妻の実家の親も弟も、みんな「かわいい!」と言って応援していました。こういう人たちの活躍で、オリンピックが非常に明るい雰囲気になったと思います。

オリンピックを振り返ると、反省すべき点もあるのですが、結果としては素晴らしかったと思います。コロナの感染に拍車をかけたと言う人が多いかと思いますが、それはオリンピックが要因ではなく、もともと日本の対策に問題があったからです。外国から持ち込まれた感染よりも、日本国内の感染が問題でした。外国人選手に感染者も出ましたが、バブル方式は極めてうまく機能したと思います。それよりも日本のワクチン接種率が低すぎたことが問題だったと思います。オリンピック後の感染拡大をオリンピックのせいにしてほしくはないと思います。

「日本でなければオリンピックを開催できなかった」という声も世界のあちこちから聞こえてきましたが、たしかにそうだったかもしれません。破綻しそうになりながら、最後まで諦めず、実現に漕ぎ着け、そして見事な成果を残したということができるでしょう。やがてコロナが収束し、未来から東京2020を振り返った時、人類が困難に打ち勝った証として記憶されていることを祈ります。
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東京オリンピックで頑張ったインドの選手たち

2021-08-09 20:30:33 | オリンピック
東京オリンピックも無事に終了し、インドは金メダル1、銀2、銅4という結果でした。終わってみれば史上最多のメダル数で、インドとしては善戦したと言えるでしょう。過去、世界第二位の人口のわりに、オリンピックではメダル獲得が少なく、スポーツ弱小国と蔑まれていたインドでした。

インドのメダル数は2004年のアテネでは1、2008年の北京では3、ロンドンで6、リオで2でした。金メダルは2008年の北京以来、獲っていなかったので、今回の東京で獲れたことは素晴らしい成果だったと思います。

インドは5月上旬に感染者数が1日40万人を越える事態となり、その後急速にピークアウトしていったものの、インドで発見されたデルタ株が世界に蔓延し、インドは世界中から警戒される国となってしまいました。

5月前後には、競技によってはオリンピックに参加するためのアジア予選が開催されたのですが、インドからの入国を禁止する国が多く、予選に参加できず、オリンピック参加を諦めざるをえなかった選手も数多くいました。

例えば、カヌーは5月にタイでアジア選手権が開催されたのですが、インドのカヌー選手の男女9人は、インドからタイへの入国が認められず、オリンピックへの夢がその時点で潰えたのです。また、バトミントンも5月にマレーシア・オープンが開催され、国際大会での実績が必要不可欠だった選手も、マレーシアに渡航できず、結果、オリンピックへの切符を手にいれなかった選手もいました。これ以外にも同様のケースはあったかもしれません。

事前の海外での試合に参加できずに涙を吞んだ選手もいれば、感染がピークを迎えていた5月のインドは、思うように練習ができない状況でした。一時はインドからは、オリンピック選手団を東京に送りこむことはできないのではないかとさえ言われたりしていました。

日本はインドから選手団の入国を認めましたが、インドからの選手には三日間の隔離を義務付けました。ワクチン接種完了や、毎日の検査という条件もあり、また、選手村に入るには5日前からという制約もある中で、三日間の隔離はさらなる障壁でした。

しかしながら、そんなハンディを乗り越えて、インドからは18競技で115選手が参加することになります。



オリンピックの開会式に登場したインド選手団の旗手を務めたのは、女子ボクシングのメアリー・コム選手(Mary Kom, 1983年3月1日生まれ)と、インドホッケーチームのキャプテンのマンプリート・シン選手(Manpreet Singh, 1992年6月26日生まれ)でした。

女子ボクシングの女子フライ級に出場したメアリー・コム選手に期待をしていました。ロンドンで銀メダルに輝いた彼女はすでにインドでは大スターでした。インドの東端のマニプル州出身のメアリー・コム選手は、キリスト教徒でもあり、インドの中では少数民族に属しているので、インド人から人種差別の対象にもなっていたようですね。2014年に彼女の半生が映画化されたのですが、プリヤンカ・チョープラが主演した感動的な作品でした。





現在4人の子供の母親でありながら、東京オリンピックに参加して、惜しくも判定で負けてしまったのですが、是非勝って欲しかったです。

金メダルに輝いた男子やり投げのニーラジ・チョプラ選手




8月7日の男子やり投げで、87.58mという記録を出したニーラジ・チョプラ選手(Neeraj Chopra, 1997年12月24日生まれ)は金メダルを獲得。陸上ではインド初で、今回初めての金であり、10年以上金メダルを獲得していなかったインドには待望の金でした。すでに、チョプラ選手は地元ハリヤナ州パニパットだけでなく、インド全体のスーパー・ヒーローになっていています。

インドのモディ首相もチョプラ選手に祝福の電話もしているし、ツイッターでも賛辞を送っています。



銀メダルを獲得した女子重量挙げのミラバイ・チャヌ選手




オリンピックが始まってすぐの競技、女子重量挙げ49キロ級で、マニプル州インパール出身のミラバイ・チャヌ選手(Mirabai Chanu, 1994年8月8日生まれ)が銀メダルに輝きました。ピザ好きの彼女に対し、ドミノピザは生涯無料のピザを贈ることにしたというニュースが出ていましたね。メアリー・コム選手と同じマニプル州出身ですが、新たなスターの出現です。

レスリング57キロ級で銀を獲得したラヴィ・クマール選手




ラヴィ・クマール・ダヒヤ選手(Ravi Kumar Dahiya, 1997年12月12日)は、ハリヤナ州ソニパットの出身ですが、レスリング57キロ級で銀メダルを獲得しました。

女子バドミントンのシンドゥー選手が銅メダル



女子バドミントン・シングルスで、PVシンドゥー選手(1995年7月5日生まれ)は銅メダルを獲得しました。ハイデラバード出身のシンドゥー選手は、リオで銀を獲得していて、すでに有名人。東京では金メダルが期待されていましたが、銅メダルでした。

女子ウォルター級ボクシングのロブリナ選手も銅メダル



アッサム出身のロブリナ・ボルゴハイン選手(Lovlina Borgohain, 1997年10月2日生まれ)は女子ウォルター級ボクシングで銅メダルを獲得しました。

男子ホッケーで銅メダル獲得




インドは世界ランキング3位でありながら、ホッケーでメダルを獲得したのは、1980年のモスクワ大会が最後ということで、今回のメダル獲得は41年ぶりの大ニュースでした。インドはクリケットがダントツの人気スポーツなのですが、2021年8月に入ってから、Google検索で、ホッケーがクリケットを抜いたとのことです。

またメダルに届かなかったのですが、女子のホッケーチームも善戦し、モディ首相は、ホーッケーチームに祝福のツイッターを送っています。



レスリング65キロ級のバジャラン・プニア選手も銅メダル



ハリヤナ州出身のバジャラン・プニア選手(Bajarang Punia, 1994年2月26日生まれ)は男子レスリング65キロ級で銀メダルに輝きました。

惜しくもメダルを逃した女子ゴルフのアディティ・アショク選手




女子ゴルフで最終日までメダル圏内かと思われたアディティ・アショク選手(Aditi Ashok, 1998年3月29日生まれ)は惜しくも4位となり、メダルに今一歩のところで届きませんでした。一打差で二位タイのプレイオフに入れたので実に惜しい。世界ランク200位でありながら優勝争いに絡んだのはすごいです。

バンガロール出身で、5才からゴルフを始めたというアディティ・アショク選手は、リオにも参加しているのですが、5年間コーチに付かず、自力でトレーニングしていたというのがすごいです。



また、キャディーを務めていたのは母親のマヘシュワリ(Maheshwari)さん。さらに、今年の5―6月にコロナに感染していて、病み上がりで練習もほとんどできていなかったようです。飛距離があまり出なかったのもそんな理由があるようです。そんなハンディを抱えていながら、4位に入賞できたのはすごいですね。メダルを取らせてあげたかったです。

モディ首相は、インドは今後スポーツに力をいれて、もっとメダルを取れるようにすると言っているようです。これまで国もあまりアスリートを応援してこなかったし、設備も、指導陣も、国の支援も十分でなかったことを問題視しているようです。インドが本気を出してオリンピックに挑戦してきたら、すごい選手が続々と出てくるのではないかと思います。頑張れ、インド!


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