半年くらい前、「旅芸人の記録」で有名なテオ・アンゲロプロス監督の「蜂の旅人」というDVDを観ました。1986年ギリシャ・仏・伊合作で、10年後フランス映画社配給で公開されていたそうです。内戦などギリシャの現代史を知らないので、今ひとつと言うかもうちょっと難しい所があります。
監督の名前をつぶやいてみると、タキ・テオドラコプロスの名を思い出しました。
日頃、濫読の気味があり何だか関係ないものまで読んでいて、最初タキの「ハイ・ライフ」(井上一馬訳)もそんな感じで読んだ一冊だったと思います。
“Princes, Playboys, & High-Class Tarts”の原題からイメージされるとおり、上流社会のゴシップを面白おかしく書いてありますが、当初その後読み返す事もなさそうな縁の無い話に思えました。
何しろオナシスをこきおろすほどのギリシャの海運王の息子だそうです。
“第一次世界大戦の直前、ボニー・デ・カステラーネ伯爵邸で催された内輪のパーティの席上、晩餐の席についていたさるフランスの貴婦人は、突然気分が悪くなり自分はこのまま死ぬのではないかと思った。その婦人はウェイターを呼ぶと耳許でこうささやいたという。「急いでデザートを持ってきてちょうだい」
これは、死の直前まで食い意地には勝てなかったということではない。婦人は単に、列席者が席を立つ前に死なないよう、食事の進行を急がせたということにすぎない。言いかえれば、まだ生きてる人に面倒をかけたくなかったということだ。いうまでもなく、この婦人はスタイルを持っている。”
上記は「スタイルとは何か?」という話の冒頭ですが、別の章で「紳士にふさわしいスタイルを確立するために何をおいても真っ先に必要なのは、適度のユーモアである」とも書いているので、額面通り受け取らないと、読み返すうちにじわじわと笑いたくなる映像的な箇所です。
更にこの話はタイトルの核心にふれ、
「スタイルの特徴は、深みのある人格が知らず識らずのうちににじみ出て、なにもしなくてもいつの間にかまわりの人間の関心を集めている、という点にある。フィアット社会長ジャンニ・アニェッリには、それがある。貴族の風貌を備え、見るからに恐ろしそうなその顔には、バルザックが人知れぬ敗北と呼んだしわが深く刻印されている。」
という箇所があり、他にもいくつかの話で登場するこのアニェッリという人物を知った最初でした。
監督の名前をつぶやいてみると、タキ・テオドラコプロスの名を思い出しました。
日頃、濫読の気味があり何だか関係ないものまで読んでいて、最初タキの「ハイ・ライフ」(井上一馬訳)もそんな感じで読んだ一冊だったと思います。
“Princes, Playboys, & High-Class Tarts”の原題からイメージされるとおり、上流社会のゴシップを面白おかしく書いてありますが、当初その後読み返す事もなさそうな縁の無い話に思えました。
何しろオナシスをこきおろすほどのギリシャの海運王の息子だそうです。
“第一次世界大戦の直前、ボニー・デ・カステラーネ伯爵邸で催された内輪のパーティの席上、晩餐の席についていたさるフランスの貴婦人は、突然気分が悪くなり自分はこのまま死ぬのではないかと思った。その婦人はウェイターを呼ぶと耳許でこうささやいたという。「急いでデザートを持ってきてちょうだい」
これは、死の直前まで食い意地には勝てなかったということではない。婦人は単に、列席者が席を立つ前に死なないよう、食事の進行を急がせたということにすぎない。言いかえれば、まだ生きてる人に面倒をかけたくなかったということだ。いうまでもなく、この婦人はスタイルを持っている。”
上記は「スタイルとは何か?」という話の冒頭ですが、別の章で「紳士にふさわしいスタイルを確立するために何をおいても真っ先に必要なのは、適度のユーモアである」とも書いているので、額面通り受け取らないと、読み返すうちにじわじわと笑いたくなる映像的な箇所です。
更にこの話はタイトルの核心にふれ、
「スタイルの特徴は、深みのある人格が知らず識らずのうちににじみ出て、なにもしなくてもいつの間にかまわりの人間の関心を集めている、という点にある。フィアット社会長ジャンニ・アニェッリには、それがある。貴族の風貌を備え、見るからに恐ろしそうなその顔には、バルザックが人知れぬ敗北と呼んだしわが深く刻印されている。」
という箇所があり、他にもいくつかの話で登場するこのアニェッリという人物を知った最初でした。