日本の通勤は辛かった。中学から社会人まで、ずっと千葉から東京まで通っていて、片道1時間半以上だとさすがに疲れた。日本から逃げてきた原因の一つは、ずばり「もう通勤電車は嫌」だった。
中学から大学くらいまで、毎日毎日十中八九痴漢にあった。80年代は、まだ大声で「やめてください」と叫ぶことが許される雰囲気でもなく、かなりひどいことをされても泣き寝入りだった。一度は、気づかないうちに制服のスカートをカミソリのようなものでびりびりに切られていたこともある。これはさすがに先生に「お前はなぜ気づかないんだ」と言われた。お尻切られてないから気づかんよ~。実際、家の近くの駅まで気づかず、他の乗客に「あなたスカートびりびりよ」と言われて初めて知ったほど。
痴漢に手首をつかまれ、「ホテル行こうホテル」と迫られながら一緒に改札を通ってしまったときには(当時は自動改札ではありませ~ん)、さすがに交番に向かった。よかった、あそこであんなおやじにやられてしまわなくて。交番に近づいたら、すーっと離れて行った。
そういう訳で、アメリカに来て、最初の頃徒歩が多かったけど、私はそれをとっても楽しんだ。1キロでも2キロでも歩いた。電車の車窓ではなく、歩いて、立ち止まって、バラの花の香りをかぐことができることが幸せだと思った。
今は車通勤。何か食べたり、まつげくるくるしたりしながら、子供を学校に連れて行き、その後会社に向かう。高速は使わなくて良いので、それほどの渋滞に捕まることもない。最悪でも片道30分だろうか。最速だと片道15分。
ぎゅーぎゅー詰めで、いろんな人の匂いが混ざった淀んだ空気をすい、どこを見て良いのか分からないような視界で通勤していた頃を考えると、車で通勤できることに本当に感謝。
マイレージは出ない。でも、自腹でもそんなの構わない。定期を買ってもらって電車に乗るより、迷わずこっちを選ぶなあ。