in a schale

シャーレにとじ込めたありふれた日常。

2016.02.06 DIR EN GREY“ARCHE”at 日本武道館

2016-02-10 23:20:27 | ライブレポート


雨風にさらされた焼け野原、あるいは荒廃し何年も立った都市。再生は不可能に近いかと思われた場所に、たったひとつ植物の芽がーー。そんなイメージが浮かぶほど、力強い生命の息吹を感じるライブだった。
『ARCHE』とはギリシャ語で「根源」という意味だが、この日のライブを観て「種(たね)」という言葉もしっくりとハマる気がした。

アンコールのラスト、京が「ここから始まる、お前らと、俺らの、『未来』に向けて」と語り「Un deux」が披露された。
私がDIR EN GREYのライブを初めて観たのは2006年夏の武道館公演だったのだが、その頃の京は自らの身体に「No future」と刻みつけたり、口内を引っ掻き血を吐いたりしながら必死に叫んでいた。あれから約10年の時を経て発した『未来』という言葉。その説得力と重みは計り知れない。本当の意味での光、そして希望を感じた。

2017年、DIR EN GREYは結成20周年を迎える。その序章とでも言わんばかりに、今後の情報も一挙に発表された。
2016年7月にニューシングルをリリース。また、6月3日(金)Zepp Nagoyaを皮切りに"TOUR16-17 FROM DEPRESSION TO ________ [mode of VULGAR]" がスタート、 9月には「TOUR16-17 FROM DEPRESSION TO ________ [mode of DUM SPIRO SPERO]」 、11月には「TOUR16-17 FROM DEPRESSION TO ________ [mode of 鬼葬]」 と、過去にリリースされたアルバムをテーマにしたツアーを複数告知。

ツアータイトルには“FROM DEPRESSION TO________”=“絶望から________へ”と冠されている。『VULGAR』『DUM SPIRO SPERO』、『鬼葬』という種に、水と養分を与え、やがてそれらは蕾をつける。この日の公演も、始まりを告げる種のひとつだった。時を超えて咲く花を、この目に焼きつけたいと強く思った。






今回、チケットをとるのがギリギリでX列の後ろの立ち見席だったため、細かいところを観るよりも空気感を楽しみました~。

以下演出メモなど。

「and Zero」
薫さんが1人で登場しギターを掻き鳴らしスタート。緊張からか手の状態のせいか若干ヨレた。1人1人メンバーが登場し、歓声があがる。バックヴィジョンにはタイトル&バンドロゴ。京さんは軍帽を被り、マントを羽織っていた。

「空谷の跫音」
マッチで火をつける指のアップ、コムローイ、ブルーが基調の映像だった。燃えさかる木?なども。

「Behind a vacant image」
無数のキャンドルに火が灯っている映像が差し込まれる。

「Suthtain the untruth」
途中観客に歌わせる場面も。

「鱗」
ヴィジョンを横3分割。MV映像でリアルタイムのライブ映像をサンドしているような感じ。遠くから観ていると、リアルタイムのメンバーが立方体の中に入って動いているようだった。

「懐春」
和室に横たわる胸の大きな裸の妊婦の映像。途中顔がアップになったときは本物の人間だと思ったが、引き絵はCGが本物か区別つかず。障子に透けるモノクロの彼岸花。妊婦にたかるムカデ。

「Phenomenon」
京さんが声色を変えて複数人格のよう。

「てふてふ」
ライブの空気感が「和」だった。京さんがマントを翻す姿がとてつもなくカッコ良かった。

「輪郭」
MVではなかった。…が、なんの映像だったか忘却。ラスト“鬼を捕まえ私と変わ…”のあと、メンバー前方でスモーク噴射。ステージが白煙に覆われる。

「禍夜想」
イントロの歪んだギターフレーズにグルーヴを感じた。京さんが2サビ前の1フレーズをすっ飛ばし、“止まらない~”と先走りサビ入りタイミングを間違える。映像化されるとしたらどう編集されるのか。

「咀嚼」
北スタンドにも照明が仕込まれているのか、座席から天井付近にまで放射状に光の筋が。

「Midwife」
ツアー時と同様、黒地に極彩色の花々、3人並んだ胎児の映像。

INWARD SCREAM
赤い照明とスモーク。鐘を鳴らす京さんの手元がヴィジョンに映る。

「Cause of fickleness」
前半のセットリストは「SUTHTAIN~」「鱗」以外、ほぼ聴かせる系の曲で固めてきていたので、ここでようやく弾けたイメージ。京さんもこのあたりから「武道館!」等煽っていたような。フロント楽器陣も上手へ下手へ移動。

「Chain repulsion」
これまで同様70年代アメリカンダイナー風のネオンサインにサイケデリックなイメージ映像がミックスされていた。

「Revelation of mankind」
フルMV。まとまりある演奏だった。

「The inferno」
ツアー時同様、退廃した都市のようや映像。炎の特殊効果あり。


-EN-
「濤声」
ステージ前方は半透明のアクリル?のようになっていて、下に仕込まれたムービングライトで光が透けるようになっている。メンバーの真下から光が立ち昇るのでとてもきれい。

「THE FINAL」
京さんが「生きてるか?」と煽る。
歌詞つきのドキュメント風映像。

「OBSCURE」
イントロで歓声。「LOTUS」に収録されているリメイク版のほう。

「MARMALADE CHAINSAW」
たしか映像はメンバー5分割。“俺はイッチャッテますか?”のところで、京さんが顔をしかめながら、右のこめかみを人差し指でトントンとしていてパンクだった。サビでは、ライブで多く披露されていた当時と同じく、モンキーダンス風の振りをしているオーディエンスが多かった。

「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」
京さんが「男!」「女!」と数回ずつ煽り、「ひとつになれんのか? 俺らとひとつになれんのか? なれんのか!!?」と問いかける。ラストみたいに盛り上げていた。今考えると、「Un deux」で話すこと決めていたから、ここで煽りを入れたのかもしれないなと思える。

「Un deux」
前述した通り、京さんが「お前らと、俺らの未来に向けて」と伝える。言い切る前にイントロのシーケンスが流れ出したのが粋だった。



終演後、ピックや水を巻くDieさん、薫さん、Toshiyaさんに、京さんからハイタッチ、ボディタッチしにいっていた。
最後に京さんがお立ち台で拍手する際、前を通りたかったToshiyaさんは気を遣ってかがんで通っていた(笑)。


この日の武道館ライブは精神面がすごく健全だったように思います。アルバム集大成というより、「これから始まる」感があってワクワクしました。
過去アルバムツアーに『Withering to death.』の文字はなかったけれど、もし今後あるとしたら、今のDIR EN GREYならば、鬱屈した感情に飲まれずに、楽曲をモノにして表現してくれそうな気がする。



【SET LIST】
01.and Zero
02.空谷の跫音
03.Behind a vacant image

04.Suthtain the untruth
05.鱗
06.懐春
07.Phenomenon
08.てふてふ

09.輪郭
10.禍夜想
11.咀嚼
12.Midwife

INWARD SCREAM

13.Cause of fickleness
14.Chain repulsion
15.Revelation of mankind
16.The inferno

-EN-
17.濤声
18.THE FINAL
19.OBSCURE
20.MARMALADE CHAINSAW
21.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
22.Un deux