シネマと虎とグルメたち

犬童一心監督作品に「ジョゼと虎と魚たち」があった。オイラは「観た映画が面白くて、美味いもの食って阪神が快勝」を望んでる。

南極料理人

2016年04月08日 | 映画
沖田修一監督の新作「モヒカン故郷に帰る」がやてくるので、同監督の「南極料理人」をみる。
自宅のホームシアターでくつろぎながら見たが、目下左目の異常があり時々右目だけで見る鑑賞でストレスがたまる。
まあのんびりと見ることが出来る作品なのでそれなりに楽しめた。

南極を舞台にした物語といえば、シリアスな作品が多いが、こういうライトなコメディーは珍しい。
オープニングは過酷な勤務から逃げ出そうとしている隊員を別の隊員が励ますと思わせるシーン。
この時点ではシリアス作品とおもわせたのだが、次のシーンでは「麻雀のメンバーになりたくない」だけだったという話で、「ああなんだ、こういうタッチの作品なんだ」と知らされる。
男8人、まるで大学の男サークルの合宿風景みたいで、懐かしさを覚えると同時に楽しそうな彼等に羨望の気持ちが湧いてくる。
それもそのはずで、全編を通じて彼らの過酷な勤務状況は描かれない。
描かれているのは彼等の必死の作業ではなく、そこから逃れた自由時間の生活ぶりである。
これぐらいのバカをやらないと、とても男ばかりで生き物もいない極寒の地で1年半も過ごせないだろうと納得させられる。
そのバカぶりを南極での食事を中心に色んなエピソードでつないでいく。

南極料理人は、限られた食材なので同じ食材を工夫しながら別料理にするとかの話を耳にしたことがあるが、そのようなエピソードはなく、毎回違った料理が提供されるのだがどれもが実に美味そうである。
日本国内の家庭で食べているものと違いはないのだと言いたいのか、家庭的な料理が多く登場してくる。
それでも信じられないような物も出てきて笑いを誘う。
伊勢海老のエビフライが筆頭だろう。
食材に前の調査隊が残していった伊勢海老があると判り、西村は刺身を提案するが隊員全員が「気分は皆エビフライだからね」と言ったためだ。
俺の体はラーメンでできていると言うタイチョウのラーメン騒ぎも笑わせる。

登場人物はユニークな風采の人間ばかりで、通信担当の黒田大輔やドクターの豊原功補なども、存在しているだけで笑わせる。
男ばかりで人目などを気にしなくていい状況なので、かれらの服装そのものが学生の合宿並みなのだ。
おまけに長期間過程を留守にする彼らは家族にも見捨てられていて、西村は「お父さんがいなくてとても楽しいです」と言われるし、本さんは1分740円の電話お掛けても「話したくない」と言われる始末である。
本さんがつぶやく「やりたい仕事がここにあるだけなんだけどなあ…」は男にとっては心に響く。
雪氷サポートの兄やんと呼ばれる高良健吾は究極の遠距離連来をしているが、彼女にフラれてしまう。
しかし帰るに帰れない。
それでも帰国すれば待ってくれていた人たちがいる。
本さんの奥さんは本さんにすがって涙を流すし、西村の家族も笑顔で迎えてくれている。
兄やんには国際電話受付担当の清水さんが迎えてくれた。
そんな愛情物語を描き込んでいたら、もう少し一本スジの通った作品になっていただろう。
しかし公開電話での西村と家族とのやり取りの終わり方を見ていると、意識的にそれらを排除したのだと思う。
そうすることで平凡な日常生活のありがた味を訴えたかったのかもしれない。
ドクターは言っていたとおり、非日常的なことをやっていたけど…。
コメント (2)
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