南九州の片隅から
Nicha Milzanessのひとりごと日記
 





 いよいよ明日、3月12日に九州新幹線が全線開業する。鹿児島中央から博多までが1本のレールでつながるのだ。
 熊本~新大阪間の直通新幹線は2時間59分と3時間を切る。九州~中国~関西の距離が短くなり、仕事に旅行に多くの乗客が行き来することが予想される。実に喜ばしいことだ。


 しかし、新幹線の運行が開始するということは、同時に今までの在来線が縮小されるということを意味している…。
 そう、長年に亘り鹿児島本線で活躍してきた787系特急『リレーつばめ』も、今日、3月11日をもって廃止されることになったのだ。
 福岡に行く時に、鹿児島に帰る時に、いつも特急つばめ(現・リレーつばめ)を利用したものだ。帰省、就職活動、旅行、出張…何回乗車したのか、とても数え切れない。
 それだけこの787系特急つばめ型車両にはお世話になった。

 今日は最終日ということもあり、そういう訳で上り最終列車である、新八代駅22:45発→熊本23:05着の『リレーつばめ100号』の指定席を予約した。ネット予約をしたが、席にはまだまだ余裕があるようだった。
 意外と盲点だったかな? みんな明日開業の「みずほ」「さくら」に気を取られたのかも?


 しかし、今日の午後、とんでもないニュースが…!
 岩手・宮城沖でM7.9の地震が発生。宮城では震度7を観測したという。しかも6mを超える大津波が押し寄せ、気仙沼市など東北地方の太平洋側一帯が水没しているという。
 何ということだ…。


 こんな状況で『リレーつばめ』の最終列車に乗りに行っている場合かと自問自答をしたが、既に切符を買っていることもあるので、一応駅へ行ってみることにした。
 JR九州の情報に寄れば、今日・明日ともイベントはすべて中止。だが、九州新幹線全線開業は行うという。ということは、やはり『リレーつばめ』は今日限りか。

 家から自転車を飛ばし、熊本駅に21時過ぎに到着。
 21:34の鹿児島線下り普通列車で新八代へ向かう。
 そういえば川尻~宇土の間に、明日「富合駅」も開業するらしい。熊本市富合町に新幹線車両基地を建設する見返りらしい。この地区の人にとっては念願か。

 22時過ぎ、新八代駅(在来線ホーム)に到着。
 そういえば新八代駅にゆっくり滞在するのは今日が初めてだ。いつもは『新幹線つばめ』と『リレーつばめ』の乗り換えのために3分間下車するだけだから。

 駅の新幹線ホームに上がる。すると『新幹線つばめ』が停車していた。ん? 何で?
 どうやら鹿児島本線で起きた事故の影響で『リレーつばめ』の到着が遅れているらしい。そのお蔭(?)でじっくり車両を鑑賞することができた。
 周りにはそう多くはないものの、私と同じ目的だろうか『リレーつばめ』の最後の雄姿をカメラに収めたいのか、いわゆる「撮り鉄」たちが群がっていた。よく見ると各テレビ局の取材クルーもたくさんいる。

 しばらくすると『リレーつばめ』がホームに滑り込んできた。思わず近寄る撮り鉄たち。駅員が拡声器とホイッスルで注意を促す。
 私も負けずに撮影。が、見事にピンボケ…。うーむ、動いている被写体を撮るのは難しい…。

 同一ホームの両端に『新幹線つばめ』と『特急リレーつばめ』が並ぶ姿もこれで見納めか。

 ふと新幹線ホーム側を見ると、さくら型車両(N700系)の薄青色の新幹線が、高速でホームを通過して行った。
 きっと明日の鹿児島中央駅の始発のために送られていく回送列車だろう。いよいよなのか…。

 ここで、カメラを持った人に捕まる。
 「インタビューよろしいですか?」「えっ…」「今日はどういった用件で来られたのですか?」
 いきなりだったのでちょっと戸惑ったが、『リレーつばめ』のラストランを見に来たことを伝えた。
 しかし、地震のこともあるので、恐らくニュースになることはないだろう…。


 さて、いよいよ『リレーつばめ100号』に乗車する時が来た。
 だが、ここで予期せぬハプニング。「ただいま八代海・天草諸島沿岸に津波警報が発令されましたので、鹿児島本線:熊本~八代間の運転を見合わせております」とのこと。
 まさか運行休止なのか??? ここまで来て最終列車に乗車できずに終えるのか??? そんなバカな…。
 もう一度落ち着いて構内放送に耳をかざす。「津波警報が解除になるまでいましばらくお待ちください」どうやら警報さえ解除になれば、運転はされそうだ。
 見方を変えれば、それだけ長く乗車していられるという訳だ。

 しばらくして「まもなく津波警報が解除されるという情報が入ってきました」
 あわてて、ホームから車両に戻る。

 それからまもなく、約15分遅れで、新八代を出発。
 ホームに残った多くの人たちがこちらに手を振るので、思わず振り返した。

 懐かしさと寂しさがこみ上げてくる。
 ・慣れ親しんだ発車メロディ。
 ・『新幹線つばめ』にも装備がない足置きステップ。
 ・結局一度も(正式には)座れなかった4人掛けボックスシート。
 ・今はなきブッフェ車(焼きそばを何度か食べたなあ)。
 ・乗車する度に読むのを楽しみにしていたJR九州の情報誌「Please」。
 ・時事ニュースを表示する電光掲示板。

 熊本までは約20分間の旅。
 最終列車なのに、車内は閑散としていた。まあ、そこが『リレーつばめ』っぽくていいのかも。


 そして、終点・熊本駅に到着。
 ついに『特急リレーつばめ』の運行が終了。
 ここでも記念撮影する人はまばら。寂しい最終日となってしまった。


 787系つばめ型車両は、『特急有明』が早朝・深夜に一部残る以外は、鹿児島本線(博多~八代)からは姿を消す。『リレーつばめ』と『有明』は色が微妙に違うので、『リレーつばめ』型塗装の車両はいなくなる訳だ。
 今後は、日豊本線、長崎線、鹿児島本線(川内~鹿児島)に移管されるらしい。
 また、近いうちに乗車できる機会があるかもね。


 ありがとう『リレーつばめ』 そしてお疲れさま!




【写真1】熊本駅構内にあるカウントダウンボード。あと9時間を切った


【写真2】熊本駅1番ホーム。リレーつばめの電光表示も見納め


【写真3】新八代駅


【写真4】リレーつばめの車体のロゴ。TSUBAMEの文字がもう消されてる…


【写真5】九州新幹線つばめ旧800系。つばめをあしらった新ロゴ


【写真6】九州新幹線つばめ旧800系。「つばめ」のひらがな表記もなくなった。ちょっと寂しい


【写真7】新八代駅構内に停車中のリレーつばめ。このシックなデザインはいつ見てもいい


【写真8】リレーつばめ。熊本行き最終列車


【写真9】リレーつばめ車内。もうすぐ終点・熊本駅に到着


【写真10】熊本駅構内。東北地方の地震の影響を知らせる表示


【写真11】地震の影響ですべてのイベントが中止に


【写真12】明日から使用される新幹線用の表示板。まだ調整中

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