コケット(coquette)とはフランス語で、「洗練された大人の女性」を意味するらしい。独特の性的な魅力があり、男性を魅了する女性がcoquetteであるらしい。
コケティッシュ(coquettish )はコケットの形容詞で、蠱惑的と訳されている。魅惑的とも扇情的とも違う。
訳語のキーワードは、日頃見慣れない文字「蠱」(こ)である。
皿の上に虫が盛られた形は、想像するだにゾッとする。
占いを表す象形文字で「たぶらかす」の意があるという。
蠱惑的とは「妖しい色香によって人の心をひきつけ惑わすこと」らしい。要するに曲者のようである。
魅力的と言われて嬉しがる女性も、蠱惑的と評されると眉を顰める。
コケティッシュな女性の数は多くないが、大方の男性はこのタイプに大層弱いと推測する。コケットすなわち蠱惑的な女性はモテて困る筈である。
私は幼児の頃、母の知り合いでコケティッシュな笑い方をする婦人に、母以上に懐いてしまったことがある。子どもをも魅了する魅力だったということだろう。以来、大のコケット好きである。
その影響からか、東宝女優の北川町子(児玉清夫人)さんの大ファンだった。司葉子さんだの藤山陽子さん・星由里子さんなど東宝の看板女優さんには、いささかも魅力を感じたことがない。団令子さんには魅かれるものがあったが、この人もコケティッシュなところがあった。
北川町子さんも団玲子さんも、コケットぶりはあくまで演技であって、ご本人たちは本質的にコケットではなかったらしい。コケットに精通した演出者の存在を窺わせる。
私たちモンゴロイドは、ホルモンの関係で、人類としてはコーカソイド・ネグロイドに較べるとネオテニー「幼形成熟」の傾向にあり、男女ともに、成熟したホモサピエンスに特有の性的な魅力に乏しい。したがって我が国では、コケットは欧米に較べ極めて稀である。
戦後食生活が改善され国民の体位が向上し、身体能力の上で欧米人に見劣りしなくなった昨今でも、進化の経過で体質に具わったホルモン分泌量は急には変わらない。人種が分かれた遠い時代に具わった体質だから、幼形成熟は今後も変わらないだろう。
決してハンディではなく、すぐれた面もある。
ネオテニーは未完成だから若見えする。女性にとって若見えは、いつの時代でも何処でも、他の何ものにも勝るアドバンテージである。
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