私たち日本人の音楽的嗜好に、センチメンタリズムが色濃く影を落としていることは、誰もが認めるところだろう。それによって、あるC&W曲の売上げが、日米で極端な差異を示したことがある。
戦後10年近く経ち、世の中も落ち着いた頃のこと。1950年代(昭和25年〜34年)に作詞・作曲された「North Wind」というアメリカのC&W曲が、日本で大ヒットした。この曲の人気は根強く、長くライブで演奏され続けた。
だがこのアメリカ人のオリジナルは、当時のアメリカでは無視された。日本でヒットする洋楽の上位が殆どアメリカのヒット曲だった時代、それは極めて特異な現象だった。
オリジナルは曲・詞ともに
Rod Morris(1953)という人の作だが、レコードリリースした最初の歌手はSlim Whitman(1953)という人で、これはビルボード誌の上位に輝いた。
だが、後にこれをカバーした
Texas Bill Strengthというディスクジョッキー兼歌手の盤はヒットしなかった。ところが何と、1957年に日本に輸入されたこの盤が、爆発的な売れゆきを示した。
当時の日本では、人気があったC&W歌手の小坂一也がいち早く「北風さん」の曲名でカバー曲をリリース、7年後には北原謙二が「北風」の曲名で唄いヒットしている。
この曲の歌詞とメロディーは、日本人の音楽的感性と戦争で多くを失った時代感覚にピタリと合っていた。
この曲は、当時高校生だった私の好きなpops曲のひとつになった。
カントリー&ウェスタンは、長調の明るいメロディーが主流だが、この曲は珍しく短調(サビに転調があるが)だった。曲調と共に歌詞にもどこか意気地のないところがあるせいか、アメリカ人には気にいられなかったのかもしれない。
日本人の属性は彼らと真逆だったから、この曲は日本でロカビリーが全盛になるまで歌い継がれた。
【North Wind】
〈TEXAS - Bill Strength〉
🎵
Well once I met a pretty litlle girl And she was fair to see
I fell in love with that pretty little girl
She fell in love with me
I kissed her on her dimpled chin
While stars in heaven did play
But along came a-howlin'that old north wind and carried her away
But along came a-howlin'that old north wind and carried her away
North wind, north wind
Bring my baby back again
North wind where did she go? Nobody but you will ever know
North wind where did she go? Nobody but you will ever know
[refrain]
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