小田原名物といえば「かまぼこ」だが、万能常備薬「ういろう」も、隠れた名物といえるのではないだろうか。以前は郵送に応じてくれた時代もあったが、現在は店頭での販売だけ、それも一回の購入でひとり二箱に限られるから、全国からこれを買い求めに小田原を訪れる人は年間相当数にのぼるだろう。原料の生薬に限りがあって量産できないという理由があっては仕方ない。
来歴によると、元廷に仕えていた陳延祐という中国人が、元の滅亡のときに日本に帰化して博多で外郎家初代を名乗った。二代目は京に上り朝廷に仕え、五代目のとき北条早雲に招かれて小田原に移り住んだという。
北条家滅亡後も秀吉に認可され、一子相伝の薬「ういろう」を製造販売し続け、初代から数えて六百数十年になるという。中国に在った時すでに1000年続いていた家柄というから、通算すると1600年あまり、名族と云ってよいだろう。
広告宣伝も販路の拡張もせず、格式を守る独特の営業姿勢は、この家の歴史がもたらすものかもしれない。
薬と同じ名称の菓子「ういろう」は、京に残った外郎家が製法を継いだが、室町時代末期に廃絶したという。その時各地に散った職人たちによって、菓子「ういろう」の製法が広まったようだ。
菓子の「ういろう」は名古屋の銘菓になっているが、本家本元の小田原では、名物になっていないようだ。
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