トランプ大統領が当選した後、与党共和党が最初に取り組んだのはオバマケアの改廃である。
オバマケアには大きな予算が使われており、最初にここでどのぐらい予算を削るか決めないとあとの予算案を作ることができないのである。
つまりオバマケアの問題を解決した後でないと、減税策もインフラ投資も具体化できないのである。
これがなかなか進まないでいたが、2017年3月6日(月)になってようやく下院・共和党の具体的なオバマケア改廃案が出てきた。
おもな内容は、1)医療保険(購入)への連邦政府の補助金を廃止する、2)低所得者向けの公的医療保険メディケイドの加入対象者を広げた州に出している補助金を2020年までに廃止する、3)あらたに年齢別の税額控除(tax credit)の仕組みを導入するというもの。
税額控除は日本にはない仕組みで、30歳以下の人は年2千ドル(23万円:1ドル=115円で計算)、60歳以上の人は年4千ドル(46万円)といった金額が決められていて、その金額までは収めた税金が返ってくる。そしてもし払った税金が、定められた金額に達しなければ差額を現金で支給されるというのが税額控除の仕組みである。
家族全員の税額控除の上限は1万4千ドル(160万円)とされている。
また個人について7万5千ドル(860万円)、世帯で15万ドル(1700万円)を超える所得があると、所得に応じて少しずつ税額控除が少なくなるようになっている。
この案がとおると、連邦政府による補助金が大幅に削減され医療保険に入れなくなる人が大量に生み出される恐れがある(下院・共和党はその見積もりを出していないが)。
ところでアメリカのメディア-トランプ大統領を熱烈支持するウォールストリート・ジャーナルも含め-は、オバマケア改廃案がすんなり成立するか疑問視するものが多い。
共和党内にさまざまな反対があるからである。
一方には政府の市民生活への関与を最小限に抑えようとする保守強硬派が存在し、とくに税額控除の導入に強く反対している。
他方には、オバマケア改廃で医療保険から締め出される人が多く出ることを懸念する議員-とくにリベラルとされる州の出身議員-がいる。
まず今週(水曜日)、下院の委員会で法案の投票がおこなわれ、来週に下院本会議で投票がおこなわれる予定となっているが、民主党と共和党が拮抗する上院(100人)では、共和党から2人の造反者がでると法案が通らなくなる。
法案の行方を注視していきたい。
★2017/3/12追記
2017年3月9日(木)、下院・委員会は共和党が提出した法案を可決した。ウォールストリート・ジャーナルは、共和党内に強い反対があるため、下院本会議での採択は予定より少し遅れ今月下旬ごろになりそうだと伝えている。