大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米上院、オバマケア改廃案の修正案を公表: 来週、採決へ

2017年07月14日 | 日記

 2017年7月13日(木)、米上院はオバマケア改廃案の修正案を公表した。

 おもな修正内容は次のとおり。

1)オバマケアにおける富裕層に対する増税を維持する(前回は廃止するとしていた)。単身者で20万ドル(2.2千万円:1ドル=110円)、カップルで25万ドル(2.8千万円)の所得がある場合、株式などの譲渡益にかかる3.8%の加算増税、給与税(payroll tax:日本での社会保険料に相当するもの)にかかる0.9%の加算増税は維持される。

2)医療保険料などの高騰を抑えるための政府補助を前回の1千億ドル(11兆円)から1.7千億ドル(19兆円)に増額する。

3)麻薬依存対策に450億ドル(5兆円)をあてる(共和党の二人の上院議員がこの項目を強く要求して、前回の法案に反対していた)。

4)保守強硬派のクルズ氏の要求を入れて、カバー領域の少ない医療保険の販売を認める。若くて健康な人は、カバー領域が最少で保険料の安い保険を選べるようになるが、高齢者や既往症がある人が必要なカバー領域が広い保険に入る健康な人が減少し、そうした人々の保険料が高騰するおそれがある。

 現在、メディケイド(貧困層向け公的医療保険)の費用は基本的に連邦政府と州で折半しているが、共和党は連邦の支出を大幅に削減するとしている。アメリカではこの点が大きな焦点になっているが、この点は今回も変わっていない。

 ニューヨークタイムズは、すでに2人の共和党議員が法案審議の開始に反対を表明していると伝えている。

 上院100人のうち共和党は52人。党内から3人以上の反対があると、法案審議に入れないし、法案を可決できない。

 共和党は来週に上院本会議での採決を目指しているとしているが、今後の修正協議を注視していきたい。

 なお来週初めには議会予算局(CBO)による影響分析が公表される予定になっている。

2017/7/17追記

 2017年7月15日(土)、マコーネル上院院内総務は、共和党のマケイン上院議員が血栓除去の手術をおこなうため(過半数の投票を得るめどがたたないため)、今週に予定されていた投票を延期すると発表した。