大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

新興国通貨が下落

2018年05月01日 | 日記

 米長期金利が一時的にとはいえ3%を超えドル高が進むなか、新興国市場の一部で動揺が生じている。

 フィナンシャル・タイムズ(2018/4/27)によれば、ドルに対して新興国の通貨が下落し、ブラジル、インド、メキシコ、インドネシア、南アフリカ、ハンガリー、トルコ、ポーランドからなる通貨インデックスは今年1月のピークから5%下落している。そして同紙の別の記事は、アルゼンチンの中銀が自国通貨ペソの下落を食い止めるため15億ドル(1650億円:1ドル=110円)のドル売り介入をおこなったと伝えている。日経新聞(2018/4/25)も、トルコ中銀がトルコリラの下落を食い止めるため大統領の反対を押し切って0.75%の利上げをおこなったと伝えている。

 新興国の大幅な通貨下落は、ドル建て負債の返済を困難にするほか、輸入価格の上昇などによるインフレ率の上昇をもたらし、インフレ抑制や通貨防衛のための利上げを不可避として景気を悪化させる危険がある。1997年にはじまったアジア通貨危機は、まさにこうしたものであった。2013年にもバーナンキFRB議長のテーパリング発言をきっかけに、新興国に動揺が走った。

 FT紙によれば、こうした懸念から2018年4月23日までの1週間で新興国の債券・株式市場からは56億ドル(6千億円)の資金が流出した。2018年には新興国で9千億ドル(100兆円)の債権が償還(借り換え)を迎えることになっており、通貨下落や信用不安によって借り換えの負担が増えることが懸念されている。

 しかしこうした懸念に対する反論もある。アジア通貨危機の時にくらべ各国の外貨準備が手厚くなっているほか、自国通貨建ての債券発行が増えているため通貨下落の影響は以前ほどには受けないようになっているというものである。FT紙も、南アフリカの債権やブラジルの株式など資金流入が続いている例外もあるとしている。

 この先、新興国通貨の下落が続くか反転するかどうか私には全くわからないが、もしドル高がここからさらに大きく進むといずれそのひずみが出てくることがあるかもしれない。新興国が崩れればもちろん先進国も無傷ではすまない。気がかりである。