大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

イタリア保守連立政権、大減税とベーシックインカム導入: 財政悪化懸念から長期金利が急上昇

2018年05月20日 | 日記

  イタリアで保守連立政権の政策が決まった。日本のメディアでもかなり報じられているが、ベーシックインカムの導入など興味深い点が多いのでここにその内容をまとめておく。

  連立を組むのは経済発展した北部を基盤にする同盟と、経済的に遅れた南部を基盤とする五つ星。同盟が富裕者が利益を受ける単一税率を主張するのに対し、五つ星は低所得層へのベーシックインカムを主張するなど政策に大きな違いがあったが、この度、政策合意に達した。

(税率)

  BBCによると税率を、8万ユーロ(1千万円:1ユーロ=130円)以上の所得者に対して20%、それ以外の課税対象者に15%という二本立てに簡素化する。BBCは、この減税により年800億ユーロ(10兆円)の税収減になるとしている。

 また来年に予定されていた消費税の引き上げ(125億ユーロ=1.6兆円)を中止する。

(ベーシック・インカム)

  低所得者に月780ユーロ(10万円)の手当て(ベーシック・インカム)を支給する。BBCは、これにかかるコストを170億ユーロ(2.2兆円)としている。

 また最低年金月額を780ユーロ(10万円)にし、前政権で決まった年金支給年齢の引き上げを見送る。BBCは、これにより150億ユーロ(2兆円)の支出増になるとしている。

(外交)

  ロシアとの協力関係の強化をめざす。2014年のクリミア侵攻以来、EUはロシアに対し経済制裁をおこなっているが、伊連立政権はこの経済制裁を解除することを求めている。

(財政)

 EUは加盟国に対し、毎年の財政赤字をGDPの3%以下に抑えることを求めているが、積極財政を追求する伊連立政権は、その見直しを求めるとしている。

 以上まとめたように伊連立政権は積極財政により経済の活性化をめざそうとしているが、イタリアの政府負債はGDPの130%とEUの中ではギリシャについで多く、メディアではイタリアの財政悪化を懸念する意見が多く出ている。

2018年5月20日追記

 フィナンシャル・タイムズによれば、イタリアの10年国債の利回りはこの2週間で0.5%上昇(価格は低下)。2018年5月18日(金)には、同盟と五つ星が躍進した選挙前につけた直近のピーク2.193%を上回り、2.217%に達した。