日銀は現在、年6兆円をめどにETF(上場投資信託)を買い入れている。
2018年11月28日に日銀が公表した上半期の財務諸表によれば(4半期毎の開示はない)、2018年9月末時点で、日銀が保有する指数連動型の上場投資信託は28兆9,636億円(時価)。含み益は7兆2,045億円とされている。
ところで気になるのが日銀が保有するETFの損益分岐点(平均買い入れ価格)。株式指数が、この金額を下回ると日銀に損失が発生するという重要な数字である。
日銀自身はこの数字を公表していないので、簡単な推計をしてみたい。
日銀は実際には日経平均やTOPIXなどに連動した複数のETFを購入しているが、計算を簡単にするためすべて日経平均連動型のETFと仮定してみたい。
すると18,120円という数字がでてくる。
実際にはTOPIX型などもかなりの割合を占め、また10月以降もETFの買い入れがおこなわれているので非常におおざっぱな概算である。ではあるが、ETFに採用されている指数の変動に極端に大きな差があるわけではないので、実際の数字とはそんなには違っていないと思う。
ごく近いうちに日経平均がこの数字を下回る可能性は小さいと思うが、たとえば10年といった長いスパンで考えれば日経平均がこの数字を下回る可能性はかなり高い。
ちなみにアベノミクスがはじまる前の2012年8月に日経平均は8千円台をつけ、第二次安倍内閣がはじまった2012年12月の日経平均は9千円-1万円台。
先の仮定にもとづけば日経平均8千円で日銀の損失は約11.5兆円、1万円で約9兆円となる(ちなみに日銀の自己資本は約8兆円)。
市場への影響が大きすぎて減らせないといわれる日銀のETF。その将来が気になる。
追記(2019/4/5)
2019年3月12日、日銀の雨宮副総裁は参議院において、2018年9月末時点で日経平均が1万8千円程度を下回ると簿価割れになると発言した。
2020/3/10追記
日銀の黒田総裁は参議院において、日銀が保有するETF の損益分岐点について「2019年9月末の保有状況を前提にすると、日経平均株価が1万9000円程度」と発言した。
黒田総裁は、現在の損益分岐点は1万9500円程度とも述べている。
2019/12/02 2019年度上半期の日銀ETFの損益分岐点
2019/05/29 日銀ETFの含み益、半年前から半減: ETFの損益分岐点は1万8,340円近辺か