大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

中国、債務不履行が増加: 中国民生投資、550億円の債務不履行

2019年07月20日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルによれば、2019年7月19日(金)、保険、不動産、航空機リースなどをてがける中国民生投資(China Minsheung Investment Group)は、8月2日に償還予定だった5億ドル(550億円:1ドル=110円)のドル建て債券の払い戻しができないと公表した。

 WSJによれば、中国民生投資の総資産は3096億元(5兆円:1元=16円)、負債総額は2321億元(3.7兆円)。

 実は、中国民生投資の債務不履行は今回がはじめてではない。

 ブルームバーグによれば、中国民生投資は2019年1月29日に償還予定だった30億元(500億円)の国内向け債権でも期日に払い戻しができなかった

 このためWSJによれば、その後ドル建て債券について前倒し返済(クロスデフォルト)を迫られるといったこともおこっていた。

 債務不履行の原因についてWSJは、同社は短期資金に頼って長期投資をおこなっていたため、資金調達に困難をきたした可能性を示唆している。

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 このニュースが流れた後、中国では銀行間取引の金利が急上昇したり担保要件が引き上げられ、中国政府が流動性確保(中銀による中小銀行向け融資限度の引き上げや預金準備率の引き下げなど)に動くことになった。

 中国政府の動きにより銀行間取引の金利は低下にむかったが、中銀から直接融資をうけられないノンバンクなどはいぜん資金調達が困難な状態が続いているとされている。

 中国民生投資のデフォルトは、こうした流れに巻き込まれたようにも思われる。

 中国では数年前までデフォルトはほとんど発生しなかった。しかし、債務過剰やモラルハザード(絶対返済されると考え、無理な投資がどんどんおこなわれる)が問題になり、徐々に不良債務の整理(デフォルト)が進むようになった。

 中国のGDP成長率は米中貿易摩擦で低下したといっても6%台。毎年オーストラリアのGDPに匹敵する富あるいは日本のGDPの2割に近い富が中国に生まれている(中国では、5年ほどで日本と同規模の経済的な富が生みだされ続けている)。

 過剰債務(企業の借りすぎ)の問題を成長を続ける中国がどのように解決していくのか長い目でみていきたい。

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