大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米大統領選挙で移民問題が最大の争点に:強制送還のルール変更

2019年07月23日 | 日記

 来年2020年秋におこなわれる米大統領選挙で、移民問題が最大の争点になりつつある。

 2019年7月15-16日、ロイターとIPSOSがおよそ千人を対象におこなった調査によれば、有権者登録をした人がいまもっとも重要と考える問題は移民問題(25%)。これに、医療保険(18%)、経済問題(12%)がつづいている。

 共和党支持者にかぎると、移民問題をもっとも重要とする人が41%にもおよぶ。

 こうしたなか、米国土安全保障省は2019年7月22日(月)、正式な手続きをしていない移民(未登録移民)の強制送還を容易にするルール改正を発表した。

 BBCによれば、これまでは国境から100マイル(160キロ)以内で拘束され、かつ米国滞在が2週間以内の場合にかぎって、裁判をおこなうことなく強制送還することが可能だった。

 しかし今回、米国に2年以上継続して滞在していることを証明できなければ、米国内のどこで拘束されても、裁判なし(弁護士の接見なし)に強制送還が可能になった。 

 なおBBCは、アメリカには1000万人以上の未登録移民がおり、米国の平均滞在年数は15年との推計を紹介。こうした方々が突然拘束された場合、(弁護士に依頼できないので)2年以上アメリカに滞在していることを証明するのは簡単ではないとの意見を紹介している。

 こうした姿勢は、オバマ政権が未成年のときに親につれられて米国にきた方々(ドリーマー)について、ただちに強制送還させない仕組みをつくったのとはまったく逆の動き。

 トランプ大統領は、反移民の世論におされてこうした政策をとっているというより、トランプ大統領が先頭にたって反移民(とくに白人以外の移民へのつよい反発)の感情をあおっているようにみえる。

 たとえばトランプ大統領は、オカシオ=コルテス上院議員ら非白人の4人の民主党女性議員に対し「アメリカに不満があるなら元の国に帰れ」と批判しているが、これに触発されルイジアナの一人の警察官がFacebookにオカシオ=コルテス氏は撃たれるべきだとコメントし、他の警察官がそれにいいねするといったことがさっそくおこっている(二人の警察官はただちに解雇された)。

 来年の選挙まで、こうしたニュースが続々とでてくるのは間違いない。

 これがトランプ氏の再選に寄与するのか、それとも再選の妨げになるのかしっかり見極めていきたい。

 

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