昨年末に成立したアメリカの減税法は、5年間、投資したものをその年に全額償却することを認めている。
このためアメリカの多くのメディアは、減税の利益は投資にまわり自社株買いは減少する(株にはマイナス)と予想した。
しかしニューヨーク・タイムズ(2018/2/26)によれば、ここにきて自社株買いが増加している。
NYTによれば、アメリカでは2018年1月に約100社が総計1780億ドル(約20兆円:1ドル=110円)の自社株買いを発表した。これは過去最高記録となるものである。
減税法で海外利益を米国に戻しやすくなったためシスコは670億ドル(7.4兆円)の海外利益を米国に戻したが、そのうち250億ドル(2.8兆円)を自社株買いにまわした。
同様にアルファベット(グーグルの社名)が86億ドル(9.5千億円)、ペプシが150億ドル(1.7兆円)、アプライド・マテリアルが60億ドル(7千億円)の自社株買いを計画している。
2016年のアメリカ企業の自社株買い総額は5360億ドル(59兆円)。今年は、それを大きく上回る自社株買いがおこなわれる可能性が高くなっている。
ところで、この経済への影響はどうなのであろうか。
減税を支持する人たちは、減税法により、アメリカ国内での投資が増加するほか、あらたにえた利益により雇用や賃金が増加すると主張している。
しかしNYTによれば、2005年に今回と同じように海外利益を国内還流させる際の税率が引き下げられたとき、3千億ドル(33兆円)の利益が国内にもどってきたが、その92%が自社株買いに充てられたとされる。
今回も同じようなことになれば、現在、10%のアメリカ人が株の84%、1%のアメリカ人が株の40%を所有しているため、自社株買いの恩恵は株を所有する富裕者に大きくかたよることになりそう。
これからも減税の影響をしっかりチェックしていきたい。
参考:アメリカでは自社株買いが年々増加している
上記NYTによれば、20年前は自社株買いは投資の1/4にすぎなかったが、2016年は自社株買いは投資額をわずか5%を下回る程度まで増加している。