大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トランプ大統領、10月から既存の対中関税を25%から30%に引き上げると発表

2019年08月24日 | 経済
 2019年8月23日(金)、中国政府はアメリカの対中関税第4弾への報復として9月1日からアメリカからの輸入5078品目、750億ドル(8兆円:1ドル=105円)分に5%あるいは10%の追加関税を課すと発表した
 
 中国政府はまた、12月15日からアメリカからの自動車、自動車部品の輸入に対しそれぞれ25%と5%の関税を発動するとしている。
 
 中国はこれまでアメリカの関税につねに報復関税で対抗しており、(多くの人に)今回の対応は予想できるものであった。
 
 しかし、多くの人を驚かしたのは、ニューヨークタイムズによれば、これをトランプ大統領が意外に受け止め、さらなる対抗措置を打ち出したことであった。
 
 8月23日(金)、トランプ大統領はツイッターで、10月1日から中国からの輸入2500億ドル(26兆円)に課している関税をいまの25%から30%に引き上げると発表した。
 
 さらにトランプ大統領は、9月1日と12月15日から予定している対中関税第4弾関税率を当初予定していた10%から15%に引き上げるとしている。
 
 トランプ氏のツイッターについては、氏の思いつきをそのまま書いているというイメージがあるが、少なくとも政策の発表については事前に政府内で協議、決定された内容が書かれている。ニューヨークタイムズは、今回の発表前にもミュニーシン氏らを含んだ緊急協議がおこなれていると報じている。
 
 最近アメリカのメディアでは、トランプ不況(Trump recession)という言葉をよく見かける。将来の政策への不透明感が増し、積極的な投資判断がしにくくなっている。
 
 来週、市場の動揺がどこまで大きくなるか(いつまで続くか)、またそれにトランプ大統領がどう対応するか注意してみていきたい。
 
 

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米政権、給与税減税を検討

2019年08月20日 | 経済
 2019年8月19日(月)、ワシントンポストはトランプ政権が給与税減税について検討をはじめたと報じた。
 
 日本では年金に必要なお金を保険料として集めているが、アメリカでは社会保障税あるいは給与税(payroll tax)という税金として徴収している。(これに高齢者と障がい者をカバーする医療保険メディケア税を合わせて給与税(payroll tax)ということもある)。
 
 現在、アメリカの給与税給与の6.2%を企業と労働者がそれぞれ支払う(合計12.4%)かたちとなっている。ちなみに日本の厚生年金は給与の9.15%を企業と労働者がそれぞれ支払う(合計18.3%)ようになっている。
 
 最近ではオバマ政権が2011年と2012年、労働者の負担を6.2%から4.2%にへらすかたちで給与税の減税をおこなっている(年10兆円以上の減税)。
 
 給与税減税は、おもにはたらく中間層に恩恵をもたらすもの。共和党はこれまで、給与税の減税は経済的効果が小さいとして批判的な立場をとってきた。このため、民主党を中心に、議会の共和党が給与税減税を進めるかどうか懐疑的とする見方もでている。
 
 注視していきたい。

インターネット発展のために個人情報保護の強化を: リクルート問題

2019年08月19日 | 経済

 少し前、リクルートが運営する就活サイト・リクナビが利用者の同意を得ないまま、利用者の就活サイト利用履歴から個別企業の内定辞退予想率をデータ化し、それを有料で企業に販売していたことが大きなニュースになった。

 この数年、非常に多くの就活生が、他サイトと併用してリクナビを利用していたので、リクナビはすべてと言わないまでもかなりの就活生のデータを作成できたのではないかと思われる。

 このニュースをみて思ったのは、日本における消費者保護強化の必要性である。

 たとえばアメリカに目を向けると、グーグル、アップル、フェイスブックなどIT企業の本社が集まるカリフォルニア州は昨年2018年6月、企業に対し個人情報を第三者に販売、シェアすることを禁止する権利をカリフォルニア州の消費者にみとめる法律を制定した

 それ以降、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、ハワイ州などでも同様の法律が制定されている。

 アメリカは企業活動を妨げる規制が少ないと思われているが、このように消費者保護の規制はむしろ日本より強い。

 別の例をあげれば、アメリカでは個人に、企業に対し電話勧誘を禁止する権利が認められており、これに違反すると1通話ごとに最高4万ドル(420万円:1ドル=105円)の罰金が課せられる。

 固定電話全盛のころ日本にもこうした法律があれば、高齢者などが悪質な電話勧誘の被害にあうのを減らすことができたのではないかと残念に思う。

 リクナビの件はたまたま表にでたが、就活のように人生を左右する重要な問題について個人情報が本人のしらないところで集められ、本人の不利益になるように使われる可能性はネット利用が増えるにつれこれからますます大きくなっていくと思われる。

 現状ではネットを使わないことでしか個人情報を守ることができない。

 ネットが発展するためには、みなが安心して利用できる環境が不可欠である。日本でも個人情報保護の強化が望まれる。


杉原千畝記念館に行ってきた

2019年08月17日 | 日記


 先日、実家近くにある八百津町(やおつ)の杉原千畝(ちうね)記念館をはじめて訪れた。
 杉原千畝氏は、リトアニア駐在外交官時代、外務省の意向に逆らいユダヤ人にビザを発行したことで、戦後、外務省を事実上のクビになった人物。
 外務省の意向に反して行動した人物ということが大きかったのであろう、昔は地元でもほとんど知る人がいなかった。記念館には、当時の松岡洋右外務大臣名で送られた正規の資格のない者にビザ発行を認めるなとの趣旨の電報が展示されている。
 しかし、映画シンドラーのリストのヒットやいわゆる「日本すごい」ブームによって、いまでは多くの人が知るところとなっている。
 ところで、杉原氏がリトアニアに駐在した1940年、外務次官に就任したのが同じ岐阜出身の大橋忠一。1940年、松岡洋右は外務大臣に就任すると、多くの外交官を退職させ外務省の人事を一新。その松岡が外務次官に任命したのが大橋だった。杉原氏はヨーロッパに向かう前、満州国外交部にいたが、大橋はそのときの上司でもあった。
 実はこの大橋は母方のとおい遠戚にあたる。杉原氏にかんする本を読んでも、次官時代の大橋のことは出てこないのであるが、杉原氏のビザ発行に大橋がどのような立場だったか少し気になる。日独伊三国同盟の締結を控えていたのでビザ発行には同意できなかったと思うが、杉原氏の有能さは外務省でおそらく最もよく知っていたと思う。大橋は、1941年に外務次官を辞めモンゴルに転出。短い期間、蒙古連合自治政府最高顧問を務めている。
記念館から見える八百津町

アメリカで長短金利が逆転: 前回は1.5年後に景気後退に突入

2019年08月16日 | 経済
 2019年8月14日(水)の日中、アメリカで2年国債の利回りが10年国債を上まわるいわゆる長短金利の逆転が発生した。
 下の図の青いグラフにあるように、通常、期間が長くなればなるほど金利は高くなる(2018/1/2)。
 ところがアメリカなど一部の国では、景気の先行きが暗くなると下の図のオレンジのグラフのように期間が短いほうが金利が高くなるという現象が生じることがわかっている(2018/8/15)。
 前回、長短金利の逆転が生じたのは2006年6月8日(米財務省の金利データによる)。このときアメリカは、1年半後の2007年12月から景気後退に入っている。
 ちなみに下の図のオレンジのグラフは前回長短金利の逆転がおこった2006年6月8日のイールドカーブ(金利カーブ)。青いグラフが景気後退に入った2007年12月3日のイールドカーブ。
 
 今回はどのような結果になるのであろうか。注意して見ていきたい。