大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

新型コロナの経済への影響: GDPの歴史的な減少が予想される

2020年04月12日 | 経済

 新型コロナウイルスの影響で、2020年第1四半期(1-3月)のGDPは大きな減少がみこまれている。

 ニューヨークタイムズによれば、たとえばフランスのGDP1月から4月にかけて6%減少(年率18%減少)すると予想されている。

 経済減速は第2四半期(4-6月)にも続きそうで、ドイツのGDPは10%の減少(年率40%減少)、イタリアのGDPは9.6%の減少(年率38.4%)の減少、スペインのGDPは8.9%の減少(年率35.6%減少)がみこまれている。

 今年の後半には経済の持ち直しが見込まれているが、前期の落ち込みをおぎなうことはむずかしいようで、NYTによれば、ユーロ圏(19か国)2020年のGDPは年13%という戦後最大の落ち込みがみこまれている。

 こうしたなか、欧米では経済テコ入れのため外出禁止を緩和しようとする動きがでている。

 たとえば感染者数と死者数がイタリアを抜いて世界一になったアメリカでは、トランプ大統領が4月30日までとされている外出禁止のガイドラインを延期しないことを検討していると伝えられている。

 

 実際に外出禁止を命じる権限をもっているのは大統領でなく各州の知事であるが、連邦のガイドラインは州の決定に大きな影響力をもっている。

 ただ、外出禁止の解除が早すぎるとふたたび大規模な感染を引き起こす可能性がある。

 NYTは、外出禁止の解除が早すぎるとその直後から感染がふえはじめ、およそ70日後に大きな増加が生じるとの国土安全保障省の予想があるとしている。

 こうしたことから米政府では現在、抗体検査を広範におこなって抗体が確認された人から外出を許可することが検討されている。

 もしおこなわれれば抗体検査は数百万の単位でおこなわれることになる。

 欧州でも同じような検討がされている。

 欧米各国が、感染の再拡大をさけながらどのように外出禁止を緩和していくのかひきつづき注意していきたい。

 

2020年5月2日追記

 2020年第1四半期のGDP速報値は、アメリカが前期比1.2%のマイナス(年率‐4.8%)、EUが前期比3.8%のマイナス(年率‐15.2%)となった。

 


中国、3月の自動車販売、急回復か

2020年04月09日 | 経済

 世界にさきがけて中国で景気回復がはじまった。

 中国の自動車販売は、2020年2月に前年同月比79%のマイナスと信じられない落ち込みをみせた。

 3月の自動車販売台数はあと1週間ぐらいしないと公表されないが、中国でもっとも販売台数が多いVW3月の自動車販売台数が2月の4倍になるとの見通しを明らかにしている

 中国経済がどのぐらいのスピードで新型コロナウイルス以前の水準に回復していくのか、注意してみていきたい。 

第一汽車(自動車)の本社工場正門 

 

2020/4/12追記

 2020年3月の中国の自動車販売台数は143万台で前年同月比56.7%となった。

2020/4/14追記

 2020年3月の中国の輸出前年比6.6%の減少となり市場予測の15.7-9%の減少をうわまわった(ドルベース)。1-2月の輸出は前年比17.2%の減少だった。

2020/5/9追記

 2020年4月の中国の輸出前年比3.5%の増加となり市場予測(-18.8%)を大きく上回った。コロナの影響でこれまで輸出できていなかった以前の輸出契約分の輸出が大量にはいったこと、コロナの影響が比較的軽微な東南アジア向けの輸出が増えたことなどが背景にあると指摘されている。一方、輸入は国内需要が弱含んでいることなどから前年比14.2%のマイナスとなった。


米でハイイールド債への資金再流入はじまる

2020年04月07日 | 経済

 

 リスク資産への資金再流入がはじまっている。

 フィナンシャルタイムズによれば、2020年4月1日(水)までの1週間にハイイールド債に投資するETFに70億ドル(7.7千億円:1ドル=110円)の資金が流入した。

 それまでは5週間連続で資金が流出していた。

 この背景にあるのが、Fed(米連銀)をはじめとした各国中央銀行による歴史的に例をみない資金供給

 たとえば昨年10月以降のFedの金融緩和政策は以下のようになっている。

 

(1)2019年10月11日

 短期資金市場を安定させるため短期国債を月600億ドル(6.6兆円)買い入れることを発表。

 

(2)2020年3月15日

 政策金利を1%引き下げ

 今後数か月で米国債を5000億ドル(55兆円)購入

 今後数か月でMBS(住宅ローン担保証券)も2000億ドル(22兆円)購入

 投資適格の企業が発行したコマーシャルペーパー(無担保の短期手形)の購入をはじめる(1年間)

 

(3)2020年3月23日

  国債、MBSの買い入れ額を「必要とされる額」つまり無制限に引き上げ

  MBS(住宅ローン担保証券)にくわえ商用不動産ローン担保証券もあらたに購入

 

  ①投資適格の社債(ETFを発行額の10%まで購入(2020年9月30日まで)

  ②クレジットカードや自動車のローンなどを証券化したものを購入する

  ③投資適格の企業に4年間のつなぎ融資をおこなう

   この①~③の3制度に3000億ドル(33兆円)を投入する

 

 大規模レポ(国債を担保とした短期融資)は継続

 

 Fedのこうした政策発表により金融市場の安定はもどった。

 しかし、いったんはじめるとやめるのが難しいのが金融緩和。

 新型コロナウイルスが欧米で徐々に収束にむかうなか、Fedは市場の安定をたもちながらどのように市場のオーバーシュート(過熱)をさけていくのかが次の大きな課題になりそう。

 

2020年5月2日追記

 2020年4月、AMC、フォード、ネットフリックス、Yumなどアメリカ企業は合計320億ドル(3.5兆円)のハイイールド債を発行した。単月としては過去3年で最高額。