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タルボサウルス1

過去に旧ソ連(現ロシア)科学アカデミー、中国科学院等のおかげで、たびたび日本に紹介され、現在も日本各地の博物館で見ることができるので、日本の恐竜ファンにはなじみ深い肉食恐竜である。ティラノサウルス科の中でもダスプレトサウルスと共に最もティラノサウルスに近縁で(ティラノサウルス亜科)、かつて同属とみなされたほど非常によく似ている。北アメリカのティラノサウルスと同様に、最大の捕食者としての生態的地位をアジアで占めていた。白亜紀後期のアジアでは最大最強の肉食恐竜である。東アジア(モンゴル、中国)に生息し、大型のハドロサウルス類やよろい竜などを捕食したと考えられている。
 発見当初、小型でほっそりした標本はタルボサウルス・エフレーモフィとされ、大型でがっしりした個体はティラノサウルス・バタールとされたが、後にタルボサウルス・バタールに統一された。またアジアで発掘されゴルゴサウルスと命名された標本もタルボサウルスの亜成体とされ、中国のシャンシャノサウルスもタルボサウルスの幼体であることがわかっている。
 タルボサウルスの骨格にはティラノサウルスと同様に、洗練された機能美が感じられる。タルボサウルスとティラノサウルスの明確な違いは上顎と下顎の骨の構造にあるが、それは外観からはわからないので、生体復元でわかるのは顔つきと前肢くらいで、その他はほぼそっくりである。ティラノサウルスの方が頭骨の幅が広く、特に頬部・後頭部の側方への拡大が著しい。つまりタルボサウルスの方が顔の幅がせまく面長で、より正確には「細面」である。またタルボサウルスの方が前肢がやや短い。昔はエフレーモフィの印象からティラノサウルスよりもほっそりした体型と書かれることが多かったが、ティラノサウルス科の体型(プロポーション)は成長過程で大きく変化することが知られるようになり、昔のような単純な表現は使われなくなった。実際にタルボサウルスの大形の個体はティラノサウルスと同じくらいがっしりした体型をしている。むしろ、相対的に頭部が大きくずんぐりした体型の標本もあるようだ。
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カルカロドントサウルス1

 カルカロドントサウルス科を代表する非常に大型のカルノサウルス類。魚食とされるスピノサウルスを除けばアフリカ大陸最大の肉食恐竜である。白亜紀後期セノマン期の北アフリカに生息した。頭骨の全長は1.6m。

 1927年にアルジェリアで発見された大きく薄い特徴的な歯に対して命名された。後にエジプトで頭骨の断片と体部の骨も発見され、歯は北アフリカ各地で見つかっていた。1995年にシカゴ大学のポール・セレノ博士の調査隊がモロッコでほとんど完全な頭骨を発見し、研究が大きく進展することとなった。
頭骨は丈が高く幅が狭い。吻の先端は斜めに尖っている。前眼窩窓は非常に大きい。前眼窩窩の腹側縁が外側にめくれているのはカルカロドントサウルスの特徴であるという。眼窩の上の涙骨と後眼窩骨の結合部が幅広い。下顎(歯骨)の先端は角張っている。この眼窩の上と下顎の先端の特徴は、カルカロドントサウルス科に共通する特徴とされる。
  カルカロドントサウルスの頭骨には、ティラノサウルスとはまた違った美しさがある。歯磨きのCMに出られそうな歯並びである。多くの肉食恐竜の歯は強く後方に反っているのに対し、カルカロドントサウルスの歯はあまり反っておらず、サメの歯に似ている。また獣脚類の中でも最も薄く、ナイフのように鋭い。肉や皮を切り裂くために高度に特殊化した歯である。骨ごと噛み砕くこともできそうなティラノサウルス類の歯とは異なる。歯の後縁はわずかにカーブしており、先端部に近づくにつれて微妙に外側に凸、つまり膨らんだラインとなる。前縁と後縁の鋸歯の近くに前後方向に走る特徴的なしわがあり、しばしば帯状に歯を横断している。
 確かに、こんな歯列を持つ陸生肉食動物は他に見当たらない。ワニの歯は魚食用の円錐形で、魚などを逃がさないためのものであり、整然と並んではいない。哺乳類の祖先は雑食性の時代を経ているため、3つの咬頭からなるトリボスフェニック型の臼歯をもっていた。肉食性哺乳類ではいったん咀嚼用の前臼歯・臼歯となった歯の一部を、切断用の裂肉歯として転用した。そのため肉食性哺乳類の歯は現生の食肉類、絶滅した肉歯類とも単純なナイフ型のものは一対の犬歯だけで、裂肉歯は鋭いはさみ状とはいっても山形であり、肉食爬虫類のようなシンプルな形ではない。その点、三畳紀以来、肉食を基本としてきた獣脚類の方が由緒正しい肉食の系譜であるともいえる。獣脚類の歯列は基本的に同じナイフ型の歯が多数並んでいるため印象が強い。その中でもカルカロドントサウルスの歯は特徴的である。カルノサウルス類が、ネコ科動物のように獲物の脊髄を傷つけて動きを止めるような気の利いたことをしたとも思えないので、逃げようとする竜脚類の幼体の体から、生きたまま肉片を切り取ったのであろうか。
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