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ヤンチュアノサウルス1

 ヤンチュアノサウルスはジュラ紀後期の中国四川省に生息したカルノサウルス類で、シンラプトルと共にシンラプトル科に属する。ヤンチュアノサウルス属には2種が知られており、中国科学院の董枝明らによって1978年にヤンチュアノサウルス・シャンヨウエンシスが、1983年にヤンチュアノサウルス・マグヌスが記載された。ヤンチュアノサウルス・シャンヨウエンシスは保存のよい全身骨格であるが、前肢、足(後肢のうち中足骨と趾骨)、尾椎の先端部は見つかっていない。ヤンチュアノサウルス・マグヌスは頭骨のうち吻部と下顎、脊椎骨、骨盤、大腿骨が発見されている。
 全体の体型はアロサウルスに似ており、また頭部ではアロサウルスに似て眼の上から鼻筋の両脇にかけて隆起がある。また胴椎の神経突起がやや長くなっている。
 私は1981年の「中国の恐竜展」(国立科学博物館)でシャンヨウエンシスの頭骨を見ているはずだが、子供だったのでさすがに覚えていない。次に見た記憶は1996年の「シルクロードの恐竜展」(巡回展で確か府中でみた)で、マグヌスの復元全身骨格が展示された。このときは、頸、胴、尾とも妙に長いなあということと、前肢が細く華奢な感じだったことを覚えている。最近では2004年の「驚異の大恐竜博」で再びマグヌスの全身骨格が公開された。今度は頸がやや短くなったような気がしたが、ポーズのせいかもしれない。マグヌスの顔は眼窩や前眼窩窓が埋まった感じの、心もとない印象の復元で、おそらく保存が悪かったのだろうと思っていたが、それもそのはずである。マグヌスの頭骨は前上顎骨、上顎骨、鼻骨の一部、頬骨くらいで、頭骨の上部や後半部は発見されていない。シャンヨウエンシスを参考にして不足部分を復元したと思われる。また、前肢はいずれの種でも見つかっておらず、推定だったのである。グレゴリー・ポールの「恐竜骨格図集」の図も推定を含んでいるということである。
 シャンヨウエンシスの方が保存がよいのに、なぜシャンヨウエンシスの全身復元を見せてくれないのだろう。日本でシャンヨウエンシスの全身骨格を見たことはなく、中国にはあるのかどうか私は知らない。シャンヨウエンシスの標本は亜成体ともいわれ、推定全長8mであるが、マグヌスは推定全長10mである。大型の方をアピールしたかったのだろうか。体の各部の比率を正確に知るには、やはりシャンヨウエンシスの全身骨格が見たい。
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