小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

トチへの感謝を胸に

2009-12-28 | 犬&猫との暮らし

 犬布団にいつもいるはずのトチの姿がないことは、ものすごく淋しい。朝うっかりトチのエサ皿にフードを入れそうになり、ブナ&クリを車に乗せたあと、トチを連れに行くために部屋に戻りそうになってしまいました。

 身に着いた習慣というのは恐ろしい。

 もうこれもしなくていいんだと思うと哀しくなります。
 でも、ハンナの飼い主さん夫婦が持ってきてくれたカサブランカの甘い香りが漂う部屋で、トチの遺骨箱をぼんやり眺めていたら、不意にトチがしてくれた最後の贈り物の大きさに今さらながら気付き、哀しみ以上に幸せな気持ちが押し寄せてきたのです。

 これからも私は仕事で月に何度も取材に出なくてはいけないでしょう。もしそのとき、長患いしていたり寝たきりのトチを抱えていたら、どんなにやりくりが大変だったことでしょう。
 妹のことも拘束しなくてはならなくなるし、かりに誰か別の人に頼んで取材に出られたとしても気が気ではないでしょう。
 介護用品もあれこれ用意しなくてはなりませんし、大変な思いをして通院させなくてはいけなかったでしょう。医療費もばかになりません。

 そんな大変なことを私にさせることなく、トチは朝普通に散歩をした夜、心を交わす時間を私に与えてくれ、私の腕の中で逝ったのです。しかも仕事で拘束されていない、みんなが集まれる土日にその弔いの日を用意してくれた。

 今までもそうですが、長く寝込みもせず、何ひとつ大きな負担を私にかけずに旅立っていきました。

 こんな孝行をしてもらい、私はどんなに幸せな飼い主でしょうか! 最期にこんな幸せを与えてもらい、感謝せずにいられないし、その存在の不在感だけにさいなまれていては、トチに申し訳ないと思ったのです。

 もうこれもしないんだ、あれもしないんだと、「ない」ことを考えるのはやめよう。「ないない」づくしの生活を哀しむのではなく、あれもしてもらった、これもしてもらったと「あったあった」づくしの生活に感謝して生きて行こうと思いました。

 生前、車の助手席はトチの特等席でしたが、トチが後部席にいて助手席が空いていれば、ブナもクリもときどき助手席に座りにきたのに、今朝、助手席は空なのに、だれも座りにこなかった。きっとトチが座っているのが2頭には見えたんだな。私も「あっ、トチが座っている」と思いました。

 だからトチに言いました。
 「トチ、もう自由になったんだから好きにしてね。そばにいたいときはそばに来てくれるのは嬉しいけど、霊界というところがあるらしいから、そっちにも顔を出しなよ。そっちには先に行った仲間がみんな元気に暮らしているんだって。お母さんの心にはちゃんとお前は生き続けていくんだから」

 トチを看取って、なおのこと近くに寄り添う命がいとおしくなりました。ブナ、クリ、ボッチのことも、ううんとううんと大事にしてやりたいと心から思いました。とくにブナはトチの忘れ形見だし、トチと同じように立派な最期を看取ってやりたい。

 と、凛としたつもりでも、幸せをかみしめつつまた涙ポロリなのでした。

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お別れの日

2009-12-28 | 犬&猫との暮らし

 昨日は、朝トチの訃報を知らせたグラッシーの飼い主さん夫婦が、わざわざお花とシニア犬用のビスケットを持って、お別れに来てくれました。部屋に入ってトチに触れてくれ「毛づやもいいし、ただ眠っているみたい。今にも起きてきそうだね」と。

 本当にそうだといいのに。

 ノエホタ母の清美さん、レオン母の敦子姉、妹家族が次々にやってきて、みなで東京家畜博愛院へ。ここではもう何頭もの犬猫がお世話になっています。
 昭和初期にペット霊園として開院し、昭和37年から火葬(それまでは土葬だったそうです)で埋葬している霊園で、警察犬慰霊碑も建立されており、数十頭の警察犬・警備犬が眠っています。

 火葬を担当されている方が変に慇懃ではなく、ごく自然にお骨の説明をしてくれるのに好感が持てます(好感が持てるといいのも変だけど)。

 トチを車から降ろして専用のダンボールの棺に入れてくれたのもその方なんだけど、手続きに行くと「男の子でしょ?」と聞く。「いいえ、メスです」というと「体格がいいねえ」と驚いていました。

 そうよ。私は大きくて立派な体格のラブが好きだったんだもん。

 「何歳ですか?」「あと5日で15歳でした」「じゃあもう、満15歳だね。長生きだったねえ。その割に痩せてもいないし、毛づやもいい。顔に白髪も少ないしね。健康だったんだ」といいながら、トチの年齢のところに「15歳」と書き込んでくれました。

 「でも、乳腺ガンもやったし、悪性腫瘍もやったんですよ」というと、「あっ、そう?」と驚いた様子でした。

 棺にお花やビスケット、チーズを入れてやり、箱が閉められ、炉に入れられるときは、みなで大泣きでした。「なんたってほたるのお母さんだもの。お別れに行きたい」と言って来てくれた清美さんも号泣。
 清美さんは常々「火葬は熱くて可哀想な気がするから、土に埋めたい」などと言っている人なので、本当に「可哀想!」と思ったことでしょう。

 彼女とは犬の飼い方に対する考え方も飼い方も似ていて、読書好きで何でも手作りをしたり、生活の中で工夫することを面白がるところも似ていて、12年近くの付き合いの間に私にとって本当に気の置けない友人となりました。これもトチの贈り物。彼女が来てくれたことが心から嬉しく、感謝しています。

 小一時間でトチは骨になりました。

 火葬担当のおじさんが骨の部位の説明をしてくれました。

 「この子はがっしりした骨をしていますね。丈夫だったでしょ。ただもう骨髄はスカスカになっているから、骨粗鬆症の状態ですね。まあ15歳ですからね。ということは、黒ラブがブームになる前に飼い始めたんですね。人気が出て飼われるようになった10~12歳子が最近ずいぶん運ばれてくる。
 
警察犬にも黒ラブは増えたけど、警察犬だと8歳くらいで亡くなる子が多いです。任務が大変なんでしょうね。それに比べたら大往生ですね」

 病気の子はその形跡が骨に残り、ガンなどで長患いした子の骨もすぐ分かるそうです。以前まだ幼くして白血病で逝った猫のアイを火葬したときも、確かこのおじさんが「この子は生前病気だったでしょ。骨が小さくてもろい。病気だった子の骨のようですね」と教えてくれたのです。

 トチの骨にはガンや病気の形跡が見られないということは、本当に天寿を全うして老衰に近い状態だったのだと思います。おじさんの言葉にとても慰められました。

 骨壺に納まりきらないくらい立派な骨になって、トチの肉体はうちに帰ってきました。

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