最近、“スマホ認知症”というものがあるのを知った。スマホ認知症とはデジタル認知症ともいい、IT機器の長時間にわたる使用によって脳機能が低下し、人の名前が出てこなかったり物事を思い出したりすることが難しくなる状態を指すらしい。
近年は比較的若い層の患者が目立つようになり、患者の多くは日々の仕事の中で常にスマホを携帯し、メールの処理や新聞のチェック、インターネットでの情報収集に余念がない若い世代であるようだ。
文部科学省の研究調査によると、スマホの1日の使用時間が長い児童は、学習時間が同じでありながら、スマホの使用時間が短い児童に比べ学習成績が悪いと報告されている。さらに、スマートフォンの画面の光も人体に悪影響を与える。その結果、起きている時間帯の情報処理能力が落ちてくるので、ますますもの忘れがひどくなる。
子供や若い世代だけでなく、高齢者がスマホ認知症になるリスクも考えられる。近くに身寄りがなく近所付き合いも薄い独居高齢者の場合、誰からも干渉されることなく好きなだけスマホを使うことができるため、スマホ認知症になる可能性が高くなる。
高齢化にともない、認知症患者の数は急増している。その数なんと600万人以上で、65歳以上の高齢者の3人に1人が認知症かその予備群というデータもある。大切な記憶が少しずつ失われ、人格が変わってしまう。できれば生涯にわたって認知症とは無縁のまま、人生の最後まで自分らしく過ごしたいと思うのは、人類共通の願いだろう。
人間には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感が備わっている。スマホを使う場合、視覚だけで情報を取り入れてしまうため、考えることをあまりしない。普段の生活の中で、視覚を含めた五感をバランスよくフルに活用するように心がけたい。
難聴者の友人(73歳)は、床屋の経営を息子に譲って土曜日と日曜日の2日間だけ店に出るようになったため認知症になったらしい。環境が大きく変わると、人間は認知症になりやすいのである。俳句や囲碁は頭を使うため認知症に良いそうで、90歳で亡くなった父は、俳句と囲碁をしていたために認知症にならなかったように思う。
戦後の日本の高い経済成長の基盤になったのは、日本人の学習への意欲と読書習慣であった。しかし、最近の日本人はスマホばかりを見て新聞を読まず読書もしないので、今後も認知症者が増えていくだろう。
「十勝の活性化を考える会」会員