おほかた、世を逃れ、身を捨てしより、恨みもなく、
恐れもなし。命は天運にまかせて惜しまず、いとはず。
身は浮雲になずらへて、頼まず、まだしとせず。
一期の楽しみは、うたたねの枕の上にきはまり、
生涯の望みは、折々の美景に残れり。
出家してからは、人をうらんだり、物事を恐れたり
命を惜しむこともなくなった。
自分はまるで浮雲のように なにものにも縛られず
生きていると思えば、なにかをあてにしたり、
現状を不満に思うこともない。
ありのままの自分を受け入れている。
一番の楽しみは 肘を枕にうたたねをして、
自由な境涯を満喫する事である。
生涯最後の望みは 四季折々の美しい景色を味わって
大自然に遊ぶ事である。
長明は 人とかかわる煩わしさよりも
一人の寂しさをとった。
それほど、環境に翻弄される都会での生活に
疲れ果てていたのだと思う。
人間って 心があるからかえってめんどくさい部分もある。
うつ病を患う人の多さにも そういった事が表れていると思う。
せめて 人生の終盤には 長明のような境涯になりたいものだ。