TULIP DIARY

届くといいな やさしい風に乗って

僕の明日を照らして

2010年06月02日 | 読書日記
僕の明日を照らして 瀬尾まいこ 著 筑摩書房
陸上部、数学が得意な中学2年生の隼太。
隼太のお母さんなぎさはスナックローズのママ。
なぎさの再婚相手である歯科医師の優ちゃん。
どこにでもいる3人家族のこの一家。
この義理の父親である優ちゃんは切れると隼太を
殴る虐待を繰り返す父親だった。
隼太はそんな優ちゃんとうまくやっていこうと
カルシウムが豊富な料理を作って何とか優ちゃんに切れないで
もらいたいとがんばる姿が痛々しい。
図書委員の関下さんと隼太の会話、図書室でのやり取り、
下校途中の会話などが瀬尾さんの小説らしきほんわかしたムードを
時折感じさせる。さすが著者は現役の中学校の先生だけ
あって今の中学生の日常が詳細に描かれていた。
しかし、この小説の中には虐待という重いテーマが取り上げられていた。
優ちゃんは歯科医師としては聡明で知識も豊富、
立派な社会人なのだろうが、薄っぺらな人物にしか思えない。
家で隼太を殴り虐待をしているとは
隼太と優ちゃんだけしか知らないことだった。こんな人が世間には
一杯いるかもしれないんだぞと言いたげに思えた。
隼太は殴られてもそんな優ちゃんと全く何も気付いていない
お母さんとの3人の生活を何とかうまく続けていこうと
がんばっている間に隼太と優ちゃんの間にはいつしか
心が通じ合い、友情に近いものが芽生えていたのだった。不思議。
またもうひとつのテーマはやさしさの意味。
やさしいこととやさしくすることは違うと本の帯にも書かれていた。
この本の中では優ちゃんの優しさ、隼太の優しさが対比されていて
本当の優しさとはどういう意味かを読み手に問い正す。
隼太の同級生関下さんが隼太に投げかけた
優しさの意味の言葉が印象的だった。
最後まで読んでも救われない。元気になれない小説の部類に入るかな。



コメント
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