宇和の堂所山の「オオヒトの足跡石」は、実は西予市民はほとんど知らない。宇和の巨人伝説といえば、歯長峠の方が格段に有名である。この歯長峠の巨人伝説は、足利又太郎忠綱が源氏に追われてこの地に居住する。力は百人力で、声は十里に及び、歯の長さは1寸。この歯の長さから「歯長峠」と名前がついた、という伝説である。もとは、江戸時代編纂の『宇和旧記』に足利(田原)忠綱の記述が伊賀ノ上村の項にあり「是末代無雙勇士也、三事越人也、所謂、一、其力対百人也、二、其聲響十里、三、其歯一寸也云々」と巨人の様子が紹介されている。しかし最後の「云々」というのがひっかかる。そう、実はこの文章はある文献の「引用」なのだ。その文献とは「吾妻鏡」。治承5年閏2月25日条に同じ記述があるのだ。ということは、歯長峠その場所の伝説として巨人の様子が具体的に筆記されたのではなく、「吾妻鏡」の記述・知識がもとにあって、それを引用し、後に現地の巨人伝説として語られるようになったのである。このこともあって、某放送局の問い合わせには歯長峠の巨人伝説も興味深いが、堂所山の「オオヒトの足跡石」の方にリアリティがあると判断した次第。実際、オオヒトの足跡石からは、佐田岬半島・九州方面がよく見える。そして金山出石寺も見えるということで、足跡ができた理由とされる言い伝えに出てくる場所がすべて眺望できる位置にある。見えるからこそ、そこで語られたのだということが実感できた。さて、巨人のことを「オオヒト」と呼ぶが、漢字で表記すれば「大人」。これは東日本の巨人伝説「ダイダラボッチ」と関係があると言えなくもない。柳田国男によれば、ダイダラとは大きな太郎の意味で、ボッチは法師。つまり、大・太郎・法師というわけで、西日本のオオヒト=大・人と意味は似通っている。こんな巨人伝説は、全国各地にあるが、愛媛にもいろんなところにある。宇和でも堂所山、歯長峠、そして法華津峠にもあるらしいとの話を伝聞している。最後に、今回、某放送局の番組で放送されることになって、視聴者は現地を見たいという衝動にかられるかもしれないが、堂所山のオオヒトの足跡石は普通乗用車は避けた方がいいし、実際、放送局の車は最後、道を通ることができなかった。しかも、車を降りてから歩きが大変。これからの季節、草木が茂って、歩行困難。私が現地に行った際には、地元の方々が草刈機・鎌で道を作りながらの強行突破。お一人での現地散策は、まずお勧めできません。
宇和の堂所山の「オオヒトの足跡石」は、実は西予市民はほとんど知らない。宇和の巨人伝説といえば、歯長峠の方が格段に有名である。この歯長峠の巨人伝説は、足利又太郎忠綱が源氏に追われてこの地に居住する。力は百人力で、声は十里に及び、歯の長さは1寸。この歯の長さから「歯長峠」と名前がついた、という伝説である。もとは、江戸時代編纂の『宇和旧記』に足利(田原)忠綱の記述が伊賀ノ上村の項にあり「是末代無雙勇士也、三事越人也、所謂、一、其力対百人也、二、其聲響十里、三、其歯一寸也云々」と巨人の様子が紹介されている。しかし最後の「云々」というのがひっかかる。そう、実はこの文章はある文献の「引用」なのだ。その文献とは「吾妻鏡」。治承5年閏2月25日条に同じ記述があるのだ。ということは、歯長峠その場所の伝説として巨人の様子が具体的に筆記されたのではなく、「吾妻鏡」の記述・知識がもとにあって、それを引用し、後に現地の巨人伝説として語られるようになったのである。このこともあって、某放送局の問い合わせには歯長峠の巨人伝説も興味深いが、堂所山の「オオヒトの足跡石」の方にリアリティがあると判断した次第。実際、オオヒトの足跡石からは、佐田岬半島・九州方面がよく見える。そして金山出石寺も見えるということで、足跡ができた理由とされる言い伝えに出てくる場所がすべて眺望できる位置にある。見えるからこそ、そこで語られたのだということが実感できた。さて、巨人のことを「オオヒト」と呼ぶが、漢字で表記すれば「大人」。これは東日本の巨人伝説「ダイダラボッチ」と関係があると言えなくもない。柳田国男によれば、ダイダラとは大きな太郎の意味で、ボッチは法師。つまり、大・太郎・法師というわけで、西日本のオオヒト=大・人と意味は似通っている。こんな巨人伝説は、全国各地にあるが、愛媛にもいろんなところにある。宇和でも堂所山、歯長峠、そして法華津峠にもあるらしいとの話を伝聞している。最後に、今回、某放送局の番組で放送されることになって、視聴者は現地を見たいという衝動にかられるかもしれないが、堂所山のオオヒトの足跡石は普通乗用車は避けた方がいいし、実際、放送局の車は最後、道を通ることができなかった。しかも、車を降りてから歩きが大変。これからの季節、草木が茂って、歩行困難。私が現地に行った際には、地元の方々が草刈機・鎌で道を作りながらの強行突破。お一人での現地散策は、まずお勧めできません。