三種町の見上さんが第3詩集「一遇」を出版された。透明感のあるいききとした36の詩が5章にわたって編まれている。
「未来に ふいに -火星大接近の夜」 (略)多分ぼくらはいつか忘れたり/気がつかずにいたりしてしまうんだろう/遠い日に受けた だれかからの/数え切れない優しさを/ 今見るあの星のまたたきが/数千万年前に放たれた光のベクトルであるように/遠い昔に忘れ去った大切な記憶が/未来にふいに思い出されるかもしれない/ 昨日放った僕の吐息や思いが/明日はあなたに届くかもしれない
この詩をはじめとして、第1章「一遇」には星座に関連した作品が並ぶ。第2章「ささしき墓標群」、第3章「ジュリエット、第4章「二人」、第5章「ただいちど」。作者の人柄がよく感じられる詩集で、朗読するとさらに響くと思われる。そういえば、あとがきに「声にはまだ人間の不可知の不思議な力が宿っているのではないかと思う。(略)それは口に出せば、瞬時に消えるヒカリの粒々みたいなもので、何の痕跡も残さず宙に霧散するばかりかもしれない。が、じつはそうではなく、聞く者の(自分自身を含めて)心に永遠に刻まれる何かである気がする。だから、僕は、詩を、声に出すことを前提にして書いている(略)」とあった。含蓄のある言葉だ。
発行:2013年12月10日、発行所:コールサック社
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