近江正人氏による講演 十田撓子氏と宮岡秀行氏のアフタートーク
10月27日、秋田県現代詩人協会主催「秋田の詩祭2018」が、あきた文学資料館において開催され、市民や詩の愛好者など65人ほどが午前と午後の講演に聞き入った。
午前の部は、始めに高校生と大学生、社会人計8名による自作詩の朗読が行われた。ここ数年高校生の参加が増えて活気がある。これは各校文芸部の先生のご理解によるものと、感謝申し上げたい。
講演は、山形の詩人で劇作家の近江正人氏(日本現代詩人会会員、山形詩人会理事)。『土に叫ぶ 義農松田甚次郎 ~宮沢賢治を生きた人~』と題し、山形の先人松田甚次郎を紹介。
山形県最上郡生まれの松田甚次郎(1909年~1943年)は、"東北農村のもっとも暗く貧しい昭和初期、戦争と飢餓の時代を郷土愛に燃え、土と農業を心から愛し故郷を明るく楽しいものにしようと、35年の短い生涯を燃焼させて農村の生活改善運動を行った稀有な実践家"であり、また、”当時全く無名だった宮沢賢治の存在を全国に知らしめた”人。(” ”内は近江氏のレジュメから引用)宮沢賢治を「わが恩師」と敬愛し実践する松田と賢治を対比させながらその違いについても言及された。映像を使い分かりやすく説明されたこともあり、初めて知った松田甚次郎の生き方が強くインプットされた。
午後の部は『詩人の愛、原民喜の詩と』と題し、十田撓子氏(H氏賞受賞詩人、日本現代詩人会、秋田県現代詩人協会各会員)と宮岡秀行氏(映像作家)による詩の朗読と映像の上映、そして参加者と車座になってのアフタートークが行われた。
上映された映画『夏の花』は、原民喜の短編小説『夏の花』をもとに宮岡氏が監督製作したもの。1945年8月6日、被ばくした広島の街を彷徨する原の行動を、現在の広島の街に追ったイメージ映像。川の水音、街の喧騒、子供たちの声などが広島の情景をただただ静かに映し込む中で響く。広島の街や公園や教会をパンしてゆくだけの映像がここで伝えようとしたのは何か、見る側は何を感じるのか。大きなテーゼでもある。映像の中で詩人野村喜和夫が原の『夏の花』の一節を朗読するタイミングもよかった。アフタートークでは、参加者に対してどのように観たか、感じたかを質問。音の印象を伝える参加者や原爆・戦争に対する考え方を語る人が多かった。が、しかし、原の目線や思考について触れた人は少なかった。(いなかった?)
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