『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想51  わたしの普段着

2013-01-31 10:07:50 | 小説(日本)

著者     : 吉村昭<o:p></o:p>

 

生没年    : 1927年(昭和2年)誕生<o:p></o:p>

 

 2006年(平成18年)逝去<o:p></o:p>

 

出版     : 2005年(平成17年)<o:p></o:p>

 

出版社    : 新潮社<o:p></o:p>

 

値段     : 1500円(税別)<o:p></o:p>

 

受賞歴    :1966年「星への旅」太宰治賞など。<o:p></o:p>

 

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感想<o:p></o:p>

 

 この本はいろいろな雑誌に発表した随筆を収録したものである。45の随筆が4つのテーマに分類されている。<o:p></o:p>

 

1.日々を暮らす。2.筆を執る。3.人と触れ合う。<o:p></o:p>

 

4.旅に遊ぶ。<o:p></o:p>

 

 日常の出来事や旅先での思い出、人との交流、小説家としての考え方が書かれている。<o:p></o:p>

 

歴史小説の名手として名高い筆者は、フィクションや想像を排して歴史の中で埋もれた史実や証言に基づいて歴史を再構築してきた。史実や証言を調べる中で定説を覆す発見もあり、また小説の中では書けなかったこともあり、そうしたことを随筆の中で触れている。日露戦争の日本海海戦をテーマにした「海の史劇」の調査で目撃証言を得たエピソードは、調査に徹した歴史小説家の醍醐味を感じるものである。<o:p></o:p>

 

山口県萩市の北方45キロの沖にある見島に住む当時15歳だった老人の話である。激しい砲声の中、どちらが勝っているかわからないまま砂浜にボートがたどりつく。そこに55人のロシア兵が乗っていて、うち15人ほどが負傷していて5人は重傷者である。島の医師二人が駆けつけて手当をし、島の人がお茶や饅頭、握り飯を出しても誰も手をつけない。島の人が食べてみせると、やっと食べるようになる。やがて日本海軍の水雷艇が来て艇長が上陸すると、砂浜で横になっていたロシアの水兵たちが重傷者を除いて全員立ち上がり整列し敬礼した。「驚きましたな、日本だけじゃない、ロシアの水兵も規律正しいと思いました」と老人は結ぶ。<o:p></o:p>

 

戦争を痛ましいこととして感じる感覚が敵味方を越えて存在したことがわかる。普通の歴史書では人々の想いは描かれない。人々の想いを描くことができる歴史小説というジャンルのおもしろさを感じる場面である。<o:p></o:p>

 

2013110日読了)<o:p></o:p>

 

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わがまま評価(5点満点)<o:p></o:p>

 

読みやすさ  :☆☆☆☆<o:p></o:p>

 

教養度    :☆☆☆☆<o:p></o:p>

 

面白さ    :☆☆☆<o:p></o:p>