著者 クラウス・コルドン
生年 1943年
出身地 ドイツのベルリン
出版年 1980年
邦訳出版年 1999年
出版社 (株)理論社
訳者 大川温子
★感想★
ボンベイに住む13歳の少年ゴプーは、ボンベイでパーン(香辛料に浸したビンロウジの実のかけらをキンマの葉に包み、銀箔で包んだもの)を売っている。お父さんはホテルのエレベーターボーイでもうすぐホテルは閉鎖されるが、次の就職先を見つけることができない。そんなある日、海岸でマドラスから来たお金持ちの少年バプティと知り合う。バプテイはお姉さんと2人だけの兄弟で、友達がいなくて寂しい少年だった。ゴプーを気に入ったパプティは、父親に頼んでゴプーをボーイとして雇ってもらうことにする。お父さんが失業し6人兄弟の長男としての責任から、ゴプーはバプティについてマドラスに行くことにする。バプティはゴプーを友達にしたいと思っていたが、家族はゴプーをボーイとして仕事をさせようとし、ゴプーもバプティの家の仕事をすることを望んだ。ある時ゴプーと一緒にいるところを、意地の悪い学友に見られてしまい、バプティはゴプーを友達だと説明するが、ゴプーが家の前で働く姿を見た学友はボーイだと暴露する。その意地悪な学友をバプティとゴプーが自転車で追いかけているときに、逃げようとした学友が交通事故を起こしてしまう。警察に呼ばれたバプティとゴプーは拘留されることになり、バプティのお父さんの力でバプティは釈放されるが、ゴプーは拘留される。翌日バプティのお父さんを信じられないゴプーは隙をみて警察から逃げ出す。
ゴプーは旅の中でいろいろな経験を積んで帰宅するという物語だ。バプティもゴプーに対する友情を通じて、ハリジャン(不可触民)の生活を知るようになるが、やはり自分の家に戻る。ゴプーの物語でもあり、バプティの物語でもある。旅が地理的にボンベイからマドラスというだけでなく、インドの階級社会の最上位から最下位までの旅でもある。白いトラの寓話はインドの人々の苦しさを端的に表している。白いトラが現れて食べてくれることで生の苦しさから解放されるという寓話だ。死期が近づくと白いトラが現れるのだ。
少年達が生き生きと描かれていて、一気に読んでしまった。