読書感想158 リンバロストの乙女
著者 ジーン・ポーター(1863年~1924年)
出身地 アメリカ合衆国インディアナ州
訳者 村岡花子(1893年~1968年)
邦訳出版年 1957年
再版 (株)河出書房新社 2014年
★感想★
ジーン・ポーターはインディアナ州のリンバロストの沼地に住んでいた作家であり博物学者。処女作「そばかすの少年」の姉妹編として本書が書かれ、それぞれ200万部を超えるベストセラーになったという。
本書はリンバロストの沼地に住むエレノラ・コムストックの物語。エレノラは母親のキャサリンと暮らしている。大きな地所と森林を所有しながらも夫の生前の姿のまま維持しようとするキャサリンは、あえて貧しい暮らしをして、エレノラの希望をことごとく挫こうとする。やっと町の高校への進学を許してくれても、服一枚買ってくれることもなく、エレノラは作業着のまま高校へ向かわなければならない。更に教科書代や授業料はエレノラが工面しなければならない。そこでエレノラは蛾や蛾の幼虫の標本を買ってくれる鳥のおばさんに、リンバロストの沼地で捕った蛾や蛾の幼虫を売ることで費用を賄おうと考える。母親のキャサリンはエレノラに冷たく厳しいが、エレノラの周囲には暖かい人が集まり、エレノラを支えてくれる。隣に住むシントン夫妻は子供がいないので、エレノラに赤ちゃんの頃から愛情を注いでくれる。リンバロストの沼地に夜な夜な集まる不良のピートもエレノラの蛾採集に協力する。キャサリンがエレノラに冷たくするのは、夫の死はエレノラに原因があると思い込んでいるからだ。
親子の関係が破局を迎え、また和解に至るのにも蛾が関係してくる。後半には蛾が好きなシカゴの青年がエレノラの前に現れる。二人の恋の行方にも蛾が関係してくる。
母親のキャサリンが亡き夫への迷妄から醒め、娘への愛情に目覚める場面がすさまじい。夜の沼地に蛾を採集に向かうのだ。
美しい蛾を見たことがないが、見たくなる、そんな美しいリンバロストの森だし、沼地の描写が魅力的だ。