派遣労働者の惨害に凍り付く国民

テレビに写し出される「派遣村」の様子は、まさしく地震とか水害等災害地の救済の姿と一緒である。違うところは、救済に当たっているのが民間ボランティアだけだということである。役所はほとんど手が出せない、セーフ低ネットすなわち救済の法的根拠もないことに大きな衝撃が走っている。
派遣労働者は廃棄物のように捨てられた。それも、世界に冠たるリーデイングカンパニーによって。これは社会全体に深刻な衝撃を与えた。これからは派遣労働者の切り捨ては連鎖反応的に拡がるのではないか。こうなったら社会不安である。派遣村の映像を見た者は、企業というものは、お金を儲けるマシンであるということを悟ったであろう。国際競争力をつけてコストを低減し輸出で儲かれば従業員の給料が上がり、消費が増えて、景気も回復すると思って来た人が多かったはずだが、これは右肩上がりの経済成長の時期だけだった。海外にものが売れなくなり成長が止まった今は、その手の話に疑問を持ち始めた人が多いことだろう。人々は何兆円もお金を貯めている名だたる大企業がなりふり構わず、首切りの血刀を振り回す壮絶な姿を見た。GDPが世界２位の近代国家であり人権国家である日本政府は企業に何も言えない、日本社会はこの種の災害に何も手を打てないことも見た。ここに来て、誰も幻想を抱く者はいなくなった。このままでは騒ぎは収まらないだろうから、大政治問題になることは必至の情勢であると思う。