青田淳は先日目にしたあの場面が、常に頭の中にあった。
雪の家でバイトをしている亮が、彼女に親しげに近づくあの姿が‥。
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彼女だけでなく、雪の父や母に淳よりも先に会うことになった亮。
それを思うと淳の心は焦れた。気がついたら彼女の家へと車を走らせていた‥。
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「お母さん」
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娘が自分を呼んだので、雪の母親はその声のする方に振り向く。
ただいま、と言って入り口に佇む娘はどこか緊張した面持ちだ。
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そして娘に続いて、初めて見る男性が入って来た。
「まぁ、誰?」と問うと、その彼はニッコリと微笑んでからお辞儀をした。
「こんばんは」
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雪は母と先輩の間に入った。
幾分恥ずかしそうな表情で、母に彼を紹介する。
「彼氏‥」
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雪の母親は驚いて顔を上げた。背の高い彼の顔をマジマジと仰ぎ見る。
彼は雪の母に向かって微笑むと、礼儀正しく自己紹介を始めた。
「はじめまして、お母様。雪さんとお付き合いさせて頂いてます、青田淳と申します」
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その柔らかな笑顔を前に、雪の母は声を上げた。
「まぁまぁ‥!あなたが‥!」
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感激さながらの雪の母親に淳は、「雪さんと同じ学科で、一つ上の学年になります」と自己紹介を続ける。
照れ顔の雪と、声を上げる母親、そしてニッコリと微笑む淳‥。
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客達は雪達に目を留め、中でも女性客は淳を見て息を吐いた。
「綺麗なお店ですね」と言って、淳は笑顔を浮かべる。
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そこに佇み周りを見渡す淳は、誰もが見とれるルックスとスタイルだった。
すっかり雪の母親も彼の虜である。淳を見つめる眼差しから、花が溢れている。
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「まぁ~本当にハンサムね~
」と雪の母が言うと、
「ありがとうございます。お母様もお綺麗です」と淳は微笑みと共に完璧な返答をし、彼女を喜ばす。
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そんな二人のやり取りを見た亮は露骨に顔を顰め、吐き戻すような仕草をしていた。(無論冗談だが)
雪は淳と亮との喧嘩の始まりを感じ取り、亮に向かってテレパスを送る。
お母さんの前では止めて
クビになるよ?!
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雪のジェスチャーを見て、亮が舌打ちをしながらその仕草を止める。
そんな雪と亮のやり取りなど露も知らない雪の母親は、あることに気がついて幾分慌てた。
「まあ~本当にどうしましょ!こんな突然訪ねて来られちゃ‥夕飯は食べたの?」
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淳は首を横に振る。「お店に伺うのに、食事を済ませて来るのは失礼かと思いまして」と慇懃な言葉を口にする。
それでも娘の彼氏なんだから変なものは出せない、とオロオロする雪の母に向かって、淳は百万ドルの笑顔を浮かべた。
「雪さんから、お母様はとても料理上手だと伺っていたんですよ」
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この子ったら、と言って母親は雪の肩を小突いた。
笑い合う母と娘とその彼氏は、なんとも和やかムードである。
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それを見ている亮はゲロゲロだったが‥
雪の母親は淳を席に案内し、すぐに用意するから座って待っていてと言った。そして振り返り、亮を呼ぶ。
「亮君、すぐに水持って行ってちょうだい」「えっ?!オレすか?!」
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亮はギクッとして思わずそう声を上げた。
三人の関係を知らない雪の母親は、亮の耳を引っ張りながら彼に説教する。
「ったくさっきから一体どうしちゃったのよ?!じゃあ誰が水を持ってくの
」
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他のバイト‥と亮が口にすると、雪の母は「いいからやんなさい!」と彼に喝を入れた。
まさか淳に給仕をすることになるとは‥。亮は凄い形相で、彼の方に向き直る。
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淳はそんな亮を見て肩を竦めた。
こうなったのは不可抗力だと言わんばかりに。
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ドスドスと大きな足音でその場を後にする亮を見て、雪はヒヤヒヤしていた。
いつ喧嘩が始まってもおかしくない雰囲気だ‥。
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淳と雪がテーブルにつくと、水を持った亮が凄い勢いでやって来た。
そして亮はその勢いのまま、コップをテーブルにドン!と置いた。
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勢い良く上がるしぶきは、全て雪にかかって水浸しだ。
亮の貼り付いたような笑顔が淳に向けられる‥。
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こ、この野郎‥
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ズブ濡れ&引き攣った表情で亮を睨む雪を、
振り返って亮が「スマン」と口にする。
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淳はそんな雪を、タオルで甲斐甲斐しく拭いてやった。
「あらら、雪ちゃん拭くよ」
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「お前は保育士か
」と亮は淳に突っ込んだが、淳は雪の方を向いたまま口を開く。
「ところでバイトの方はどう?」
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それを聞いた亮の顔が歪む。何で淳にそんなことを聞かれなくてはならないのだ?
「お前に何の関係が‥
」「お前じゃなくて雪ちゃんの話」
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淳はバッサリと亮に言い放った。
それきり亮に目もくれない淳。亮はブチ切れた。
「こんのヤロ‥!」
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そう言って淳に掴みかかるすんでのところで、雪が勢い良く間に割って入った。
わざとらしいほど明るい笑顔で、彼の問いに答えを返す。
「あ~ははは!そうですね~、返却された本を分類して返していくだけなので、
大したことないです。大学内のバイトなので、交通費もかからなくてすごく良いですよ~!」
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笑顔で頷く淳と、強く押されて痛む肩を抱える亮と‥。ぎこちない空気である。
亮は作り笑顔を浮かべると、お客さんに掛けるマニュアルな言葉を口にして背を向けようとした。
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しかし淳は含みのある笑みを浮かべると、今度は亮に向かって声を掛けた。
「スーツ姿は見ることが出来なかったけど、エプロン姿は長続きするように願うよ」
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ブチブチブチ‥
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亮は引き攣った表情のまま、なんとか堪えて二人に背を向けた。荒々しく足音を立てて歩く。
「二杯目からの水はセルフでっす
!さっさとお召し上がり下せぇ
」
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亮の捨て台詞と、「何してんですか‥!」と言って怒る雪‥。
淳は再び”不可抗力ポーズ”をして肩を竦める。
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顔を合わすとすぐ喧嘩の、亮と淳を一発ずつ殴りたいと雪は思ってブルブルした。
淳はキョトンとした顔で「ゴメンね」と軽く口にする。
そんな微妙な空気の漂う中、母が作った料理が運ばれて来る‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<紹介します。>でした。
いや~先輩は、「娘の彼氏」としては相当な合格点だったんじゃないでしょうか。
一流大の学歴、礼儀正しい態度、爽やかな笑顔‥。
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亮の笑顔はコレですが‥笑
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それでも”飾った笑顔”がぎこちない亮って本当憎めないです^^;
次回は<彼の印象>です。
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雪の家でバイトをしている亮が、彼女に親しげに近づくあの姿が‥。
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彼女だけでなく、雪の父や母に淳よりも先に会うことになった亮。
それを思うと淳の心は焦れた。気がついたら彼女の家へと車を走らせていた‥。
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「お母さん」
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娘が自分を呼んだので、雪の母親はその声のする方に振り向く。
ただいま、と言って入り口に佇む娘はどこか緊張した面持ちだ。
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そして娘に続いて、初めて見る男性が入って来た。
「まぁ、誰?」と問うと、その彼はニッコリと微笑んでからお辞儀をした。
「こんばんは」
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雪は母と先輩の間に入った。
幾分恥ずかしそうな表情で、母に彼を紹介する。
「彼氏‥」
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雪の母親は驚いて顔を上げた。背の高い彼の顔をマジマジと仰ぎ見る。
彼は雪の母に向かって微笑むと、礼儀正しく自己紹介を始めた。
「はじめまして、お母様。雪さんとお付き合いさせて頂いてます、青田淳と申します」
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その柔らかな笑顔を前に、雪の母は声を上げた。
「まぁまぁ‥!あなたが‥!」
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感激さながらの雪の母親に淳は、「雪さんと同じ学科で、一つ上の学年になります」と自己紹介を続ける。
照れ顔の雪と、声を上げる母親、そしてニッコリと微笑む淳‥。
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客達は雪達に目を留め、中でも女性客は淳を見て息を吐いた。
「綺麗なお店ですね」と言って、淳は笑顔を浮かべる。
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そこに佇み周りを見渡す淳は、誰もが見とれるルックスとスタイルだった。
すっかり雪の母親も彼の虜である。淳を見つめる眼差しから、花が溢れている。
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「まぁ~本当にハンサムね~
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「ありがとうございます。お母様もお綺麗です」と淳は微笑みと共に完璧な返答をし、彼女を喜ばす。
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そんな二人のやり取りを見た亮は露骨に顔を顰め、吐き戻すような仕草をしていた。(無論冗談だが)
雪は淳と亮との喧嘩の始まりを感じ取り、亮に向かってテレパスを送る。
お母さんの前では止めて
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雪のジェスチャーを見て、亮が舌打ちをしながらその仕草を止める。
そんな雪と亮のやり取りなど露も知らない雪の母親は、あることに気がついて幾分慌てた。
「まあ~本当にどうしましょ!こんな突然訪ねて来られちゃ‥夕飯は食べたの?」
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淳は首を横に振る。「お店に伺うのに、食事を済ませて来るのは失礼かと思いまして」と慇懃な言葉を口にする。
それでも娘の彼氏なんだから変なものは出せない、とオロオロする雪の母に向かって、淳は百万ドルの笑顔を浮かべた。
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この子ったら、と言って母親は雪の肩を小突いた。
笑い合う母と娘とその彼氏は、なんとも和やかムードである。
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それを見ている亮はゲロゲロだったが‥
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雪の母親は淳を席に案内し、すぐに用意するから座って待っていてと言った。そして振り返り、亮を呼ぶ。
「亮君、すぐに水持って行ってちょうだい」「えっ?!オレすか?!」
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亮はギクッとして思わずそう声を上げた。
三人の関係を知らない雪の母親は、亮の耳を引っ張りながら彼に説教する。
「ったくさっきから一体どうしちゃったのよ?!じゃあ誰が水を持ってくの
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他のバイト‥と亮が口にすると、雪の母は「いいからやんなさい!」と彼に喝を入れた。
まさか淳に給仕をすることになるとは‥。亮は凄い形相で、彼の方に向き直る。
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淳はそんな亮を見て肩を竦めた。
こうなったのは不可抗力だと言わんばかりに。
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ドスドスと大きな足音でその場を後にする亮を見て、雪はヒヤヒヤしていた。
いつ喧嘩が始まってもおかしくない雰囲気だ‥。
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淳と雪がテーブルにつくと、水を持った亮が凄い勢いでやって来た。
そして亮はその勢いのまま、コップをテーブルにドン!と置いた。
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勢い良く上がるしぶきは、全て雪にかかって水浸しだ。
亮の貼り付いたような笑顔が淳に向けられる‥。
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こ、この野郎‥
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ズブ濡れ&引き攣った表情で亮を睨む雪を、
振り返って亮が「スマン」と口にする。
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淳はそんな雪を、タオルで甲斐甲斐しく拭いてやった。
「あらら、雪ちゃん拭くよ」
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「お前は保育士か
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「ところでバイトの方はどう?」
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それを聞いた亮の顔が歪む。何で淳にそんなことを聞かれなくてはならないのだ?
「お前に何の関係が‥
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淳はバッサリと亮に言い放った。
それきり亮に目もくれない淳。亮はブチ切れた。
「こんのヤロ‥!」
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そう言って淳に掴みかかるすんでのところで、雪が勢い良く間に割って入った。
わざとらしいほど明るい笑顔で、彼の問いに答えを返す。
「あ~ははは!そうですね~、返却された本を分類して返していくだけなので、
大したことないです。大学内のバイトなので、交通費もかからなくてすごく良いですよ~!」
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笑顔で頷く淳と、強く押されて痛む肩を抱える亮と‥。ぎこちない空気である。
亮は作り笑顔を浮かべると、お客さんに掛けるマニュアルな言葉を口にして背を向けようとした。
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しかし淳は含みのある笑みを浮かべると、今度は亮に向かって声を掛けた。
「スーツ姿は見ることが出来なかったけど、エプロン姿は長続きするように願うよ」
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ブチブチブチ‥
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亮は引き攣った表情のまま、なんとか堪えて二人に背を向けた。荒々しく足音を立てて歩く。
「二杯目からの水はセルフでっす
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亮の捨て台詞と、「何してんですか‥!」と言って怒る雪‥。
淳は再び”不可抗力ポーズ”をして肩を竦める。
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顔を合わすとすぐ喧嘩の、亮と淳を一発ずつ殴りたいと雪は思ってブルブルした。
淳はキョトンとした顔で「ゴメンね」と軽く口にする。
そんな微妙な空気の漂う中、母が作った料理が運ばれて来る‥。
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<紹介します。>でした。
いや~先輩は、「娘の彼氏」としては相当な合格点だったんじゃないでしょうか。
一流大の学歴、礼儀正しい態度、爽やかな笑顔‥。
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亮の笑顔はコレですが‥笑
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それでも”飾った笑顔”がぎこちない亮って本当憎めないです^^;
次回は<彼の印象>です。
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完璧ですね、青田さん。大人との接し方を心得てらっしゃる。
ちょうど2人を見比べるのに最適なシチュなので、まだ続くこの場面でちょっと先走りかもですが、
彼氏を完璧にこなしている淳より、口答えするくらい息子みたいに馴染んでる亮さんの方が微笑ましいですモンね。
互いにひがみ合いながら、ていうか、一見先輩の方が優勢なようで、実は亮さんの方が天性のモノを持ってるという点で、先輩はかなり出遅れた感が。
しかしこの店。
イケメンが出没する、という口コミで女性客が押しかけそうです。
だいたい亮がいる時点で既にスゴいコトになってそーなモンですが、その辺はとくに描写なしですよね。
不服です。
見ているこちらがドキドキして照れてしまいました。( *´艸`)
先輩!さすが、幼い頃から躾けられた完璧な挨拶!
ショーもない男共に囲まれてウンザリしていたお母さんは大喜びでしたね!
しかし!
あのさわやかな笑顔の下に嫉妬が渦巻いているとは・・・
先輩、怖いですヨ・・・。
この漫画はアプリで読んで、
あまりにも面白く自分の好みど真ん中だったので
3部の始めまで一気に読んでしまいました。
続きがどうしても気になり、
何とかならないかとネットで調べたところ、
こちらのサイトを見つけました!
正確な訳に加えて人物の心境なども
付け加えられて、とても読みやすいです。
こんなに丁寧に訳せるなんて尊敬します…!
一部など難しい表現があったので、
じっくり読み返そうと思います。
とにかく雪、淳カップルの初々しさに
悶えています(笑)
毎回楽しみに覗かせていただきたいと
思っております。
またコメントさせてください(*^^*)
長々と失礼致しました。
前に大学の女教授に歯の浮くようなおべんちゃらをサラッと言ってたのも然り。
なんか亮さんの吐きたくなる気持ちの方が理解しやすい私は、きっと世渡り下手な上でモテないんだろな~(苦笑)
先輩、雪ちゃんの親御さん(←久々)への印象とケンカふっかけに気を取られがちですが、どっちかというと雪ちゃんが素を出して亮さんとやり合ってる関係性を気にした方が良いような…
イケメンの多い店!そういや亮さんのイケメン設定ちょいちょい忘れられますよね~
前のバイトでは差し入れ貰ったりオゴってもらったりと、世のお姉様方とwinwinの関係築いてたのに。
女関係が下火なのは雪ちゃんの影響と信じたい!だって河村祭りが出来ないし!!(泣)
親受けのいい対応なんて余裕綽綽なのでしょう・・
母親からしたら、『」一流大の学歴、礼儀正しい態度、爽やかな笑顔‥。』の彼氏がいいですよね。
かたやお亮さん。
高校中退、ガサツで喧嘩っ早い、イケメンだけど「”飾った笑顔”がぎこちない」ですから。
人の懐にいつの間にか入る天性の人たらしたる面を持ち合わせてますけれど、娘の恋人には淳は満点合格点ですよ。
周りのオトコドもに振り回されてる雪ママには砂漠のオアシス的に映りますね・・
ところでイケメンの多い店、そうでした。
バイトの採用でも女性客集客要因として目をつけられていましたよね。
どうも淳とのやりとりやら、預言者との一件で、三枚目の仮面がはずせないでいるような。
亮さん、レストランで働いてた時は皆が振り返るほどイケメン設定だったのに‥!もしやM字進行?!
てかあのレストランの時がM字でしたよね。
亮はだんだんかっこよくなってると思うんですがねぇ。
先輩は劣化していくというのに‥涙
どんぐりさん
私がお母さんでも先輩は太鼓判ですよ~。
でもニコニコしながらも先輩のお食事の仕方窺ったり就職先とか聞いちゃう雪のママ‥。さすが鋭い雪のママ‥。私は雪ママがちょっと怖いです^^;
mioさん
はじめまして☆コメントありがとうございます~!
チートラ面白いですよねぇ~!ようこそようこそ☆
このブログは記事よりもコメ欄が面白いですから、そちらも合わせてお読み下さいねん^^!
そして雪、淳の初々しさに悶えておられますか!私も最初は、そうでした‥(遠い目)
これからも遊びに来て下さいね~♪
かにさん
先輩の”善人コスプレ”は定評がありますから!
スペック半端ないですしね。親ウケしますね~彼は。
確かに最近の亮は女関係無さそうですね!
そうか~それも雪の影響か~(ニヤニヤ)
むくげさん
いいこの仮面、その通りですね~。
突然訪ねて行っても訪ねられた方が恐縮してしまうオーラがありますしね。。
でも表面上の欠点がなさすぎて、それは同時に”とっつきにくい”ことにもなるわけで‥。
亮との違いはそこですよね~。蓮の淳と亮に対する態度の違いとか、もう見てて笑けますよね^^;