A大美術学部付近の構内を、小西恵は友達と連れ立って歩いていた。
天気も良く、野外を歩くのは気持ちの良い日である。
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するとそんな恵の後方から、ソロリソロリと近付く人物が居た。
彼は恵のピッタリ後ろに来ると、勢い良く膝カックンを決めて声を上げた。
「おいっ!」「??!」
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それは数年後しのお返し膝カックンだった。
高校時代、何度も彼らの間でなされたそのやりとりの‥。
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「な‥なに‥?!」
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突然の奇行に恵はあんぐりと口を開けて振り返った。
彼は大口開けて笑っている。
「ウハハ!な~に驚いてんだよ!キンカン!」
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「れ‥蓮?!」
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かくして二人は再会を果たした。
会わなかった期間そのものは一年ちょっとだが、それまで毎日のように顔を合わせていた彼らからすると、
随分と久しぶりのような気がした。
「いっや~ひっさしぶりだなぁ!大学生になってちょっと可愛くなったんじゃないのォ~?」
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そう言っていきなり馴れ馴れしく肩に凭れ掛かってくる蓮に、恵は少々引き気味だ。
(そしてこの二人の仲を見て、恵と一緒に居た友人は席を外した)
「何よ連絡も無しに突然!」 「ケータイの電池切れちゃってさぁ」
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蓮は笑いながら恵が相変わらず小さいことを口にすると、あんたも変わんないじゃんと言って恵が応戦する。
大学生になっても、二人の雰囲気は相変わらずだ。
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蓮は改めて周りを見渡し、話を続けた。
「A大ねぇ‥。うちの姉ちゃんを追ってここにまで入るなんてなぁ~」
「てかあんたは何でここに来たの?!しかも突然!」
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恵はなぜ蓮がここに居るのか不思議でしょうがなかった。
疑問符を飛ばす恵からの問いに、蓮が答える。
「そりゃ~もちろん‥姉ちゃんに会いに‥」「経営学部はあっちですぅ~」
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そう言って経営学部の方を指差す恵の肩に、蓮は甘えるように手を置いた。
元来の人懐っこさは健在だ。
「姉ちゃんと連絡取れねーから、ついでにお前に会いに来たわけよ」
「あーそうですか
」
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「それでも俺ら幼馴染みじゃんか~。顔見てこうと思ってさぁ。
”何で来た?”なんて‥冷てぇなぁ~」
恵の態度を憂うような蓮に、溜息を吐いて恵は彼に質問した。
「‥アメリカは楽しかった?」
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少し意地悪そうな顔をした恵に、蓮もニヒルな笑みを浮かべて答える。
「フン、連絡もしてこなかったくせに今更?」
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恵は「あたし高3だったんだけど?!」と立腹だ。忙しいのに、度々連絡などしていられない。
それに蓮からも全くと言って音沙汰が無かったのだ。プリプリと怒る恵に、
蓮はハイハイと宥めながら、「それなりにな」と言って頷いた。
そんな彼に、恵は人差し指を差しながら詰め寄る。
「ところで蓮!あんたアメリカの大学通っときながら、何で突然帰国?
雪ねぇがどれだけ心配してると思ってるの?!」
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そう強い口調で責める恵に、思わず蓮もタジタジだ。
長男として家が心配になったからだと彼は答える。
「とか言って‥アメリカが合わなかっただけじゃないの?」
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痛いところを突いてやろうと思って言った言葉だった。
こう言ったら彼は否定するか怒り出すかと思っていたが、そのどちらでもなく蓮は俯いてこう言った。
「まぁ‥でも誰だって初めての海外って、合わないもんじゃん‥」
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目を逸らしながら、気まずそうに顔を掻きながら、蓮はそう言った。
恵は幾分意外さを感じながら口を噤む。自分の知っている蓮ではない彼を前にして。
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恵は彼の気持ちを少し慮り、しかし自分がずっと思っていたことを続けて口に出した。
「とにかく‥蓮も大変だったかもだけど、雪ねぇに心配かけちゃダメだよ」
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蓮は、尚も姉のことばかり口にする恵に幾分憤慨した。
「は?大変なのは姉ちゃんだけかよ。俺は大変そうに見えないってーの?」
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そう口にした蓮だったが、恵の反応は芳しくない。
焦れた蓮は恵の額に指を当てながら、子供のように喚き出した。
「この腐れキンカン!冷たいお前なんて冷凍キンカンだ!コノヤロ~!」
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自分の周りは皆冷たいと言って、蓮はおどけながら頭を抱えた。
子供っぽいその彼は、幼い頃から何も変わっていない‥。
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恵は久しぶりに会う彼を前にして、改めて昔の思い出が脳裏に浮かんだ。
幼少の頃、中学生の頃、そして高校生の頃‥。
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懐かしむような視線を、今も変わらない彼に送りながら恵は佇んでいた。
顔を合わせるのは久しぶりとはいえど、二人の雰囲気は何も変わらない‥。
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すると、蓮がいきなりこちらを振り返った。突然の行動にどきりとする。
「なっ何?!」
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蓮はニコニコと人懐こい笑みを浮かべたかと思うと、恵に向かって催促をした。
「ねぇちょっとケータイ貸して!アーンドお金もね
」
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「あら? ついでに浄水器と保険の加入も誘わなくていいの?」
蓮の図々しいおねだりに、恵がウィットの効いた冗談で切り返す。
二人はギャアギャアと騒ぎながらも、昔からの空気のまま肩を並べて歩いた。
午後の日差しは柔らかく、空はだんだんと秋らしく高くなっていく‥。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<一年ぶりの再会>でした。
幼馴染みっていいもんですねぇ。
蓮と居る時、雪に対する態度とはまた違った恵を見ることが出来ますね。
*追記
「浄水器と保険の加入」は韓国での”しつこい訪問販売”の鉄板だそうです。
CitTさんありがとうございました~^^
次回は<その探しもの>です。
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天気も良く、野外を歩くのは気持ちの良い日である。
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するとそんな恵の後方から、ソロリソロリと近付く人物が居た。
彼は恵のピッタリ後ろに来ると、勢い良く膝カックンを決めて声を上げた。
「おいっ!」「??!」
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それは数年後しのお返し膝カックンだった。
高校時代、何度も彼らの間でなされたそのやりとりの‥。
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「な‥なに‥?!」
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突然の奇行に恵はあんぐりと口を開けて振り返った。
彼は大口開けて笑っている。
「ウハハ!な~に驚いてんだよ!キンカン!」
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「れ‥蓮?!」
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かくして二人は再会を果たした。
会わなかった期間そのものは一年ちょっとだが、それまで毎日のように顔を合わせていた彼らからすると、
随分と久しぶりのような気がした。
「いっや~ひっさしぶりだなぁ!大学生になってちょっと可愛くなったんじゃないのォ~?」
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そう言っていきなり馴れ馴れしく肩に凭れ掛かってくる蓮に、恵は少々引き気味だ。
(そしてこの二人の仲を見て、恵と一緒に居た友人は席を外した)
「何よ連絡も無しに突然!」 「ケータイの電池切れちゃってさぁ」
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蓮は笑いながら恵が相変わらず小さいことを口にすると、あんたも変わんないじゃんと言って恵が応戦する。
大学生になっても、二人の雰囲気は相変わらずだ。
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蓮は改めて周りを見渡し、話を続けた。
「A大ねぇ‥。うちの姉ちゃんを追ってここにまで入るなんてなぁ~」
「てかあんたは何でここに来たの?!しかも突然!」
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恵はなぜ蓮がここに居るのか不思議でしょうがなかった。
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「そりゃ~もちろん‥姉ちゃんに会いに‥」「経営学部はあっちですぅ~」
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そう言って経営学部の方を指差す恵の肩に、蓮は甘えるように手を置いた。
元来の人懐っこさは健在だ。
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「あーそうですか
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「それでも俺ら幼馴染みじゃんか~。顔見てこうと思ってさぁ。
”何で来た?”なんて‥冷てぇなぁ~」
恵の態度を憂うような蓮に、溜息を吐いて恵は彼に質問した。
「‥アメリカは楽しかった?」
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それに蓮からも全くと言って音沙汰が無かったのだ。プリプリと怒る恵に、
蓮はハイハイと宥めながら、「それなりにな」と言って頷いた。
そんな彼に、恵は人差し指を差しながら詰め寄る。
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雪ねぇがどれだけ心配してると思ってるの?!」
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長男として家が心配になったからだと彼は答える。
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幼少の頃、中学生の頃、そして高校生の頃‥。
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顔を合わせるのは久しぶりとはいえど、二人の雰囲気は何も変わらない‥。
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すると、蓮がいきなりこちらを振り返った。突然の行動にどきりとする。
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蓮はニコニコと人懐こい笑みを浮かべたかと思うと、恵に向かって催促をした。
「ねぇちょっとケータイ貸して!アーンドお金もね
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「あら? ついでに浄水器と保険の加入も誘わなくていいの?」
蓮の図々しいおねだりに、恵がウィットの効いた冗談で切り返す。
二人はギャアギャアと騒ぎながらも、昔からの空気のまま肩を並べて歩いた。
午後の日差しは柔らかく、空はだんだんと秋らしく高くなっていく‥。
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<一年ぶりの再会>でした。
幼馴染みっていいもんですねぇ。
蓮と居る時、雪に対する態度とはまた違った恵を見ることが出来ますね。
*追記
「浄水器と保険の加入」は韓国での”しつこい訪問販売”の鉄板だそうです。
CitTさんありがとうございました~^^
次回は<その探しもの>です。
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湿っぽい、で宜しいか?
多分師匠のうち間違い
ウェットじゃなくてウィットだと思われますだ・・
機知に富んだっていう意味の・・
きっとこれも韓国通の方には分かる返しなのだと思われますが、如何せん韓国系は全くで。。
しかしこの二人。。
可愛いけどまるで子供なきゃっきゃっなやり取り・・・
それがどうやって付き合うことになったのやら。
案外やり手ですな・・
忙しいから連絡は無料だった、という意味です。
「そう言うあんたこそ!」← 蓮も恵に連絡しませんでしたね。
いやCitTさんが説明してくれるに違いないと、勝手に待ってました。
保険は確かに日本でもしつこいイメージです。
CitTさんご指摘の恵のセリフも!
いつもありがとうございます~^^
そして追記として、「浄水器と保険」について載せておきました。CitTさん、ありがとうございました!!