「せんぱいぃぃ!私もうどうすればいいのかぁぁぁ!!」
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顔を両手で覆った雪の叫びが、カフェにこだました。
そんな彼女の目の前に居る彼は、ニコニコしながらその話を聞いている。
「過去問のこと、ごめんね。つい話しちゃって‥」
「あぁぁぁ思わぬ伏兵がぁぁぁ」
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思わぬ伏兵‥それは青田淳のことだった。
彼から貰った過去問のせいで、悩みの種が一つ増えたのだ。
それでも、優秀な人の過去問を貰えたこと自体は素直にありがたい。
いいえ‥過去問ありがとうゴザイマス うんうん
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淳は雪の肩をポンポンと叩いてから、机の上にあるカップに手を伸ばした。
ゆっくりとした口調で、彼は自分の思いを口に出す。
「まぁ‥俺もこれ以上あの子達に良くしてあげる必要性を感じなくて‥もう会社勤めしてるわけだし」
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そして淳は雪のことを見つめながら、さりげなくこう提案した。
「この際、上手く利用してみたらどう?」
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雪は目を丸くした。
もしやもしやと思っていたことが、グレーからブラックへと舵を切る。
この人‥わざとだったのか‥
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目を白くしている雪のことを、淳はじっと見つめながらカップに口を付けた。
試すような、少し観察するような、幾分含みのある視線を投げかけながら。
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雪は別段、それに対して問い詰めることはしなかった。
心のどこかで「やっぱり」と、彼の意図を見抜いていた部分があるからだ。
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けれどそれ以降、二人はもうそのことには触れずに、ただ世間話をしたりして時を過ごした。
ガヤガヤとした喧騒に紛れる二人の会話‥。
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カフェを出た二人は、秋の夜道を歩きながら、また色々な会話を重ねた。
しかし雪の内心はソワソワし始める。
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携帯を取り出して時刻を確認すると、既に20時15分。
今から家に帰ったとしても、軽く22時は超えてしまうだろう。
もうこんな時間‥
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22時過ぎに帰って、そこから勉強スタートだ。
鞄の中にギッチリ詰まったテキストは、雪を焦燥に駆らせる。
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淳はそんな雪の様子を目にして、こう言葉を掛けた。
「最近忙しそうだね」「あっ‥まぁ‥」
「うーん‥」
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「もうちょっと会う頻度減らす?」
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その彼の提案に雪は目を丸くし、思わず彼の方を向く。
いいの?それじゃちょっとー‥
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減らしても構わないなら、正直助かるー‥。
そう思いながら、先輩の方を見上げると‥。
しゅん‥
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先輩は、見るからに寂しそうに項垂れていた。
思わず目が点になる雪。
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そして見る間に、淳の顔がだんだんとふくれっ面になる。
そんな彼を見て、雪は慌てて声を上げた。
「え?あぁぁぁ‥
そのぉぉぉ‥
」
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「そ、そこまでする必要ないですよ~!ま、臨機応変で!」
「そう?」
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雪がそう返すと、淳はニカッと笑って顔を上げた。
「毎日会うわけじゃないんだしね」
「ですよ!」
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というわけで、二人のデート頻度は現状維持に留まった。
淳はゴキゲンに、雪は合わせて笑いながら、二人並んで歩く‥。
でも今日はもう帰ろうか
はい フフ
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小一時間後、車は雪の家の近くに停車した。
雪は鞄から財布を出すと、用意してあったお金を掴んで彼に渡す。
「これ、ガソリン代です」
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雪からそれを掴まされた淳は、思わず目を丸くした。
「え?これ‥。いやちょっと待ってよ‥」
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そう言って顔を上げた淳の目の前には、指でバッテンを作り、首を横に振る雪の姿があった。
断固拒否
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こうなってはどうやっても返せそうにない。
「ダメですよ、ダメ。もう受け取ったでしょ」
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淳は不本意ながら、お金と共に彼女の律儀さを受け取る。
そして雪はシートベルトを外すと、そのまま車外へと出た。
「それじゃ行きますね。
気をつけて帰って下さい」
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淳は車内を覗く雪を、微笑みながら見つめていた。
付き合いも深くなった現在でも、彼女の律儀さは健在だ。
彼はそんな彼女に、一つアドバイスを与えてやる。
「考えてごらん」
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「どんなにいがみ合ったとしても、最後は皆実利を選んで収まるものだよ。
それは雪ちゃん、君にも良く分かるだろ?」
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”青田淳から貰った過去問”を巡って、雪の周りの人間が動き始めた。
上辺だけの笑顔と耳あたりの良い言葉は、きっと彼が今まで晒されてきたもの‥。
「‥分かってます」
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雪は彼の意図に触れた後、一人こう考えていた。
そういうことは、既に先輩の周りで十分に目にして来た。
彼らがどれだけ要領良く立ち回るかということは、誰より良く分かってる。
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それが悪いことだとは思わない。
ただ、
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もう少し賢明に対処してみようと思っただけ。
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物事の先を読み、動かす、先輩の意図。
雪は全てを知っていた。
それを受けて、周りがどう動いていくかということも。
そしてそれを知った上で、彼女なりに動いてみようと思ったのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<先輩の意図>でした。
「過去問を雪にあげた」と、淳はわざと言ったんですね~‥意図を持って。(@@;)
昔ならまた喧嘩になっていただろう事実ですが、雪ちゃんはもう慣れっ子で‥。
彼の性格や考えを受け止めた上で、自分なりにどう対処しようか考えるんですよね。
先輩、雪ちゃん離しちゃあかんよーー!
次回は<主導権を握って>です。
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顔を両手で覆った雪の叫びが、カフェにこだました。
そんな彼女の目の前に居る彼は、ニコニコしながらその話を聞いている。
「過去問のこと、ごめんね。つい話しちゃって‥」
「あぁぁぁ思わぬ伏兵がぁぁぁ」
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思わぬ伏兵‥それは青田淳のことだった。
彼から貰った過去問のせいで、悩みの種が一つ増えたのだ。
それでも、優秀な人の過去問を貰えたこと自体は素直にありがたい。
いいえ‥過去問ありがとうゴザイマス うんうん
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淳は雪の肩をポンポンと叩いてから、机の上にあるカップに手を伸ばした。
ゆっくりとした口調で、彼は自分の思いを口に出す。
「まぁ‥俺もこれ以上あの子達に良くしてあげる必要性を感じなくて‥もう会社勤めしてるわけだし」
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そして淳は雪のことを見つめながら、さりげなくこう提案した。
「この際、上手く利用してみたらどう?」
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雪は目を丸くした。
もしやもしやと思っていたことが、グレーからブラックへと舵を切る。
この人‥わざとだったのか‥
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目を白くしている雪のことを、淳はじっと見つめながらカップに口を付けた。
試すような、少し観察するような、幾分含みのある視線を投げかけながら。
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雪は別段、それに対して問い詰めることはしなかった。
心のどこかで「やっぱり」と、彼の意図を見抜いていた部分があるからだ。
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けれどそれ以降、二人はもうそのことには触れずに、ただ世間話をしたりして時を過ごした。
ガヤガヤとした喧騒に紛れる二人の会話‥。
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カフェを出た二人は、秋の夜道を歩きながら、また色々な会話を重ねた。
しかし雪の内心はソワソワし始める。
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携帯を取り出して時刻を確認すると、既に20時15分。
今から家に帰ったとしても、軽く22時は超えてしまうだろう。
もうこんな時間‥
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22時過ぎに帰って、そこから勉強スタートだ。
鞄の中にギッチリ詰まったテキストは、雪を焦燥に駆らせる。
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淳はそんな雪の様子を目にして、こう言葉を掛けた。
「最近忙しそうだね」「あっ‥まぁ‥」
「うーん‥」
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「もうちょっと会う頻度減らす?」
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その彼の提案に雪は目を丸くし、思わず彼の方を向く。
いいの?それじゃちょっとー‥
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減らしても構わないなら、正直助かるー‥。
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しゅん‥
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先輩は、見るからに寂しそうに項垂れていた。
思わず目が点になる雪。
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そして見る間に、淳の顔がだんだんとふくれっ面になる。
そんな彼を見て、雪は慌てて声を上げた。
「え?あぁぁぁ‥
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「そう?」
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雪がそう返すと、淳はニカッと笑って顔を上げた。
「毎日会うわけじゃないんだしね」
「ですよ!」
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淳はゴキゲンに、雪は合わせて笑いながら、二人並んで歩く‥。
でも今日はもう帰ろうか
はい フフ
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小一時間後、車は雪の家の近くに停車した。
雪は鞄から財布を出すと、用意してあったお金を掴んで彼に渡す。
「これ、ガソリン代です」
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雪からそれを掴まされた淳は、思わず目を丸くした。
「え?これ‥。いやちょっと待ってよ‥」
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そう言って顔を上げた淳の目の前には、指でバッテンを作り、首を横に振る雪の姿があった。
断固拒否
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こうなってはどうやっても返せそうにない。
「ダメですよ、ダメ。もう受け取ったでしょ」
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淳は不本意ながら、お金と共に彼女の律儀さを受け取る。
そして雪はシートベルトを外すと、そのまま車外へと出た。
「それじゃ行きますね。
気をつけて帰って下さい」
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淳は車内を覗く雪を、微笑みながら見つめていた。
付き合いも深くなった現在でも、彼女の律儀さは健在だ。
彼はそんな彼女に、一つアドバイスを与えてやる。
「考えてごらん」
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「どんなにいがみ合ったとしても、最後は皆実利を選んで収まるものだよ。
それは雪ちゃん、君にも良く分かるだろ?」
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”青田淳から貰った過去問”を巡って、雪の周りの人間が動き始めた。
上辺だけの笑顔と耳あたりの良い言葉は、きっと彼が今まで晒されてきたもの‥。
「‥分かってます」
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雪は彼の意図に触れた後、一人こう考えていた。
そういうことは、既に先輩の周りで十分に目にして来た。
彼らがどれだけ要領良く立ち回るかということは、誰より良く分かってる。
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それが悪いことだとは思わない。
ただ、
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もう少し賢明に対処してみようと思っただけ。
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物事の先を読み、動かす、先輩の意図。
雪は全てを知っていた。
それを受けて、周りがどう動いていくかということも。
そしてそれを知った上で、彼女なりに動いてみようと思ったのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<先輩の意図>でした。
「過去問を雪にあげた」と、淳はわざと言ったんですね~‥意図を持って。(@@;)
昔ならまた喧嘩になっていただろう事実ですが、雪ちゃんはもう慣れっ子で‥。
彼の性格や考えを受け止めた上で、自分なりにどう対処しようか考えるんですよね。
先輩、雪ちゃん離しちゃあかんよーー!
次回は<主導権を握って>です。
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まさかわざとだったとは‥って感じですよね。しらっとしてからに!!と突っ込みたいですね。
まかろんさん
本当いらんトラブルを増やすな!って感じですよね‥先輩‥。
なんとなく、雪がどう切り抜けるか見てるような気もせんでもないです。
「私達は変わった」と言う雪だから、自分のように切り抜けられるようになれると思ったのかな‥。
確実なことはわかりませんが、なんとなくそう思いました。
くうがさん
二人が一日べったり一緒の日は描かれてないですよねー。大学の帰りとか仕事の合間とか、描かれるのはそんなデートばっかりですね。
しかしこんなイケメンにしょんぼりされたら私的にはテンション上がりますが、
雪ちゃん的には「申し訳ない」って気持ちなんでしょうね。なんて律儀な‥(TT)
雪ちゃんにはもっと堂々と本音を言って欲しいですね。
うめやんさん
はじめまして!初コメありがとうございます~。
ラストは皆に希望や救いがあるものだと良いですよね~!
でも今のところ先輩は腹黒いままだし亮さんは去って行きそうだし‥まだまだ先は遠そうですよね。。
内容を知るのにけっこう長い間
見させていただいてました、
一方的ながらお世話になっています
ありがとうございます^^
ここまできて押されっぱなしだった
雪ちゃんのリベンジ感が見える気がしますよね。もしラストを見据えての展開だと
今のままなら円満な感じになるのかな~と楽観視しちゃいたくなりますが。。
たぶん淳は雪に同じ境遇をわかって
ほしいのかな~とも思いますが、彼の
腹黒さを考えると無意識レベルで
同じ穴のムジナ的な感じのほうが
正しいのかな~。同じ苦しみを味わえ
的な感じかな?
雪から遠藤氏のフォロー話をしたら
感じもかわりそうだけど。。
いずれにせよ亮の方がどうしても
不遇に見えてしまうのでどこか救いが
欲しい気はします。。
一緒に住むのがアレなら近くに部屋を借りてあげるとか~知り合いの部屋がタダで借りれるんだ、とかって前ならやってないかな。
この二人、デートの後先輩んちには行かないんですよね?描いてないだけかな?
雪なら対処できると思ってそうだけど…自分はもう卒業だからウルサイ蝿共とサヨナラできるけど、雪は後1年あるのにいらぬトラブルとストレスを残していかないでー!
あと、付き合い始めた時に「雪ちゃんの勉強の邪魔にならないようにする」って言ってたじゃないかー!
雪ラブなのはわかるけど…もうちょっと雪のこと大事にしてあげてとか思っちゃうよ(--;)
また雪が倒れるんじゃないかと心配で気が気じゃないよ。
こらこらこら先輩
いろいろ試してからに(^^;
今回のようにフルセンテンス見えない文は未だによく分からなくて‥。
そして一緒に住む‥!ドドーン
もれなくうあはんがついてきますが‥笑
「ユドリ」、辞書で出てこなかったので何だろうと思ってたんですよー。ゆとりから派生した語だったとは!ビックリです。
ちょこちょこ修正させてもらいます!
ありがとうございました^^
この「ユドリ」は、日本語の「ゆとり」から由来したslangです。「マニュアルに拘らず、場合によって」、「人情ありに」などの意味が。
2:「え?じゃ少しー‥(減らそうか)」
って感じで。
1の意味なら「マン」より「バッケ」で文が終わりますよ。
雪ちゃん、やはり忙しい中の遠距離デートに疲れてますね。
物理的距離も無視できないですから。
2人が一緒に住めば一件落着ですが!(どどーん)