ひょんなことから、ランチを共にすることになった雪、佐藤、静香。
この後皆で勉強しようという流れであったが、
結局図書館へ向かうのは雪と佐藤の二名だけという結果になった。
「勉強はまたの機会にね~ちょっと用事が‥」
「後で授業絶対来いよ!」
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静香はその佐藤の呼びかけに適当な相槌を打ちつつ、どこかへと去っていった。
自由奔放な彼女に振り回される、愚直な二人‥。
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雪は小さくなる静香の後ろ姿を見つめながら、怒りで細かく震えている。
私と仲良くなりたいって何よ。何企んでんのか知らないけど、ダマされないからね?
それに‥私が口出す問題じゃないかもだけど、目の前で佐藤先輩が利用されそうになんの、見てらんないよ‥。
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横に居る佐藤へ、チラと視線を流す。
彼は少し神妙な表情で、静香の去って行った方向をじっと見つめている。
最近良くしてくれるのもあるし、私と似てる面もあるし‥
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雪は佐藤に、どこか自分と「似た者同士」な空気を感じ取っていたのだった。
すると佐藤は雪の方に向き直り、開口一番質問した。
「二人は知り合いなの?」「えっ?」
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”知り合い”かと聞かれて、雪は曖昧に頷く。
「はい‥まぁ‥。
知り合いの知り合いっていうか‥」
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佐藤は質問を続ける。
「‥どうして彼女がいきなり電算会計の勉強を始めたか、
理由を知ってる?」
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「え?そりゃ就職‥しようとしてるからでしょう?」
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予想外の佐藤からの質問に、雪は目を丸くしてそう答えた。
佐藤は雪から視線を外すと、曖昧にこう返す。
「あぁ‥そうか。そうだよな」
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そして佐藤は図書館へと向かって足を踏み出した。
「?」
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雪は佐藤の質問とその答えの意図が読めずに、彼の後方で疑問符を浮かべる‥。
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そこから数時間後。
A大学の教室の一室で、河村静香は溜息を吐いていた。
「なーによ。あたしには授業絶対来いよっつっといて、
自分は遅刻かよ?」
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「ふざけんなっつの。ねぇ?」
「佐藤先輩のことですか?」
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静香が同調を促した相手、小西恵は静香のハットを被りながら、くりっとした瞳を彼女に向ける。
恵はニコニコと愛想の良い表情で、ハキハキと静香に向かって話し掛けた。
「あたしあの先輩好きです!なにげに優しいですし!それに頭も良くて!」
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しかし静香は恵のその言葉はそっちのけで、ある物に目が釘付けだった。
それはかつて自分が持っていた情熱の、燃えカスに似た遺物のようなもの。
「てかさぁ、」
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「めぐちゃんって絵が上手いんでしょうね」
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静香は笑顔の仮面を被りながら、恵のアジャスターケースを見つめてそう言った。
恵は依然ニコニコとしながら、無邪気に首を横に振る。
「いえいえ、ただ持ち歩いてる方が便利ってだけです」
「へぇ、そう」
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言葉の奥で燻る苛立ちを感じながら、静香は平然と頷いた。
そんな静香に向かって、恵はキラキラとした瞳を向ける。
「それにしても、静香さんのスウェット超可愛いですね!」
「は?当たり前でしょー?いくらすると思ってんの」
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恵は静香の全身を、羨望の眼差しで見つめている。
「静香さんはいっつも素敵な服着てるし~メイクもめっちゃお上手だし~、
背も高いし~大人っぽいし~!モデルさんみたい!静香さんみたいになりたいです~!」
「そう?アンタ見る目あるわね」
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自分を褒める恵の言葉を、まんざらでもなく聞いていた静香の心に、ポッと火が灯る。
それは先程心の奥に感じた苛立ちの導火線に引火し、静香の瞳がゆらりと揺れる。
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同じ目に合わせてやりたい。
何の苦労も無く美術を続けているこの子に、同じ道を辿らせてやる。
「めぐちゃんの顔だって可愛いわよぉ」
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「ねぇ、それじゃお姉さんと良いとこ遊び行っちゃおうか。
イケメンのお兄さん達が沢山居るステキな所があるのよ」
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「ニュービーは歓迎されるわよ?勿論めぐちゃんの身の安全はあたしが責任持つし。
TVに出てきそうな所なんだから」
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静香は目の前に居る無垢な彼女に、ゆるゆると誘惑の手を差し伸べる。
恵の瞳が、一層大きく開いた。
「わぁ‥本当ですか?」
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辿れ。
辿って来い。
お前もあたしと同じ、細く暗い道を。
「そうよ。ねぇ‥どう?」
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もう少しだ。
恵の瞳が、静香を映してキラキラと光るー‥。
「わぁ‥」
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「遠慮しときます!」
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恵はその場から一歩も動かずに、元気良く断りの選択を拾った。
笑顔を顔に貼り付けたまま、思わず静香は固まる。
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恵は今までと同じテンションを保持したまま、鞄から様々なチケットを取り出し、静香に見せた。
「あ、そうだ静香さん!そこじゃなくて展示会一緒にどうですか?
今回新しく企画展が沢山開かれてるんですよ!どれも今しか見れないんです!」
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「静香さんは、名画とか興味あります?」
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静香は白目になって、暫しその場で固まっていた。
キラキラキラキラと、恵からは善良なオーラが立ち昇る。
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ふと、以前夜道で恵と赤山雪が笑い合っていたことを思い出した。
あの時静香は細く暗い路地から、明るく眩しい大通りに居る二人の姿を、ジットリと睨んでいたー‥。
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「は!」
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静香は即座に感じた。
小西恵と赤山雪は同じ世界に居るのだと。
そして自分が辿って来た細く暗い道には、この子は足を踏み入れないであろうということに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<似た者同士>でした。
佐藤先輩と雪、そして恵と雪。
似た者同士、という点では前者二人ですが、同じ世界に居る、という点では後者二人ですね。
そしてその世界とは全く違うところにいる静香。
人物それぞれのポジションの対比が面白い回でした。
次回は<賢明な対処>です。
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この後皆で勉強しようという流れであったが、
結局図書館へ向かうのは雪と佐藤の二名だけという結果になった。
「勉強はまたの機会にね~ちょっと用事が‥」
「後で授業絶対来いよ!」
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静香はその佐藤の呼びかけに適当な相槌を打ちつつ、どこかへと去っていった。
自由奔放な彼女に振り回される、愚直な二人‥。
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雪は小さくなる静香の後ろ姿を見つめながら、怒りで細かく震えている。
私と仲良くなりたいって何よ。何企んでんのか知らないけど、ダマされないからね?
それに‥私が口出す問題じゃないかもだけど、目の前で佐藤先輩が利用されそうになんの、見てらんないよ‥。
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横に居る佐藤へ、チラと視線を流す。
彼は少し神妙な表情で、静香の去って行った方向をじっと見つめている。
最近良くしてくれるのもあるし、私と似てる面もあるし‥
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雪は佐藤に、どこか自分と「似た者同士」な空気を感じ取っていたのだった。
すると佐藤は雪の方に向き直り、開口一番質問した。
「二人は知り合いなの?」「えっ?」
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”知り合い”かと聞かれて、雪は曖昧に頷く。
「はい‥まぁ‥。
知り合いの知り合いっていうか‥」
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佐藤は質問を続ける。
「‥どうして彼女がいきなり電算会計の勉強を始めたか、
理由を知ってる?」
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「え?そりゃ就職‥しようとしてるからでしょう?」
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予想外の佐藤からの質問に、雪は目を丸くしてそう答えた。
佐藤は雪から視線を外すと、曖昧にこう返す。
「あぁ‥そうか。そうだよな」
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そして佐藤は図書館へと向かって足を踏み出した。
「?」
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雪は佐藤の質問とその答えの意図が読めずに、彼の後方で疑問符を浮かべる‥。
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そこから数時間後。
A大学の教室の一室で、河村静香は溜息を吐いていた。
「なーによ。あたしには授業絶対来いよっつっといて、
自分は遅刻かよ?」
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「ふざけんなっつの。ねぇ?」
「佐藤先輩のことですか?」
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静香が同調を促した相手、小西恵は静香のハットを被りながら、くりっとした瞳を彼女に向ける。
恵はニコニコと愛想の良い表情で、ハキハキと静香に向かって話し掛けた。
「あたしあの先輩好きです!なにげに優しいですし!それに頭も良くて!」
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しかし静香は恵のその言葉はそっちのけで、ある物に目が釘付けだった。
それはかつて自分が持っていた情熱の、燃えカスに似た遺物のようなもの。
「てかさぁ、」
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「めぐちゃんって絵が上手いんでしょうね」
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静香は笑顔の仮面を被りながら、恵のアジャスターケースを見つめてそう言った。
恵は依然ニコニコとしながら、無邪気に首を横に振る。
「いえいえ、ただ持ち歩いてる方が便利ってだけです」
「へぇ、そう」
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言葉の奥で燻る苛立ちを感じながら、静香は平然と頷いた。
そんな静香に向かって、恵はキラキラとした瞳を向ける。
「それにしても、静香さんのスウェット超可愛いですね!」
「は?当たり前でしょー?いくらすると思ってんの」
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恵は静香の全身を、羨望の眼差しで見つめている。
「静香さんはいっつも素敵な服着てるし~メイクもめっちゃお上手だし~、
背も高いし~大人っぽいし~!モデルさんみたい!静香さんみたいになりたいです~!」
「そう?アンタ見る目あるわね」
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自分を褒める恵の言葉を、まんざらでもなく聞いていた静香の心に、ポッと火が灯る。
それは先程心の奥に感じた苛立ちの導火線に引火し、静香の瞳がゆらりと揺れる。
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同じ目に合わせてやりたい。
何の苦労も無く美術を続けているこの子に、同じ道を辿らせてやる。
「めぐちゃんの顔だって可愛いわよぉ」
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「ねぇ、それじゃお姉さんと良いとこ遊び行っちゃおうか。
イケメンのお兄さん達が沢山居るステキな所があるのよ」
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TVに出てきそうな所なんだから」
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静香は目の前に居る無垢な彼女に、ゆるゆると誘惑の手を差し伸べる。
恵の瞳が、一層大きく開いた。
「わぁ‥本当ですか?」
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辿れ。
辿って来い。
お前もあたしと同じ、細く暗い道を。
「そうよ。ねぇ‥どう?」
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もう少しだ。
恵の瞳が、静香を映してキラキラと光るー‥。
「わぁ‥」
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「遠慮しときます!」
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恵はその場から一歩も動かずに、元気良く断りの選択を拾った。
笑顔を顔に貼り付けたまま、思わず静香は固まる。
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恵は今までと同じテンションを保持したまま、鞄から様々なチケットを取り出し、静香に見せた。
「あ、そうだ静香さん!そこじゃなくて展示会一緒にどうですか?
今回新しく企画展が沢山開かれてるんですよ!どれも今しか見れないんです!」
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「静香さんは、名画とか興味あります?」
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静香は白目になって、暫しその場で固まっていた。
キラキラキラキラと、恵からは善良なオーラが立ち昇る。
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ふと、以前夜道で恵と赤山雪が笑い合っていたことを思い出した。
あの時静香は細く暗い路地から、明るく眩しい大通りに居る二人の姿を、ジットリと睨んでいたー‥。
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「は!」
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静香は即座に感じた。
小西恵と赤山雪は同じ世界に居るのだと。
そして自分が辿って来た細く暗い道には、この子は足を踏み入れないであろうということに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<似た者同士>でした。
佐藤先輩と雪、そして恵と雪。
似た者同士、という点では前者二人ですが、同じ世界に居る、という点では後者二人ですね。
そしてその世界とは全く違うところにいる静香。
人物それぞれのポジションの対比が面白い回でした。
次回は<賢明な対処>です。
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更新応援してますU+1F4AA
静香の毒牙にかからず安心‥な回でしたね^^
そのあと、そのなんたら先輩(ザマw)が薔薇の花を一輪持って登場(キモw)するコッチ側で、天下の青田淳を押し倒す雪ちゃん。
あー、懐かしや懐かしや。絵の感じも、2人の距離感も、先輩の若々しさも、嗚呼何もかもが懐かしい昨今。。
(ネタズレ失礼)
漫画の中では半年くらいしか経ってないなんて‥!
あの頃の先輩を拝みにいってきましたよ
見比べるとより一層最近の先輩が残念すぎます( ノД`)
本家最新話のいちゃこらシーンすら萌えません…
ざざーん。
昔(チトラ内数ヶ月前)の方がよっぽどキュンキュンしますー!
恵そーねほんとーにはっきり言うべきことはいう子
多分クラブとか興味もないし楽しめないでしょうね
静香そんなに絵が気になるならもっと逃げずに向き合っていけばよいのに
恵と静香は‥どうやっても合いそうにないですよねー。
この先、案外恵が静香の間違ってる所を正論でズバッと指摘するのでは‥という気がするような‥。