昨年、あと数か月でブログが終了するころ、初めて朗読劇なるものを観た。
私としては、それは実に新鮮なものであった。
シンプル過ぎる演出でありながら、その空間から伝わるものは、むき出しの感情であり、愛情であり、
そして、感動であった。
私自身、イベントがあればイベントに行き、観光で日本だけではあるが各地を巡り、
桜前線なるもので、桜の開花を追いかけたりとして来たが、
演劇鑑賞は全くの初めて。
しかも朗読劇。
観る迄は、動きなど殆ど無いのだろうと思っていたが、それは見事に裏切られた。
推定恋愛というテーマでありながら、最後に感じたのは家族愛。
次回も必ず観よう!と心に誓いながらも、昨年12月同じ朗読劇の家族草子を観た。
これも面白かった。
小さな会場であったが、それ故に伝わる演者の息吹や感情。
そして、2回目の推定恋愛+を観るために、私は天現寺へ向かった。
時間に余裕を持って出発したつもりであったが、首都高速で事故があり、まさかの渋滞。
用賀料金所迄のろのろ運転なら、下を降りた方が早いと思い、降りるが・・・こっちもノロノロ。w
到着したのは12時近く。
前回止めた駐車場は満車。
少し離れた駐車場を見つけ、そこに止める。
約1km離れているのか?
この日は暑く、汗を拭きながら天現寺スクエアに到着。
手続きをし、会場に入る。
演劇鑑賞に来たのに、一眼レフカメラをぶら下げて、違和感アリアリの私だが、
昨年コンデジで撮影を失敗したので、それを防止する意味でも、一眼を持参した。
一通り撮影をし開演を待つ。
そして劇は始まった。
第一幕 かき氷
姉妹の会話から始まる。
主人公は「ちなつ」という。
海水浴に彼氏と一緒に行き、そこで様々な感情が沸き起こる。
かき氷を食べる彼氏の姿を見て、そんなちなつの感情をかき氷で表している。
男目線であれば、彼女の水着姿や他の女性の水着姿に目が行くが、
この場合は、女性目線。
男女の気持ちは、混ざりあうのか?
苺ミルクのかき氷を混ぜれば、ピンク色になる。
そんな心象風景を表している。
「キスしよう」
時期は夏なのに、清涼感を感じる女性の気持ち。
青春が2度あれば・・・
観ている方はそんな事を思う。
自分が齢を重ねたためでもあるが、女性はそんな事を考えるのか?
そんな気持ちにしてくれたものであった。
第二幕 ペット
男女が一緒に住んでいて、夫婦でなければ同棲。
そして、女性は働いていて、男が無職となればヒモですね。
会社の女子寮に、男が転げ込んで来た。というところでしょうか?
なんで、こんな男に惚れたのか?
古今東西どれだけの女性が、そんな事を思ったのか。
そんなダメな男は、ペットと思えばいい。
思われる方は屈辱であろうが、屈辱も感じない程グータラであろう。
私はダメな男ではない!と思いつつも、助けてくれる彼女はいるか?
自分の回りに、そんな甲斐性な女性はいるか?
そうなると、今観ている劇は男として一つの理想。
女はため息をつくけど、一度はしてみたいかな?
ペット生活。
第三幕 虫メガネ
どうにも疑心暗鬼にとらわれる彼女。
彼氏が留守の間に、彼の部屋を物色し、他の女の痕跡を探し出そうとする。
おいおい、いいのかよ?
とんでもない女だな!
警察の家宅捜査のごとく、部屋を調べ尽す。
無い、何も出てこない。
徒労というか、無駄足であった。
自分が彼氏であれば、俺を信じろと言いたくなる。
勿論、その場にいればケンカどころでは済まないであろう。
他の女の髪の毛も歯ブラシも出てこない。
それ見た事か!彼氏を信じろよ!
心のレンズで、男の気持ちを見てみろよ!
あ~、これが自分の彼女であったら・・・最低だな。
でも、部屋にあった知らないデジカメ。
やはり、男の負けであったか?
第四幕 ホタルの熱
電車の中に親子が一組。
母親と6才の息子。
はたから見ると普通の親子であるが、母親の心の中には心中という選択肢があった。
破滅に向かう母親であったが、6才の息子「シュン」が、発熱して途中下車をする。
心中するつもりであったが、病院に行き治療をする。
病院を後にし、行きついたのは民宿「ななみそう」。
そこを切り盛りする女将と、アンドウ親子の物語が始まる。
アンドウは、以前は夫もいた。
昔、会社勤めから独立をし、電気関連の仕事をしていた。
やがて、大手の得意先を失い、経営が悪化。
家計が苦しくなると、夫が蒸発。
自分は、バイトやパートで生活費を稼ぐが、病弱な息子のため途中退勤を何度も強いられる。
やがて、解雇をされる。
全てに絶望した彼女は、息子と死出の旅に出た。
民宿の女将には孫がいなかった。
娘がいたが、夫を刺してしまい服役中。
出所しても、孫は無理だろう。
そんな女将にとって、6才のシュンは未だ見ぬ孫の郷愁を呼び起こす。
民宿で食事をし、風呂に入る。
女将のおかげで、何かこのままでいいのか?そんな気持ちが起こる。
息子と2人切りになると、息子が抱き着いてきた!
ママ!ママ!ママ!
息子の心臓の鼓動と温もりが母に伝わる。
そして一気にこみ上げる感情、大声で泣く!
抑えられない感情!にひたすら嗚咽する。
すると、民宿の女将がその場に現れる!
死を選ぶ選択肢。
私自身、仕事上2人の先輩の自殺を経験した。
2人とも、金銭に関わることであった。
「何故に死を選んだのか?」
払い切れない借金、隠し切れない着服金。
演じられた内容も、夫が失踪してからの生活資金などで苦しんだ。
最初は心が風邪をひいた程度のものだったのだろうが、
心の風邪はやがて重症化する。
他人や身内の冷たい視線も要因かもしれない。
カネは絶望を与えるのか?
だが、偶然出会った癒し。
民宿の女将の存在は、死を選んだものに躊躇いを与えた。
女将自身も、順調な道を歩んできたわけではない。
お互い、何かを失い絶望を感じた物同士の、服のボタンと穴が合致した。
「また明日」
死を覚悟した者に投げかけられた女将の一言。
病弱な息子が、母に対する精一杯の気遣い。
ごめんという言葉。
死にたくない!そんな気持ちが溢れた時、泣くしかなかった。
ここがどこであろうが、弱い自分を全て曝け出すには、泣くしかなかった。
それを止める理由もない。
女将も「泣くがいい」を言って舞台は終了する。
この先が本当にハッピーエンドなのか?それとも破滅なのか?
だがその答えは「ホタル」であろう。
ホタルの光は熱くはない。
眩しくもない。
だが、ぼんやりと温もりを感じる明かりなのは間違いない。
目を瞑れば、朧気乍ら見えるはずだ。
温もりという希望が。
この先の道も厳しいが、親子も、女将もきっと微笑んでいる。
それを答えとして、私は推定恋愛+という心の本を閉じた。
全てを観て。
BGMはピアノソロの生演奏。
演じる役者さんは、基本的に白の衣装。
派手な照明も、効果音も無い。
大袈裟な舞台装置も無い。
ただ、演じられる熱意から受け手が、効果音でも舞台装置でも思い浮かべればいい。
己の想像力を掻き立てるには、最高の舞台だと思う。
100分という演目時間であるが、あっという間であった。
前編が3話構成による男女の恋愛観。
後編が1話の家族観。
申し訳ないが、「ホタルの熱」の圧倒的インパクトに男女の恋愛観が霞んでしまった。
演じる方も、感情が入り緊迫感が伝わってくる。
昨年もそうであったが、推定恋愛という主題であるが、
観終えると、恋愛観ではなく家族愛を強く感じる。
推定恋愛ではなく、絶対家族。
それを感じる。
今回私は観劇中、メモをした。
それぞれの劇の中で、ポイントという言葉をその場でメモをし、後の感想文に利用しよう。
だが、「ホタルの熱」はその必要も無かったか?
今も脳裏にはあの情景が思い浮かぶ。
良かった!
朗読劇3回目であるが、3回とも出演された役者さんがいました。
その中でも子役というか、少年少女を演じたらピカイチ!と言える、
横山葵子さんに写真をお願いする。
どうですか?少年役でしたが、そう思うでしょ?
来年も行きたいですね。
それと、機会があれば観劇の機会を増やしたいですね。
映画を観るのもいいけど、舞台もいい!
本当に、良い舞台だった。