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首相の汚染水発言 「ブロック」の意味わからぬ

2013-09-23 17:50:34 | 日記
          しんぶん赤旗      2013年9月23日(月)
主張

首相の汚染水発言

「ブロック」の意味がわからぬ

 安倍晋三首相が東京電力福島第1原発を視察し、放射性物質で汚染された水は港湾内の0・3平方キロメートルに「ブロックされている」と発言しました(19日)。9月はじめの国際オリンピック委員会(IOC)でのプレゼンテーションでの、「汚染水はブロックされており、コントロールされている」との発言を確認したものですが、一体なにを根拠に「ブロックされている」というのか。汚染水が港湾外に流れ出し、外洋を汚染していることは誰の目にも明白です。「ブロックされている」と繰り返す首相の発言は、政府の汚染水対策そのものへの真剣さを疑わせるものです。

汚染水の出入りは自由

 安倍首相が「汚染水がブロックされている」という0・3平方キロメートルの水域とは、第1原発に資材などを運び込むために設けられた港湾の内側です。汚染水が漏れ出すため遮水壁を設置するなどの対策をおこなっていますが、完全には止まっていません。海中にも目の細かい幕(シルトフェンス)を張っていますが汚染水の出入りを防ぐものではなく、港湾の出口そのものは開いているので、汚染水の出入りは自由です。港湾内の海水は潮の満ち干で入れ替わります。決して「ブロック」されているわけではありません。

 しかも汚染水は、港湾内に漏れ出しているだけではありません。放射性物質で汚染された水は、原発の建屋内にもトンネルなどにも大量にたまっており、そこへ毎日大量の地下水が流れ込んで増え続けます。汚染された地下水は港湾外からも海に漏れ出します。建屋内の汚染水をくみ出し、貯蔵しているタンクからも汚染水漏れが相次いで発覚しています。タンクから漏れた汚染水の一部は、排水溝を通じて港湾から離れた放水口から海に流れ出ていたことも明らかになっています。ここでも「ブロックされている」というのは真っ赤なうそです。

 なぜ安倍首相は「ブロックされている」といいはるのか。事実を知ってごまかしているとすればそれこそ問題ですが、万一首相が海洋に流れ出てしまえば薄まるから問題がないと考えているなら、それも大問題です。原発事故からすでに2年半、完全に原子炉を廃止するまでこれから何年かかるかもわからない状態で、長期にわたって海洋に流出する汚染水は文字通り世界の海を汚します。

 しかも水中での放射性物質の拡散は一様ではなく、地形などによって海の「ホットスポット」と呼ばれる濃度の高い場所をつくったり、海底の泥に蓄積したりします。小さな魚を大きな魚が食べるなどの食物連鎖を経て、人間が摂取することにもなりかねません。人類にとって生命の源と呼ばれる海洋の汚染は、重大な犯罪行為というしかありません。

放射能で海を汚さない

 いま安倍政権に求められるのは、「ブロックされている」とか「コントロールされている」とごまかすのではなく、「放射能で海を汚さない」ことを基本原則に、汚染水対策にあらゆる人的・物的資源を動員することです。対策を東電任せにせず、東電を「破たん処理」し、「コスト優先・安全なおざり」を抜本的に正すことも必要です。

 安倍首相のIOCでの発言で汚染水対策は国際公約になりました。首相は責任を果たすべきです。

堺市長・市議補選 市田書記長の訴え

2013-09-23 16:54:45 | 日記
            しんぶん赤旗2013年9月23日(月)
堺市長・市議補選

市田書記局長の訴え

 日本共産党の市田忠義書記局長が22日におこなった堺市長選・市議補選の応援演説(要旨)を紹介します。


(写真)訴える市田忠義書記局長=22日、堺市南区
 堺のことは堺の人間が決める。自由と自治の伝統が脈打つ堺市を守るのか、つぶすのか。いよいよこれからの奮闘が勝敗を決めます。橋下・「維新の会」の堺つぶしを打ち破り、堺市と堺市民の暮らしを守り抜こう。

堺をつぶすか、守り発展させるか

 最大の争点は、堺市をつぶすのか、守って発展させるのかです。維新が出しているビラに「だまされないで下さい! 大阪都になっても、堺を無くしません」とあります。よく言えたものです。維新は最初、「堺市を二つか三つに分ける」といっていました。「大阪都」をつくるための法律には、「関係市町村を廃止」すると書いてあります。「廃止」と書いているのに「なくならない」というのは詐欺です。いくら市民の批判の声におされて苦しくなったといっても、うそをついて市民をだますなど絶対にやってはならないことです。

 維新は、「竹山市長は4年間何もやらなかった」といっていますが、選挙にでるならよく調べてからモノをいうべきです。▽子ども医療費助成を中学卒業まで拡大▽国民健康保険料の4年連続引き下げ▽65歳以上はどこまで乗っても100円の「おでかけ応援バス」制度の改善―など実績抜群です。

 だから、堺の維新も昨年まで竹山市長の予算にすべて賛成してきたのに、選挙になったら手のひらを返して「何もやっていない」といい始めるのは、あまりにも無責任です。

 「大阪都」になれば、市の税収の3分の1にあたる460億円が「都」に吸い上げられます。堺市の医療や福祉、住民サービスが軒並み削られ、カジノやゼネコン向けのムダな開発につぎ込まれます。

 維新の松井一郎知事は、「仁徳天皇陵にイルミネーション」をといっていますが、いったい何を考えているのか。世界三大墳墓の一つと言われる「仁徳陵」を辱めるものです。ここには堺市の歴史と伝統、文化、市民の願いを頭からないがしろにして恥じない「大阪都」構想の本質が、わかりやすく表れているのではないでしょうか。「大阪都」は、百害あって一利なしです。

政治姿勢の違いがクッキリ

 竹山市長のモットーは「市民目線」「現場主義」です。市民とひざ詰めで対話を重ね、出された声を市政運営に生かすという政治姿勢を貫いています。

 18号台風による大雨で、大和川周辺に「避難勧告」がだされました(16日)。竹山市長はただちに選挙活動を中止し、現場に出向き、陣頭指揮をとりました。

 対岸の大阪市はどうか。市政初の避難勧告が朝8時30分に発令されましたが、そのとき橋下徹大阪市長は自宅でツイッターをやっていました。9時32分に「久しぶりのツイッターだな~」とつぶやいたかと思うと、10時までの28分間に14回つぶやき、それが夕方まで延々と続きました。中身は、台風被害ではなく、竹山市長や共産党への悪口ばかりです。

 どちらの候補者が市民のくらしや安全を守れるのかはっきりしたのではないでしょうか。

 維新は一時、「第三極」ともてはやされましたが、「構造改革」の推進、憲法9条改悪、「慰安婦」容認発言など安倍政権以上に「右翼」的立場の政党だということがはっきりして、先の参院選では大きく票を減らしています。いまこそ、堺市民がきっぱりと審判を下すときです。

 維新は全国から議員、秘書、落選候補を堺に集中しています。彼らに何の大義もありません。あるのは自分たちの生き残りだけです。彼らの反動的気概に負けない頑張りが必要です。日本共産党は「堺を守れ」と願う広範な市民とともに竹山市長の再選に党の総力を挙げてがんばります。

市民の共同恐れる維新

 論戦に追い詰められた橋下氏は「共産党がついているからダメ」という攻撃を盛んに行っています。党派を超えた市民共同を何よりも恐れている証拠です。反共はひとり共産党への攻撃でなく、「堺市を守れ」という広範な市民に向けられた攻撃です。

 堺市をつぶす「都」構想が押し付けられようとしているときに、政治的立場の違いを超えて堺市を守るために共同して立ち上がるのは当たり前です。戦前の「アカ」「非国民」「国賊」攻撃と同じ発想の人たちに自由と自治のまち・堺をまかせるわけにはいきません。

 立場は違っても、一致する点で誠心誠意がんばるのが日本共産党です。国政問題で大きく立場は違っても、市民の圧倒的多数がのぞむ「堺をつぶすな」という点で一致するなら、どの党、団体、個人とも力を合わせるのが日本共産党の立場です。「市民が主人公」の立場でブレずに頑張る日本共産党が共同の輪に加わっているから、「堺はひとつ」の勢力の結束は固いのです。この市民共同にくさびを打ち込むのが「アカ」攻撃です。それこそ維新の人たちの大義のなさを自ら証明しているのではないでしょうか。

市議補選での共産党勝利で維新に痛打を

 市長選と同日で行われる市議補選では、日本共産党への1票は堺のまちと暮らし・福祉を守る確かな力であることを強調したい。

 子ども医療費無料化の拡充や国保料の引き下げでも、市民と力を合わせて奮闘してきたのが日本共産党です。

 大阪府や大阪市で維新の医療・福祉カットを、市民の立場でもっとも厳しく追及しているのが日本共産党です。この党が伸びることが、維新に対する厳しい「痛打」となることは間違いありません。

 「市民が主人公」の立場で、絶対にブレないで筋を通す日本共産党が伸びてこそ、市民本位、国民本位に政治を動かすことができます。いま堺市議会では共産党8、自民党7、維新が10議席です。三つの市議補選ですべて勝利すれば、11議席で維新を上回ります。この党が伸びれば、堺のまちと暮らしを守り、「大阪都」構想を阻止する決定打になります。

『ウソったれ首相の問責決議』を世論で高めよう!

2013-09-23 13:57:01 | 日記
      ウィンザー通信より転載
ウィンザー通信
 アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&老三毛猫と暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。
『ウソったれ首相の問責決議』を世論で高めよう!
2013年09月22日 | 日本とわたし
IWJ(Independent Web Journal)の記事を転載させていただきます。
あらためて、安倍首相がついたウソの実態を見聞して、これはもう、放っといてもよいレベルではないやろと思いました。
すべてはつながってるから、それも強固に、複雑に、絡み合うてつながってるから、それを解くのは大変ですけど、
まずはこの、どうしようもない大うそつきを、首相の座からどけませんか?
これは、いくらなんでも恥ずかしいと思いませんか?
日本人は、こんな大ウソをつく首相を、辞めさせることもできん腰抜けか?などと思われるのは癪に障りませんか?
辞めてもらいましょう、こんな人。
一杯飲み屋やらお家の部屋やらで、まじでアホやであの男、とか言うてるだけではあきません。
政治家はウソをつくもんやという人がいます。
わたしもええ年して、それぐらいわかってます。
けども、いくら政治家でも、いくら首相でも、ついてええウソとあかんウソがあります。
あの男は、あかんウソを何個もつきました。
それは、許したらあかんと思います。
五輪返上と首相解任。
がんばれ日本の市井のひとたち!

IOC総会で、安倍総理が、全世界に向けて語った4つの嘘 
~嘘のアスファルトで、ぬかるみのような真実が舗装される~
(岩上安身のニュースのトリセツ『IWJウィークリー第16号』より)


日本時間8日の明け方、2020年夏季オリンピックの開催地が、東京に決定しました。
東京での開催は、1964年以来2度目。
日本でのオリンピック開催は、1972年の札幌、1998年の長野の冬季五輪と合わせ、4度目の開催となります。

すべての五輪を知る世代の一人として、そして無類のスポーツ好きの一人として、手放しで、二度目の東京五輪開催を喜びたいと思っています。
本来であれば。

ですが、本当に残念なことですが、その招致のクライマックスで、喜びや期待に冷水を浴びせられ、今、ひどく憂鬱な気持ちにさせられています。

IOC(国際オリンピック委員会)総会が行われたブエノスアイレスには、東京都の猪瀬直樹知事に加え、
サンクトペテルブルクでのG20を終えたばかりの、安倍総理も駆けつけ、プレゼンテーションを行いました。

そこで、安倍総理の口から発せられたのは、次のような驚くべき発言でした。

“The situation is under control .”(状況はコントロールされている)

「状況」とは、福島第一原発の「状況」を指します。
安倍総理は、国際社会に向けて、福島第一原発をめぐる状況は「コントロール」されている、と宣言したのです。
さらに、ノルウェーのIOC委員から、福島第一原発の状況について聞かれた安倍総理は、次のように述べました。

「まず、結論から申し上げますと、まったく問題ありません。
新聞のヘッドラインではなくて、事実を見ていただきたいと思います。
汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0.3平方キロメートルの範囲内で、完全にブロックされています。

福島の近海で、私たちは、モニタリングを行っています。
その結果、数値は、最大でも、WHOの飲料水質ガイドラインの、500分の1であります。
これが事実です。

そして、わが国の食品や水の安全基準は、世界でも最も厳しい基準であります。
食品や水からの被曝量は、日本どの地域においても、100分の1であります。
つまり、健康問題については、今までも、現在も、そして将来も、まったく問題ない、ということをお約束いたします。

さらに、完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを、私が責任をもって決定し、すでに着手をしております。
実行していく、それをお約束いたします」

■動画URL:http://bit.ly/15a2YWp

私は真夜中に、地球の裏側のブエノスアイレスで、自国の総理が、国際社会に向けて、真っ赤な嘘を公言していることを知り、愕然としました。


◆汚染水は港湾内にブロックされていない◆

安倍総理は、「事実」を見ていただきたい、と大見得を切りながら、
「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0.3平方キロメートルの範囲内で、完全にブロックされている」などと述べました。
しかし、これは「事実」ではありません。

8月19日、福島第一原発の貯水タンクから、毎日300トンもの、高濃度汚染水が漏洩したことが発覚しました。
この高濃度汚染水は、1リットルあたり8000万ベクレルにも達し、合計で、これまで24兆ベクレルが、漏洩したことになります。
原子力規制委員会は、この事故を、国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル3(重大な異常事象)」に該当する、と発表しました。

9月5日、この汚染水が、地下水に到達していたことが明らかとなりました。
汚染水の漏洩が発覚した、貯水タンクの周辺に掘った観測用の井戸から、
ストロンチウムが、1リットルあたり650ベクレルという、高い値で検出されたのです。

さらに東電は、2011年4月4日から10日にかけて、港湾内に、1万393トンの放射能汚染水を、意図的に放出しました。
含まれる放射能の量は、ヨウ素131やセシウム137など、計1500億ベクレルにもおよびます。

そして東電は、9月1日、港湾内の海水の44%が、港湾外の海水と交換されていることを明らかにしました。
これは、一日あたりの数字です。
すなわち、港湾内の汚染水は、一日で、半分の量が、外洋の海水と交換されているのであり、
汚染水が、「港湾内で完全にブロックされている」という安倍総理のスピーチは、「完全な虚構」に他なりません。
東電自ら認めている通り、そして、常識で考えれば誰でも理解できる通り、港湾内の汚染水は、海洋へと拡がっているのです。


◆日本の食品安全基準は、世界で一番厳しくはない◆

安倍総理がついた嘘の第2点は、「食品の安全基準は、世界で一番厳しい」という、誰でも見破れる嘘です。

政府は、2012年4月1日、食品中の放射性物質に関して、新たな基準値を設定しました。
食品からの被曝線量の上限を、年間1ミリシーベルとし、
野菜や米などの一般食品は、1キロあたり100ベクレル、
牛乳や乳児用の食品は、1キロあたり50ベクレル、
飲料水は、1キロあたり10ベクレルとしました。

しかし、チェルノブイリ原発事故を経験したウクライナでは、
パンは、1キロあたり20ベクレル、
野菜は1キロあたり40ベクレル、
飲料水は1キロあたり2ベクレルと、
日本よりも厳しい基準値を導入しています。

日本の食品の安全基準が、世界で一番厳しいなどというのは、とんでもないデタラメです。

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※厚生労働省HP 「食品中の放射性物質の新たな基準値」【URL】http://bit.ly/GYlx4P
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◆食品や水からの被曝量は、基準値の100分の1ではない◆

安倍総理がついた嘘の第3点は、「食品や水からの被曝量は、日本のどの地域においても、100分の1である」という嘘です。

2月28日、東電は、港湾内で採取したアイナメから、1キロあたり51万ベクレルの放射性セシウムを検出した、と明らかにしました。
これは、国の食品基準値の5100倍と、極めて高い数字です。
安倍総理は「日本のどこでも、この基準の100分の1」などと大ボラを吹きましたが、
100分の1どころか、5100倍ものサンプルが、現に発見されているのです。


(福島第一原発港湾の図)

51万ベクレルを検出したアイナメは、上図の、Fの位置で捕獲されています。
まさに、港湾内と港湾外の境界となる位置です。
汚染水が、港湾外に広がっていく境界線上で検出された、象徴的なサンプルだといえるでしょう。


◆健康被害はすでに出ている◆

安倍総理がついた嘘の第4点は、「健康問題については、今までも、現在も、そして将来も、まったく問題ない」と述べたことです。
これほど明々白々な嘘はありません。

福島第一原発事故の影響を調べている、福島県の県民健康管理調査検討委員会は、8月20日、
甲状腺がんと診断が確定された子供の人数が、18人にのぼると発表しました。
安倍総理は、福島で広がっている健康被害と被曝とは関係がないと、「今までも、現在も、将来も」言い張るつもりなのでしょうか。

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※甲状腺がん確定18人に 福島の健康調査(8月20日、msn産経)
【URL】http://on-msn.com/1d1Dkrc)
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このような発言は、チェルノブイリ事故が起こったソ連でも、ソ連崩壊以後のウクライナやベラルーシでも、
いかなる指導者も口にしなかったことです。
プロパガンダばかりで、少しも「プラウダ(真実)」を見出だせなかった、あのソ連以下の国なのだ、と思い知らされて、恥入るばかりです。

安倍総理が、このような発言を、国際社会に向けて公然としたこと、そしてIOCが、東京をオリンピックの開催地として選んだことは、
結果として、福島第一原発事故の影響を過小評価し、健康被害を隠蔽するための口実として、利用されることになりかねません。

安倍総理は、「状況はコントロールされている」と、世界に向けて、高らかに宣言しました。
しかし、福島第一原発の状況は、「コントロール」とはほど遠い状況にあります。


◆行き場のない汚染水とタンク◆

福島第一原発1号機から4号機の、原子炉建屋とタービン建屋の地下には、毎日400トンの地下水が流れこんでいる、と推定されています。
この地下水もまた、当然汚染しているため、地上のタンクで保管する必要があります。
しかし、地上のタンクが漏洩していたとなると、この地下水は、行き場をなくしてしまいます。
早急に、新しいタンクを用意しなくてはなりません。

しかし、汚染水を入れ替えるための、溶接タンクを増設するスペースが、どこにあるのでしょうか?
森を切り開いてタンクを林立させた敷地内は、すでにいっぱいです。
増設のためには、周辺の土地を買い取るか、接収するしかなさそうですが、
立地の自治体や周辺の住民、地権者と、そんな交渉に入ったなどという話は、まったく聞こえてきません。

仮に、新たに、溶接型タンクを設置するスペースが確保できたとしましょう。
そして、既存のボルト締めタンク300基以上から、溶接型のタンクに、無事、汚染水を移すことができたとしましょう。

その後、空となったボルト締め型タンクは、どうするのでしょうか。
これらは、放射性廃棄物となります。
スクラップにして、そこら辺に投棄して、許される代物ではありません。
300基ものタンクの、適正な保管場所を確保しなくてはなりませんが、そんなメドは立っていませんし、
そのための場所探しに、東電が必死になっている、という気配もありません。

日本政府は3日、汚染水対策として、470億円の国費を投入する、という基本方針を発表しました。
地下水の、建屋への侵入を防ぐ、凍土遮水壁の建設に320億円、浄化設備の改良に150億円をあてる、としています。
急を要するはずのタンクの増設費用は、計上されていません。
国も、汚染地下水の汲み上げと保管に、本気になっているとはいえません。


◆汚染水の放出には半世紀以上かかる◆

不可能なことは、まだあります。

政府は、150億円をあてて、多核種除去装置(ALPS)を改良するといいます。
しかし、多核種除去装置を改良したとしても、トリチウムという放射性物質を、除去できないことに変わりはありません。

東電の資料には、福島第一原発の汚染水に含まれるトリチウムの量は、1リットルあたり500万ベクレルである、と記載されています。
一方、同じ資料には、保安規定で示されているトリチウムの年間放出量は、22兆ベクレルとなっています。
つまり、多核種除去装置を用いた場合でも、放出することができる汚染水は、年間440万リットル(22兆÷500万=440万)ということになります。

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※「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」
(東京電力HP 【URL】http://bit.ly/ZNDI6X)
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440万リットルを換算すると、4400トンになります。
福島第一原発の構内には、24万5000トンの汚染水が、滞留していると言われているので、
すべての汚染水を、保安規定を守って放出するとなると、55年以上かかることになります(24万5000÷4400=55.68…)。

保安規定を守ると、汚染水の放出には、なんと半世紀以上もかかるのです。
この間の汚染水の取り扱いについて、東電は、なんら具体策を提示できていません。

以上の経緯を踏まえると、政府と東電は、解決策として、一つのことを考えているとしか思えません。
それは、汚染水の海洋放出です。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は、9月2日、外国特派員協会で記者会見し、
「必要があれば、放射性濃度が基準値以下のものは、海に出すことも検討しなければならないかもしれない」と述べました。
保安規定を守るのならば、半世紀以上かかるのですが、それほど大量の汚染水を、長い年月かけて放出し続けてゆく、と宣言したに等しい発言です。

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※2013/09/02 外国特派員協会 田中俊一 原子力規制委員会委員長 記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/99510
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◆世界から向けられる厳しい視線◆

このような、政府と東電の対応に対し、世界は厳しい視線を向けています。

9月5日、ニューヨーク・タイムズは、1面に、福島第一原発の写真つき記事を掲載し、日本政府と東電の、汚染水対策を厳しく批判しました。
2020年、五輪開催を決定する、IOC総会当日の朝刊です。
記事は、日本政府の対策は、危険かつ、技術的に複雑で、費用がかかると指摘し、
汚染水への対応について、日本政府と東京電力の危機管理能力に、疑問を投げかけています。

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※Errors Cast Doubt on Japan’s Cleanup of Nuclear Accident Site (ニューヨーク・タイムズ 9月5日【URL】http://nyti.ms/161IbEe)
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ニューヨーク・タイムズの批判は、ほんの一例に過ぎません。
この夏の、世界中のメディアのトップニュースは、シリアと福島第一原発の汚染水問題でした。

科学雑誌「Nature」は、9月3日に、福島第一原発に関する論説を掲載しています。

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※Nucler error―Japan should bring in international help to study and mitigate the Fukushima crisis (【URL】http://bit.ly/1fxjYHi)
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記事は、「福島第一原発の事故は、東京電力の手には負えない」としたうえで、
「政府が先頭に立って対応するということを、決めた時期が遅すぎる」と日本政府を批判。
さらに、報道の遅れや、監視体制の甘さをあげ、海外の専門家に助けを求めるべきだ、と述べています。

しかし、そんな批判を、日本政府は、正面から真剣に受け止めたとは思えません。

日本政府が、とってつけたように国費投入を決めた真の理由は、東京へのオリンピック招致決定が、目前に迫っていたこと以外に考えられません。

安倍総理は9月4日、ブエノスアイレスで開かれる国際オリンピック総会で、プレゼンテーションを行う考えを示し、
「政府が前面に出て、完全に解決していく。
抜本的な措置を、断固たる決意で講じており、7年後の20年には、全く問題ないとよく説明したい」と語りました。

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※汚染水漏れ「五輪時には解決」=安倍首相(時事通信、9月4日【URL】http://bit.ly/15rDUXu)
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安倍総理がここで述べた「解決」とは、いったい何を指すのか不明です。
福島第一原発事故の収束作業は、まだ始まったばかりです。

今年の11月から、4号機の原子炉建屋から、1533本もの使用済み燃料を取り出し、隣の共用プール建屋へ移動する作業が、ようやく始まるところです。
使用済み燃料の取り出しは、4号機の後、1号機、2号機、3号機と続きますが、東電はその工程表を、いまだに示せていません。

安倍総理が述べた「解決」が、汚染水漏洩の問題だけを指すのだとしても、それは、前述の通り、まったく見通しの立っていない話です。
東電も政府も、日々増え続ける汚染水を貯める、溶接型タンクの増設計画も示せず、放射性廃棄物となるボルト締め型タンクの、保管場所のあてもありません。

それに加えて、使用済み核燃料の取り出し作業が、万々が一でも失敗し、燃料棒が何かにぶつかったり、落としたりして破損した場合、
大量の放射性物質が、飛散する可能性もありえます。
そうなると、東京での五輪の開催どころではない。
東京は、人の住めない街になってしまうかもしれないのです。

※五輪招致と汚染水問題の背景には、緊迫の度をますシリア情勢が、深く関わっています。
この続きは、
メルマガ・IWJ特報第98号「「8月21日の謎」に肉薄する。五輪、汚染水、シリア、そしてTPP~嘘のアスファルトでぬかるみのような真実が舗装される」で詳細に論じています。
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