東京新聞より転載
歯止めなき徹底管理 特定秘密保護法(上)対象・罰則
2014年12月7日 朝刊
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国民の「知る権利」を侵す恐れのある特定秘密保護法は、成立から一年を経て十日に施行される。政府が特定秘密を意のままに指定し、都合の悪い情報を国民から遠ざけたり、市民が厳罰に問われる懸念は消えない。法律をあらためて検証する。
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特定秘密保護法の特徴は、政府が必要と認めた情報を幅広く特定秘密に指定することができ、公務員らが漏らした場合の罰則を厳しくして、情報管理を徹底する両輪の仕組みだ。
罰則は、今より大幅に強化される。現行の国家公務員法は、職務で知り得た情報を漏らした場合は最高懲役一年。自衛隊法で定めた「防衛秘密」に限って最高懲役五年で、例外的に米軍関係の情報は刑事特別法などで最高懲役十年が設けられている。
対する秘密保護法は、罰則対象の情報を「防衛」だけでなく「外交」「スパイの防止」「テロの防止」の計四分野に拡大。漏らした場合は最高懲役十年だ。
どの情報を特定秘密に指定するかの基準は「国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある」などあいまいで、政府側の裁量に委ねられる。政府は法成立後、法律を動かすルールである運用基準を策定。四分野の指定対象を計五十五項目に細分化し、指定範囲を絞ったと説明するが「安全保障に関し重要な情報」など幅広く解釈できる表現は残る。際限なく範囲が広がる懸念は消えない。
秘密の範囲と罰則の網が広がれば、政府に都合の悪い情報が内部告発で公にされるケースは、これまで以上に少なくなる可能性がある。政府は「知る権利は尊重される」と強調するが、秘密保護法は使い方次第で権力者が情報を自在に操れる仕組みになっている。
政府が秘密保護法を制定した狙いには、米国との関係強化もある。
秘密保護法の効果に関し、政府高官は「国家安全保障会議(日本版NSC)を通じ、米国からより機密性の高い情報を受けられるようになる」と指摘する。安倍政権は七月、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を認めるとともに、海外での戦闘支援の要件を緩和することを閣議決定した。自衛隊と米軍の軍事協力の強化を視野に入れており、機密情報が漏れない制度が必要と考えているのだ。
裏を返せば、国民に根拠を知らせないまま、海外の戦地に派兵するということも起こり得る。