チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ

人生の半分を過去に生きることがクラシック音楽好きのサダメなんでしょうか?

スヴャトスラフ・リヒテル、自らの日本ライブをチェック中の緊張感(1980年)

2015-02-23 20:45:00 | 来日した演奏家

きのうに引き続き『週刊FM』(1980年9月29日号)からですが、1979年に三度目の来日公演を果たしたスヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter, 1915-1997)がそのときのライブ録音をレコード化するにあたってチェックする様子が載っていました。


↑ドから上のラまで届く大きな手
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 80年春のモスクワ。メロディア・スタジオは、久しぶりに緊張感が張っていた。巨匠リヒテルが、1979年の日本公演の際デジタルでライヴ・レコーディングしたテープを2週間にわたって試聴するからだ。リヒテルは躁鬱症的性格である。それも周期が短い。五分前まで幸せ一杯の気分でいても、回りの環境が変わると気分も一変してしまう。たとえば、彼の部屋に音楽的教養の欠ける人間が入って来たりすると、話をしなくてもそれを直感的に嗅ぎとり、「アイツは音楽がわかっていない。音楽のわからんヤツがそばにいるのは不愉快だ」ということになる。こうした彼の性格は、無邪気で純粋な感覚から発するものなので、ひとたびヘソを曲げると、誰もそれを止めることはできない。だから日本とソ連のスタッフたちは、ハレモノに触れるかのようにビクビクしっぱなしだ

 試聴は一日二時間。自分の演奏が会心の仕上がりにある部分ではステキな笑顔が浮かび、充分に魂がこもっていない音が一音たりともあると沈痛な面持ちになる。

 しかし、この2週間は、"ミラクル"だった。彼はスケジュールをキチンとこなし、レコード化はOKになった。ソ連のスタッフによるとリヒテルがこんなに気分よく仕事をしたのは初めてだったという。彼のライブ・シリーズは全4枚の予定で、第1弾は、シューベルトのピアノ・ソナタ第13、14番(V VIC28007)である。

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リヒテル先生、コワっ!

「お前は不愉快」とか言われたら泣いちゃいます。それだけにOKが出たときのスタッフの喜びもひとしおだったでしょうね。
一連のライブ録音をあらためて聴きたくなりました。

↑ 1979年2月1日東京厚生年金会館、2月7日東京文化会館の録音。

↑ 遂に完結!(レコード・マンスリー1981年10月号)