事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言2013年11月号~弱っている犬

2013-11-30 | ニュース

2013062520464802_2 2013年10月号「リベラルな夫婦」はこちら

「宮さんにとって全部(周りの人は)下駄だから」

「風立ちぬ」で主役の吹替までやった庵野秀明が宮崎駿のことをしみじみ。これを“みんなを捨て石にしている”とするのも一種の正解だろうけれども、天才とは結果的にそうなってしまうのだというのも真実だろう。問題は、その天才を乗り越える人間が出てくるかなのだと思う。誰よりも、宮崎駿がそう願っているはずだし、庵野こそそのことがわかっているはずなのだ。わたしは宮崎駿が引退するとは毛ほども思っていないですけどね。だからこそ悲愴だとつくづく。

「都政に滞りがないよう身を粉にして仕事をすることが、色々な誤解を招いた行為に対する償いだと思う」

……都知事の会見にて。この話については皮肉もなにもなしにストレートに言っておく。あの人は道路公団とかの問題で「こうであらねばならぬ」的な指摘をバンバンかましていた。「朝まで生テレビ」において、ひときわオレが正論だ的な発言も多かった。それで喝采を浴びていた人なのだ。

性格はいかにも悪そうだったし、「噂の真相」でも徹底的にその(性格の)部分は揶揄されていた。いまこんな状況になったことで“弱っている犬”を叩こうとは思わない。奥さんも亡くされていることだし、オリンピック云々はわたしには関係のない話だと思っているし。

それでもこれだけは言っておきたい。許認可権を持つ行政のトップが、賄賂を受け取ることの重みは感じているんだろうなと。前の知事がどんな姿勢だったかは知らず、もしもこれが「仕方のないこと、よくあること」でかたづけられるとしたら、わたしは小沢一郎の事件とは何だったのかをもう一度問いたいと考えている。今さら政治と金の問題で騒ぐなという論理を展開する人がいるとするなら、もちろん小沢のときも冷静な話をしていたのであろうなと。

2013年12月号~「失望している。」につづく

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恐怖のシュークリーム~「職員室でお菓子を」番外編

2013-11-29 | 受験・学校

00239_420x280 同僚の女性教諭に睡眠導入剤入りのシュークリームを食べさせ、急性薬物中毒に陥らせたなどとして、大阪府警は14日、大阪市立加美北小学校(大阪市平野区)で音楽担当だった中岡温子常勤講師(60)を傷害と器物損壊の疑いで書類送検し、発表した。容疑を認め、「指導方法や教育方法に不満があった。邪魔で仕方なく、職場からいなくなればいいと思った」と供述しているという。

平野署によると、中岡講師は昨年6月1日、職員室で開かれた学年会議で、出席した教諭5~6人に市販のシュークリームを1個ずつ配った。その際、40代の女性教諭の分に睡眠導入剤「ブロチゾラム」を入れて食べさせ、急性薬物中毒に陥らせた疑いがある。

2013年11月15日 朝日新聞

……この講師は、気に入らない教師を早退させたかったと供述しているようだ。にしても、手段が睡眠薬とはすごい。教師は眠りこみ、病院に搬送されて9日間の入院。ここまでは講師も供述している。

が、話はそこでは終わらない。まだ断言はできないにしても、この学校では不可思議な出来事がたくさん起こっている。この女性教師の調査書だけが無くなったり、靴に「バカ」「ヤメロ」と黒マジックでいたずら書きされたり……あろうことか、講師が赴任した平成16年から、入学式や卒業式で気を失ったり体調不良を訴える職員続出。

一種のモンスターが徘徊していたことを、同校職員が誰も気づいていなかったとは考えにくい。別に名探偵がいなくても、機会、動機、様子などで察せられるはずだし、少なくとも代々の管理職に引き継ぎはなされていただろう。

それでも十年近く野放しだったわけだから、学校という世界は……と嘆きたいわけではないの。「職員室でお菓子を」で特集したように、会議のときに飲食する悪癖からいいかげん脱却したらどうなのだ、と主張したくて極端な事例を持ち出しました(笑)。

ほら、あなたが同僚からもらったシューのなかに、何が入っているかわかりませんよ。睡眠薬ならまだしも……

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「菩提樹荘の殺人」 有栖川有栖著 文藝春秋

2013-11-28 | ミステリ

Img_574a7b4a05a14bdbe52698d778c6163 火村准教授×作家アリスのシリーズ最新刊。もう21冊目なのだとか。そのうち何冊読んだかなあ。短編(というより中編)4作をおさめていて、共通するテーマは「若さ」。

ファンにとってうれしいのは火村の大学生時代が描かれる「探偵、青の時代」。飲み会に遅れてやってきた火村。しかしどうも同級生たちの態度がおかしい……人はなぜ探偵になるか、への模範解答。名探偵はやはりそうなるように運命づけられている。再会した同級生が、火村に会わずに去っていくラストなど、渋い。

アリスがいてよかったねえ火村。最高の相方じゃないか。ということでこれからも掛け合い漫才よろしく。

菩提樹荘の殺人 菩提樹荘の殺人
価格:¥ 1,733(税込)
発売日:2013-08-26
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特定秘密。

2013-11-27 | 国際・政治

▼官僚は、議会が国政調査権で情報を得ようとするような<あらゆる企てに対して闘争する。充分に情報を与えられておらず、したがって無力な議会は、いうまでもなく官僚制にとっていっそう好都合である>(『権力と支配』講談社)
▼二十世紀初頭に書かれたウェーバーの官僚論が、眼前でまさに証明されていく思いだ。国政調査権を危うくする特定秘密保護法案を、与党は衆院で可決した
▼政党が自らの首を絞める愚を冒してまで、官の喜ぶ法を作る。吏党のなせる業だろう。
<中日新聞>

数の力におごった権力の暴走としかいいようがない。
民主主義や基本的人権に対する安倍政権の姿勢に、重大な疑問符がつく事態である。(略)ましてや、おとといの福島市での公聴会で意見を述べた7人全員から、反対の訴えを聞いたばかりではないか。
<朝日新聞>

あぜんとする強行劇だった。
衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が採決された場に安倍晋三首相の姿はなかった。首相がいる場で強行する姿を国民に見せてはまずいと、退席後のタイミングを与党が選んだという。
与党すら胸を張れない衆院通過だったのではないか。採決前日、福島市で行った地方公聴会は、廃案や慎重審議を求める声ばかりだった。だが、福島第1原発事故の被災地の切実な声は届かなかった。
<毎日新聞>

日本にも他の先進国と同様の機密保全法制が必要だとの意思が、明確に示されたと言えよう。
<読売新聞>

国として安全保障の機密を守る法整備は欠かせない。その認識は維新も含め今後とも共有できるはずだ。知る権利や報道の自由が損なわれないかとの懸念を払拭するため、政府には参院審議でも丁寧な説明を求めたい。
<産経新聞>

……特定秘密保護法案の衆院通過についての各社の論調。もののみごとに分かれている。まことに、日本のマスコミは健康な状況にあるなあ、とはもちろん考えない。なぜ、保守とリベラルの差が、この法案への態度の違いにそのままつながるのかが不思議なのだ。

わたしは、およそ出来がいいとは言い難いこの法案に、どういう理屈をつけるとマスコミが賛成にまわれるのかが知りたくて、読売を中心に読んでみた。すると、やはり表現にかなり苦しんでいる様子が見える。

「特定秘密が大量になれば、政権交代や内閣改造などによって『行政機関の長』が代わっても、改めて秘密を指定したり、解除したりすることは、物理的にむずかしい。官僚が特定秘密を抱え込まない仕組みにすることが肝要だ。」

……ね?この法案の問題点は読売だってわかっているんですよ。公務員が秘密をもらさないようにするための法律をうたいながら、結局は公務員が秘密を大量に抱え込む方向に進むことは目に見えている。それこそが、官僚の狙いなのもわかっているのだ。

「法案を巡る最大の論点は、政府が恣意的に秘密指定を拡大し、都合の悪い情報を秘匿し続けるという懸念が拭えないことだった。」

……まったく、そのとおりでしょう。その懸念を払拭するために読売が使った論法は

「安倍首相が『国民の安全を守るため情報収集が極めて重要だ』と述べたのはもっともだ。」

として日本版NSC創設を応援するなど、政権の国家主義的主張を後押しすることだった。つまり、東アジア情勢に対応するためには、もっとはっきり言うと戦時に備えるためには今のままではだめでしょう?という主張。マスコミの国家観の違いこそが、この法案への姿勢の違いだったのだろう。

しかしわたしはこれは筋が違うと思う。官僚が情報を抱え込むことによって(抱え込むに決まってるじゃないですか)、国会だけではなく、官僚自体も劣化していくという主張の方に分はありそうに見える。

省庁間の縦割り意識はいっそう強くなり、都合の悪い部分は秘密にしておけるのだから緊張感も失せる。そして、情報をコントロールし得ると考える官僚の暴走が始まるのだ。

わたしは何よりも、“何を秘密とするか”にフリーハンドの余地があるということが、どれだけ巨大な権力となりうるかの想像力がない人間に、国会にいてほしくない。きのうの国会の様子を、きちんとおぼえておこう。まさかその瞬間に首相が議場にいないことまで、特定秘密にしたりはしないだろうな。

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「一の悲劇」 法月綸太郎著 ノン・ポシェット

2013-11-26 | ミステリ

File132 なぜかいまバカ売れ。書店に平積み状態。1991年に発表されたミステリがなぜ二十年以上もたって?

どうやら祥伝社の営業攻撃+取次の日販のプッシュという事情があったみたい。しかしこれはうれしい。わたしは「二の悲劇」は読んでいたけれどこの作品は未読。この騒ぎがなかったら一生読まないで終わったかもしれない。

広告代理店勤務のエリートサラリーマン山倉に、妻から電話がかかってくる(この時代はまだ携帯電話が一般化していないことに注意)。長男が誘拐されたと。しかしその長男は風邪のために学校を休んで二階で寝ている。実際に誘拐されたのは近所に住む同級生だった。取り違えなのか。しかし山倉にとってこれは違った意味をもっていた。その同級生は7年前の不倫でできた子ども。そして息子は妻の妹の子なのである……

犯人を序盤で当てることができる人はまずいないと思う。それほどに怒涛の展開。「天国と地獄」(黒澤明)の取り違え誘拐や、某有名作家の某直木賞受賞作品などを下敷きに、どんでん返しにつぐどんでん返し。

アリバイトリックが中心と見せて密室殺人も起こり、ダイイングメッセージまで出てくる。おまけに“信用できない語り手”なのかと読者を混乱させ……とミステリのあらゆる手法を駆使してあるのだ。面白くないわけがない。

ただねー、カタルシスがあるかどうかは微妙なところで、エリートサラリーマンが多少の火遊びなんかでそんなに罪悪感を抱き続けられるものなのかしらと。あ、偏見。

精緻に組み上げられた犯罪であるために、名探偵の登場は必然。しかも、犯人のアリバイづくりに探偵が利用される展開はさすがだ。しかし、しかしネタバレになるので微妙な話だけれど言いたい。“第一の犯人”の、どこか人生を諦めきった感じと、名探偵をひっかける奸智の同居はどうにも納得がいかない。それに、この主人公を好きになれる人っていますか(笑)

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「丕緒(ひしょ)の鳥」 小野不由美著 新潮文庫

2013-11-25 | 本と雑誌

Bo9uncdcyaaowcj十二国記」シリーズ十二年ぶりの新刊。わたしはこのシリーズを講談社X文庫ホワイトハートから入り、講談社文庫、そしてどうやら刊行母体が移籍した新潮文庫でも読むことになった長っ尻の客。

異世界のルールをていねいに描くことがこのシリーズの魅力のひとつなので、短編集なのは残念、と思っていた。いやもう不明を恥じます。四編とも傑作。長篇は王と麒麟の物語がメインで、治世とはどうあるべきか、天意とは何かが語られることが多い。でも今作では、いずれも公務員の矜持が語られています。

「丕緒(ひしょ)の鳥」の主人公は、新王即位の際におこなわれる大射というイベントのプロデューサー的仕事を生業にしている。彼は王に自分の考えを伝えようと意気込むが、その気持ちは果たして伝わるのか……慶国の新王とくれば(はっきりとは描かれないが)ひさしぶりの陽子登場。ここで小野が描きたかったのは、芸術というものの可能性と限界か。旦那の綾辻行人とのミステリ観の違いまでうかがわせる。

「落照の獄」は死刑が是か非かを露骨に問うディベートドラマ。死刑に犯罪抑止力はあるのか、被害者家族の慰撫はどうなされるべきか、国の復讐代行でいいのか、死刑執行者は殺人者なのか……絶対悪のシリアルキラーに司法はどう立ち向かうか。結末は苦い。

「青条の蘭」はブナの木に発生した疫病から国を救おうとひた走る下級官吏のお話。こういう話をおれは教科書で読んだような……「走れメロス」だ(笑)。しかしこの作品では、主人公ひとりだけが走るのではないあたりで感動は深い。古典級の名作です。

「風信」の主人公蓮花は、すべての女を追放しようとした女王の犠牲者。身を寄せた園林ではたらく暦をつくる役人たちは、浮世離れしていて、外の世界に興味がないように見える。そのことで怒る蓮花だったが……モデルとなっているのは大学やミステリ研でしょうか。彼らがどう現実とコミットするのかが妙味。

……読書の楽しみとはこれか、と思い知らされる逸品。小野はここに来てますますレベルアップしている。読者の側も十二年分成長しているといいのだけれど。まもなく長篇の新作も上梓されるとか。あああそれまでは死ねない!

丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫) 丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)
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八重の桜~第四十七話「残された時間」

2013-11-24 | テレビ番組

Apocalypsenowbrando 第四十六話「駆け落ち」はこちら

前回の視聴率は13.7%でピタリ的中。かえって怖い。

早稲田、慶応、津田塾、そして同志社と、私学がどのように設立されたかが後半のテーマ。卒業生諸君、ちゃんとその精神を受け継いでる?えーと、わたしが卒業した大学もこないだ映画にまでなったのに見てなくてすみませんでしたー。

教育はとにかく金がかかる。そして、その結果がすぐに現れないからこそ教育者の性根と、資金提供者の度量がためされる。公立という名にふんぞり返っている(わけではないけれど)わたしの商売にもそれは言える。

新島襄にとって、同志社の大学化こそが戦地。だから死亡フラッグ立ちまくりの今回と次回は、会津戦争と同様に硝煙の匂いがする。鉄砲は鎌倉の縁日においてだけ登場しましたが。

「かわいそうに……」

余命宣告された譲が、妻に語った最初の言葉がこれ。

「毛布!」

夫の命が長くないことを知らされた八重の最初の言葉がこれ。泣ける。関係ないけど、母が死んだときに最初にやったことが、病院の売店に行って浴衣を買うことだったことまで思い出してしまいました。

同志社大学設立に大きなチカラになったのが徳富蘇峰の筆だったのは説得力があった。アジテーションが有効となり、ペンが剣よりも強くなる素地がつくられ始めていたわけだ。民には知らしむべからず、的な法律をかまそうという現代に蘇峰がいたら、はたしてどんな文章で煽っていただろう。

それにしても、勝海舟とご近所さんだったとは。生瀬のスケジュールと会わなかったからか、中村蒼とのツーショットが無かったのはありゃ。「地獄の黙示録」のマーロン・ブランドとマーティン・シーンだってもうちょっとうまくやってたのに(笑)

最終月に入る。欠点も多いドラマだけれど、追走してよかったと思います。まさか普通に泣けるとはねえ。視聴率は14%にのるでしょう。のってほしいっす。

第四十八話「グッバイ、また会わん」につづく

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「10.8 巨人VS中日 史上最高の決戦」 鷲田康著 文藝春秋

2013-11-23 | スポーツ

Img_e00f193b3cb530408a9a12f06e38500 あの、1994年10月8日の試合を徹底的にルポ。長く報知新聞に在籍した鷲田の人脈が活用されている。この試合の記憶がわたしにはとんとなくて、プロ野球ファンであるわたしが、しかも最高視聴率67%などという馬鹿げた数字をたたき出した試合を見逃したはずはないのに……あ、なんと山形テレビのクロスネット解消がらみで山形では中継されてなかったのか!なんてことだ。

今年の日本シリーズにおいて、楽天が田中と則本をフル回転させたことには賞賛と批判が集まっている。しかしおよそ二十年前の長嶋は、槙原、齋藤、桑田の三人にそれ以上のハードワークを強いていたことがこの書で理解できる。

同率同勝利数での最終試合での決戦、というシステムは、引き分けがふたたび復活したことでもうありえない。そんな奇跡の試合に、長嶋はあんな性格だから幸福を感じ、高木守道は必要以上に普通であろうとした。その是非が試合結果(巨6 - 3中)に反映にされたと結論づけられている。

選手にとっては地獄のような試合だったようで、試合中に落合と立浪が負傷し、桑田もその疲弊によって選手生命を縮める結果になった。“長嶋を優勝させるために巨人に来た”と意気込む落合は、この試合に負けたら引退を覚悟していたというし、原もまた極度の緊張のなかにいた。そんななか、松井だけは能天気に楽しんでいたというのがなんともかわいい。

まだシーズン中なのにオリックスのイチローが焼きそばを食べながら三塁側で観戦していたというのに、その祭りのなかに参加できなかったのが山形県民だったわけ。急きょ実況を担当することになった吉村アナの名調子を、フジテレビ空白域以外の人たちは楽しんでいたのか。やっぱりくやしい。

10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦 10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦
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「ハーモニー」 伊藤計劃著 早川書房

2013-11-22 | 本と雑誌

Harmony 「虐殺器官」があまりにすばらしかったのでいきおいで読む。で、これがすごい傑作にして彼の遺作なのだ。34才。あまりに早い。

大災過、と呼ばれる騒乱の果てに人類が行き着いたのは、WatchMeとよばれるソフトを人体にとり入れ、心身ともに健康な生活を“全員が”送る世界だった。その一律さ、健康さから逃れるために、三人の少女はある行動を起こす……

道徳的で、やさしい思いやりのあふれる世界。おとなになってWatchMeがインストールされれば、そのことの怖さ、異常さに気づくことさえできなくなっていく。

そこに気づいたカリスマ的少女がまず魅力的なのだが、彼女に影響された主人公が、不健康さを享受するために危険な場所に突撃する役人になるという設定がすばらしい。たばこを吸うために学校の正門前に逃避するのとは100万倍ぐらいスケールが違う。

わたしは逆のことを思うんです。精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。肉体の側がより生存に適した精神を求めて、とっかえひっかえ交換できるような世界がくれば、逆に精神、こころのほうがデッドメディアになるってことにはなりませんか。

……これを、常に死を意識しなければならなかった若き男が書いたことの重みを思う。

ミステリ的に周到なのは、文中に大量のマークアップ言語がしこんであることで、そのことが最後に生きてくる。そう来たかぁっ!とたまげてしまいました。タイトルの意味も壮絶。ああ、伊藤の“次”を早く読まなければ。そう、円城塔が伊藤の発想をひきついだ「屍者の帝国」を。でも、それで本当に最後なんだよなあ。

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「何者」 朝井リョウ著 新潮社

2013-11-21 | 本と雑誌

147421_9605757_0 シューカツ、に血道を上げなければならない、という一点だけでも今の学生はしんどいと思う。

いやわたしの頃だって不景気まっただ中。文学部などというつぶしのきかない、しかも(単位数が少なくて)卒業見込証明書すらとれないので学生課に頼み込みに行くような不真面目な学生にとっても、確かに就職戦線はきつかった。あ、戦線ってそのころから戦争だったのか。

しかし採用担当者はいまほど上から目線で語ってはいなかったし、これほど多くのNOを突きつけられることもなかった(それほど受けてないけどね)。なにより、面接のためにそこまで自分自身を見つめなければならないなんて……

朝井のこの作品は、そのシューカツの過程で、(ちょっとネタバレになるけれども)SNS、ブログなどで武装し、かろうじて自分を守ろうとする学生たちの葛藤を描いたもの。

武装であると同時に、自らをも痛めつけてしまうそれらツールを、弁護も糾弾もしていないところがいい……てな生意気な話をブログでされても、ですか。そうですか。

何者 何者
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発売日:2012-11-30
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