PART1「コストカッター」はこちら。
「女性尊重の時代で、天皇陛下だけはそうならないというのはおかしい。時代遅れだ」
これが現職の自由民主党幹事長の口から出た発言なのだからびっくり。一億総活躍をぶち上げた党なのだから当然の話なのだろうが、党内には怒っている人間のほうがきっと多いだろう。
それに、こう発言した二階俊博という人物はまことに食えない人なのだ。彼は幹事長就任直後にこう語っている。
「きわめて重要な問題なので、議論する場を設けることが大事だと思っている。」
自民党総裁任期を、2期6年から3期9年、あるいはそれ以上に、との考えをまず示し、安倍総理への忠誠を示してみせた。
でも、二階が本心から安倍の続投を望んでいるのかはわからない。親中派で、まして女性天皇容認をテレビで語る(つまりは、牽制だ)二階が、政治的に現総理と合うはずはない。骨の髄まで田中角栄直系(だとわたしはにらんでいる。金に汚そうなところまでそっくりだ)な彼と、清和会で極右的な志向をむき出しにする首相は、本来なら水と油。
首相の側も、野党に人脈をもち、派閥の増強に意欲的な二階を本気で信じているものだか。
だけれども二階の経歴は豪華そのものだ。踏まれても蹴られても復活してくる。それはもちろん地元の和歌山県において盤石の支持を集めていることがあるだろう(総務省統計局の一部業務が和歌山県に移されるという報道もありましたよ。やってますね幹事長)。
同じ経歴を持つ身として、離党した人物の復党に積極的(そして自派閥に入れる)なあたりも、実は人たらしなのかもしれない。
でもこの人の場合、なにより運がいいとしか。
だって選挙で大敗して二階派が本人しかいなくなり、伊吹派に合流したら領袖の伊吹文明が議長になったのでそのまま会長に。きわめつけは谷垣前幹事長の自転車事故。谷垣という人の運のなさと、二階のしぶとさは好対照だ。このラッキーな御仁の、これからの発言は要注目ですかね。
PART3「アスリートファースト」につづく。
え、いくら平日の午前中だからといって、どうしてこんなに館内おばあちゃんだらけなの?
しかもちょっと明かせないが、ラストでこの人たちは大喜び。すっかり、金持ちの老人に取り入って後妻の座をつかみとり(男をさっさと殺すなどして)財産を吸い上げる鬼畜な“後妻業”のヒロイン、大竹しのぶに感情移入しているのだ。
週末の「さんまのまんま」(関テレ)に津川雅彦がゲストで来ていて、この映画の招待券をさんまにプレゼントしていた。
「津川さん、考えてみなはれ。前の奥さんが旦那を殺しまくる役の映画、わたし行けまっか?考えてみれば、危なかったわあ(笑)」
飲んでいた芋焼酎を噴き出した。くわえて
「笑福亭鶴瓶くんが大竹さんとベッドシーンがあるんだけど、彼は前貼りもしないで……」
「あの兄さんは見せたがりなんですっ!」
また噴いちゃったよ。27時間テレビなどで、彼の露出事件は繰り返されてますもんね。で、わたし「後妻業の女」見てみようと決心いたしました。簡単な客。
黒川博行(「破門」でわかるようにこの人は映画の撮影にくわしい。予想どおり特別出演しています)の原作「後妻業」とはちょっとトーンが違って、悪い連中が悪いなりにしぶとい。
ヒロインよりも原作ではよほど悪かった結婚相談所の経営者を演ずる豊川悦司の、頭いいんだか悪いんだかわからない風情が魅力的。
監督の鶴橋康夫は、読売テレビ時代から俳優たちに圧倒的な支持を集めていたからか、名優がたくさん出ているし、しかもみんな熱演だ。
大竹しのぶと尾野真千子の焼肉屋でのバトルなど
「あ、いま入った」
と思うようなマジパンチの応酬。水川あさみまでこんなに脱いでくれるとは……わたしも将来、後妻業のカモになる資格十分ですかね、スケベで。でも財産ないか。ああそうですか。
大竹しのぶを一種の化け物として描き、観客に爽快感を与えたのだから作品として正解。おばあちゃんたちは「刺激強かったわねー」と大喜び。
どうしてこんなにおばあちゃんたちが多かったかが外に出て判明。某地区の社会福祉協議会のバスで彼女たちは鶴岡まちキネに送迎されていたのだった。なんて話せる社会福祉協議会。おばあちゃんたちを、年寄りの男を殺しまくる映画に連れてくるとは(笑)。
2016年7月号「ポケモンGOでGO!」はこちら。
「昨日と一緒でお願いします。これ以上言うとカッカしちゃう」
今月は名言満載なので何号かに分けてお送りします。
最初は中日の森監督代行が、負けがこむ自チームの惨状に記者会見を3秒で切り上げたときのもの。
チームが壊れるというのは簡単なものなんだな、とつくづく。Jリーグで、他のチームを子ども扱いしていた読売ヴェルディが、確かビスマルクの契約関係でもめたあたりから坂を転げ落ちるように弱体化していったのを思い出す。中日も、まさしくそんな状態にあるように見える。
谷繁が“休養”を強いられた陰に、GMとの確執があったことは、全紙全局が報じていた。現場で取材していれば、いや年末の契約更改や補強の様子を見れば、誰だって気づくだろう。
GMが監督だった時に、チームの、戦力的にも精神的にも支柱だった井端を放出したあたりで、わたしも不審に思ったものだった。以降、コストカッターとしてGMの名は監督よりも前面に出てくる。その結果、FA候補からは
「中日だけには行きたくない」
ドラフト有望株からは
「(中日以外の)11球団OKです」
と揶揄されている。原監督時代、巨人にとって常にマークしておかなければならなかったのは中日だった。現在のGMの采配は、選手にとってはきついものだったろうが、少なくとも“勝つ”ための方法論として魅力的ではあったので。
だからGM信者たちは、およそ理解しがたいチーム編成であっても、深謀遠慮があるのだろうとまだ支持している。わたしも、単に安いコストで勝つことをめざしているのではないだろうとは思う。あの落合博満のことだもの。しかし……
2016年8月号PART2「ラッキーな人」につづく。
第三十三回「動乱」はこちら。
前回の視聴率は18.0%。オリンピックで沸き立っているときなのに意外に健闘した。というか、わたし、ものごころついてから、今回ほど物理的に見なかったオリンピックはないかも。
あ、1980年のモスクワがあったか。あの、テレビ朝日の寝業師がしかけた騒動(独占放映)は、もののみごとに失敗に終わっている。前回の石田三成によく似た経緯。アメリカが家康で三成がソ連ですか。
マスコミは大騒ぎしているし、感動する名シーンも多かったリオ。でも、視聴率的には盛り上がらなかったのが正直なところ。時差12時間はやはりつらかったし、視聴者を長い時間拘束できるマラソンがあの始末では……わたし、卓球ばかり見ていた印象。
さて真田丸。いよいよ関ヶ原に向けて動き出す。
・福島正則、加藤清正らが三成をつるし上げようと画策し、真田兄弟が意地を見せる。
・信繁に「家来になれ」と強要する家康。全国で20万人ぐらいが、ああめんどくせー、ここでお互いが刺し違えていればと思ったはず。
・いつも苦虫を噛みつぶしていた直江兼続(村上新悟)が「直江状」を家康に叩きつけることで上杉と徳川が決裂。
……これからドラマ的に利用されるであろう伏線が続々と。なにごとかを清正につぶやく三成。秀頼に三成が送り、真田が育てることになる桃の木。恋愛体質バリバリだったことが明らかになる信繁の正室(笑)とか。
ブラウン管(死語)の外では、信繁のお母さんがえらいことになっている。だいじょうぶ、あなたの家族は(旦那は前からだけど)食えない野郎たちになっていますよ。マスコミごとき、軽くあしらってくれるでしょう。あの兄弟たちはなにしろ、お互いが父親に対して小さな嘘をついていますから。
今回の視聴率はさすがに下がるでしょう。あの黄色いTシャツ軍団に、いつも大河ドラマは苦杯をなめています。きっと視聴者はかぶってるんだよね。15%台?
第三十五回「犬伏」につづく。
主人公はボディガード。敵は、相手の弱点に心理的な楔をうちこむことで自在にあやつる“調べ屋”。だから誰が敵となるのかさっぱり読めないという展開は、ディーヴァーにとってお得意の……
と思ったら、なんと真の警護対象は誰なのかという謎までもってきた。もちろん徹底的に面白いので読んでいる間は気にならないが、ヒーロー警官の妻が実は……その妹が撮った写真は……娘も実は……ありえないでしょ(笑)。
続編をつくるためか、ちょっと強引なラストも付随していて、これもしかしいかがなものかと。でも、それでも面白いんだよなあ。やっぱりディーヴァーはやめられない。
その86「法医昆虫学捜査官シリーズ」はこちら。
文壇で一、二を争う美貌の作家(山形在住)が放つ、破天荒な刑事と暴力団の抗争の物語。
もちろん背景には現実の広島抗争があって、緻密に取材されているのがわかる。ただ、笠原和夫がねっとりと「仁義なき戦い」で描いたような、男のだらしなさ、嫉妬というような側面よりも、パワーバランスこそが肝要だと開きなおる刑事のヒーローぶりが前面に。
この、パワーバランス云々とくればやはり笠原=深作の「県警対組織暴力」が思い浮かぶし、映画化するとすれば菅原文太しか主役はありえない。
あの映画の主人公の末路を柚月が意識していなかったはずはないが、まさかそこに「新宿鮫」パターンまで持ちこむとは。もうちょっと主人公ふたりに人間味(こく)があるとうれしかったかも。最後の年表はさすが。
その88「教場2」につづく。
VOL.10「丸亀製麺」はこちら。
さあ夏休みシリーズは最終回。今年もいろいろあったなあ(ありすぎ)。
酒田のラーメン情勢もいろいろとあって、この一年だけでも
・風林火山の進出(つまりは優勝軒の閉店)
・銀竹(つらら)、和み屋、花やらぁめん2ndの開店
・太陽軒の閉店
・ほんとに池田屋は閉店してたんだ
・癒庵がらみのお店が駅前の元東急インビルに出店
……わたしが知らないだけで他にもいろいろあったんでしょうね。客の側にもいろいろあって、わたしの起点が転勤とともに移動。で、その異動とともに学区の太陽軒が閉店したと(T_T)
前任校で、出前してくれてた桃花苑が遊佐にお引っ越ししたのよりもショック。今年の最終回は前任校の学区に。「侍」が満員だったので「かめちゃん」へ。ここはもう、居酒屋の余技の域をこえてます。それ以上に、例によって焼酎やウィスキーのボトルに囲まれてラーメンをいただくとそれだけでうれしいです(なんでだ)。
ガストは山形市で妻とふたり。何年ぶりだろうガスト。ドリンクバーなんて単語も久しぶり。平日のお昼過ぎに、みんな何やってんだと思ったけど、じゃあお前は何なんだってことですわね。カロリーオフのバニラアイスはなかなかけっこうでしたよ。上品なお豆腐を食べてるみたい(笑)。背脂とお豆腐の夏でした。
2017年春休み篇「熊文」につづく。
祝谷崎潤一郎賞受賞!選考委員は筒井康隆、池澤夏樹、桐野夏生、川上弘美、堀江敏幸。一昨年の受賞作が、あの、奥泉光の「東京自叙伝」ですからこの賞の狂いっぷりはすごい。
読みながら、お出かけの時間がせまっているのにあまりの面白さにやめられなくなる。1966年から2016年にいたる、第一藤岡荘5号室の物語。この、奇妙な間取りのアパートには50年間に13代の店子が入る。
それぞれ、居住年が名前のあとに出てくるし、その名前がちゃんと何代目なのかわかるようになっている(まるで四谷さんとか五代くんとかのめぞん一刻みたい……長島はブルボン小林名義でマンガ評論家でもあるので意識したに決まっていますが)。
読み終えて切なくなる。
この五十年は戦争があったわけでもなく、ひたすらに経済に翻弄された時代。そんな、血塗られてはいないけれども高揚もなかった50年が、今まさに歴史になろうとしているのだと。
特に、70年代末から80年代初めまでの、自分が何者になるのかもわからず、ただ東京に“居住していただけ”だったわたしには、この書はとてもせつない。ついに「ぼくは落ち着きがない」を超えた長島の最高傑作。
VOL.09「桂林」はこちら。
あぢあぢあぢ。
こんなに暑くても山形の夏休みは終わってしまう(その代わりに春休みが長いっす)。
あまりに暑いので、安易に職場の近くの丸亀製麺へ。でもわたし、ここに入るの初めてです。こんなに讃岐うどんが好きなのに。
だってめんどくさそうじゃない?スタバほどではないにしろ(笑)、どんなルールなのかよくわからない。そういえば学生時代に吉野家に入るのも最初は敷居が高かったなあ。松屋の食券システムにもようやく慣れたので、丸亀もいけるでしょ。
でもうちの奥さんはダメらしい。うしろのお客さんに突き動かされるようにオーダーし、突き動かされるように食べ、そして出て行くというルールが。
娘は虚心に「おいしいじゃない丸亀」と不思議がっている。となりの銀行の正面でタバコを吸っていたら(なんて迷惑な客)、見たことがあるクルマがやってきて丸亀に駐車。出て来たのは息子夫婦だった。
行ってないのおれだけじゃん!
ということでチャリを日陰に置き、入口へ。わりにすいている時間帯だったのでOK。冷たいおうどんをオーダーし、あれ?おれはお揚げが食べたいのにどこでオーダーを?
しまった。最初にきつねと言わなければならないのでした。まあ、次はそれで。並んでいたら、前任校の元校長がポンとケツを叩いていく。そうか、近所にこういう店があるって幸せなことだったんだなあ。いっしょにオーダーしたおむすびもすごくおいしいです。人気納得。
VOL.11「かめちゃん&ガスト」につづく。
第三十二回「応酬」はこちら。
前回の視聴率は15.8%と予想よりも下がった。お盆の定例であると同時に、リオオリンピックが影響しているんでしょう。他の番組も軒並み下がっている。
4年に一度の、あの祝祭に勝つのはなかなか。女子レスリングの軽量級の金メダリストが、インタビューで上唇をぴくぴくさせながら答えているのを見て、ああ人間が本気で泣くのをこらえるときって、確かにこうだよなあと感動。これにフィクションが勝つのはしんどい。
でも今回はフィクショナルに突っ走った回。史実はどうあれ、三谷幸喜が造型した石田三成(山本耕史)なら、こうせざるをえなかったであろう展開が描かれている。
もはや1599年のお話なのだから関ヶ原前夜。専横がいちじるしい家康に三成は危機感をおぼえ、政治的には前回で圧倒されたものだからテロに走る。しかし人望のなさ(とお腹の弱さ)は決定的で、豊臣恩顧の大名たちが次々に徳川についてしまう。
伏見の徳川屋敷が、宇喜多(だっけか)の屋敷と隣り合わせで、お互いが不穏な動きを見せる……ってこれは歴然と黒澤明の「椿三十郎」じゃないですか(笑)。紅い椿や白い椿が流れる川が間に流れている……わけはないです。
勢いにのる徳川と、追いつめられる石田。こういう構図にだけはするなと主張した大谷吉継の懸念したとおりの展開になってしまう。こういうにっちもさっちもいかない状態になると薄笑いをうかべる昌幸の出番。
まるで学級会のようになってしまう(みんないちいち名乗るのがおかしい。挙手まではしませんが)軍議の場を、不満げな加藤清正(新井浩文)を蹴散らして昌幸がイニシアチブを握る。
「あれは、さみしい男なんじゃ」
と秀吉が予言したように、佐吉(石田三成)は孤立していく。義は三成にある。それは確かだけれど、お味方するのがあの人とあの人とあの人では(笑)。
本来であれば前田利家がそこをうまくまとめるはずだったのに、もう彼に命は残されていない。思えば椿三十郎における伊藤雄之助の家老が、みずからを
「乗った人より、馬が丸顔」
と笑わせて三十郎(三船敏郎)の放浪を不可避のものだと描いたような“いい意味での年寄り”はいなくなった。あとは激突あるのみ。今回は16%台後半と読みました。
第三十四回「挙兵」につづく。