事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「やっと訪れた春に」青山文平著 祥伝社

2022-08-30 | 本と雑誌

さすが青山文平。設定が絶妙です。本家と分家から交互に藩主を出す特異な藩。派閥抗争を防ぐために長年苦労してきた二人の男。そのうちの一人が引退を決意する……この、引退の理由は、他の人が書いたら笑えるところだろうが、青山さんが書くと加齢の哀しみが胸に迫る。

先々代の藩主が、その豪胆さで藩を隆盛に導いたことが後々に(良くも悪くも)影響する。そして、すでに“終わった人”だったはずの人物が、先々代を祀った神社で刺殺される。それはなぜか。そして、誰がやったか……

ミステリとしても上等。犯人の動機はとてもよく理解できる。そして、ラストの叙情。「黛家の兄弟」の上をいっています。まあ、青山さんと比べてはかわいそうだけれども。

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明細書を見ろ!2022年8月号 リフレッシュ特休

2022-08-29 | 明細書を見ろ!(事務だより)

CASE5「職務専念義務違反」はこちら

校内倫理委員会ネタをお休みして、リクエストがあったので今回はリフレッシュ特休を特集します。

まず、存在自体を知らない人もいるようなので解説すると

「職員としての勤務期間等を考慮して県教育委員会が県人事委員会と協議して定める職員が、心身の活力の維持及び増進を図るため勤務しないことが相当であると認められる場合」

にとることができる特別休暇です。お役所言葉の連続でなんの解説にもなっていませんね。この特休は現在、30才、40才、50才に“なる年度”にそれぞれ5日間とることができます。

勤務不要日などをのぞいて、原則として連続してとることになっていますが、かえって取りづらいとする意見もあって平成17年度からは分割してとることも可能になっています。

この権利は、田川の労働組合員が支部の定期大会で「民間会社にはリフレッシュ休暇の制度が定着してきているのに、どうして公務員にはないのか」と発言したことが契機になっています。

県教組の大会でこの件が提案された時のことを、わたしは絶対に忘れないと思います。なぜなら、“そんなことが絶対に実現するはずがない”とばかりに場内に笑い(!)が起こったからです。

県教組という労働組合の代議員たちにして、こんな認識でした。多忙を嘆く教職員自身が、そのことを常識化して考えすぎていたのではないか、とリフレッシュ年休→リフレッシュ特休として制度化された現在、つくづくと思うのです。

ブラックな職場にどっぷりとつかっていたのは昔からでした。

画像は「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021 関西テレビ)

周到。最初の夫(松田龍平)二番目の夫(東京03の角田晃広)三番目の夫(岡田将生)と離婚した大豆田とわ子に松たか子。ヒロインの名字が大豆田という変わったものなのに対し、元夫たちは田中、佐藤、中村という平凡さ。そして三人ともメガネをかけているという設定が最終回で炸裂。堪能いたしました。

2022年9月号「懲戒処分」はこちら

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鎌倉殿の13人 第33回 修善寺

2022-08-28 | 大河ドラマ

第32回「災いの種」はこちら

二代鎌倉殿である源頼家(金子大地)を暗殺する回なのだから、それはそれは陰惨なエピソードになるはずだった。ところが、もうひとつの殺人がそれを吹き飛ばすというアクロバットのような回。

頼家を排して実朝を鎌倉殿にすえるという北条の強引さにみんな辟易。義時もしんどい。その意向のほとんどが父時政(坂東彌十郎)の妻、りく(宮沢りえ)から発せられていることは自明だからだ。頼家は(フェイクなんだけど)朝廷に北条の討伐を命ずるように文を出そうとする。

で、ダースベイダーとなった北条義時(小栗旬)は、自前の必殺兵器を使うことにする。もちろん、善児(梶原善)である。前回は子殺しを一度は断った善児が、頼家を殺そうとしたときに、あることのために隙を見せてしまい、手傷を負う。

予想通り弟子のトウ(山本千尋)がカバーに入る。いやそれにしてもこの人のアクションはすごい。志穂美悦子の後釜はこの人で決まり。

と、思っていた瞬間にどんでん返し。

「親の仇」

トウは善児にとどめを刺す。

「このときを待っていた」

考え方としてふたつあります。トウは自分が仇持ちであることを隠して善児に弟子入りしたと。こっちの方がはるかに確率高いです。

でももうひとつ考えられますよね。善児は前にも一度、子を守ったことがあったのかもしれない。そしてそのことが……

第34回「理想の結婚」につづく

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「黛家の兄弟」砂原浩太朗著 講談社

2022-08-27 | 本と雑誌

高瀬庄左衛門御留書」につづく、神山藩シリーズ第二弾。

藤沢周平の海坂藩ものをもちろん意識しているんでしょう。海坂藩は庄内藩がモデルだけれど、こちらにも想定しているところがあるのかな。シリーズとはいえ、主人公も生きる時代もまったく異なるように描くそうなので、それはそれで楽しみだ。

三兄弟の物語。三男は途中で他家に婿入りするが、あくまで“黛家の兄弟”の物語であることがタイトルで高らかに宣言されているわけだ。いい話です。ただ、前作でもちょっと思ったんだけど、出てくる女性たちがあまりに都合よすぎないですか(笑)

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うまい店ピンポイント2022年夏最終回 樹(いつき)

2022-08-26 | 食・レシピ

照月篇はこちら

「伍長、夏休みが終わってしまいました」

「もう世の中にいいことなんか何もない」

「Tシャツ&短パンはもう許されません」

「最終日だからとみ将に向かったらお休み」

「さすがひきが弱い(笑)」

「お向かいの樹(いつき)。最初から最後まで客はわたしひとりでした。がんばって」

……人気店にばっかり行ってるのはオトナの態度ではありません。ここもPayPay祭りに参加してればもっとお客さんが入ったろうに。

ざる中華をいただく。悪くないじゃん。

あ、それからTシャツ短パンでの通勤は新学期が始まったのにそのまんま。チャリだから仕方ない。

事務補助に

「絶対始業式の日取り誤解してたんですよね」

と言った人がいたらしい。どうもすみません。涼しくなったのでさすがに昨日今日は普通のクールビズになってます。

9月唯一の外食篇につづく

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「宮本から君へ」(2018 テレビ東京)(2019 スターサンズ=KADOKAWA)

2022-08-25 | テレビ番組

史上最もかっこいいタイトルバック。

主演の池松壮亮が逆立ちをし、そして涙を流すそれだけなのになんとも凄い。演出の真利子哲也(あの「ディストラクション・ベイビーズ」の人だ)のセンスが爆発している。テーマソングがエレファントカシマシなのも気合いが入っている(主人公の名前はエレカシの宮本浩次からとられているそうだ)。

なにごとにも不器用な対応しかできない宮本は、他の俳優が演じたら暑苦しいだけの人間に見えたかもしれない。でも、“異常なほど自然な”演技が本領の、池松壮亮によってこのキャラクターはなんとも魅力的なものになっている。

毎朝、駅で見かける美沙子(演じているのはグラビアアイドルの華村あすか。なんと米沢出身です)に声もかけられない宮本だが、彼女との関係が……てな具合に序盤は恋愛ドラマ的。

うーん、わたし的にはつらいドラマなのかな、と思ったら合コンのメンバーに「ドライブ・マイ・カー」の三浦透子がいて、ちょっといい話になっていく。

そして後半は松山ケンイチや星田英利(ほっしゃん。です)とともに営業の世界に喜びを見出し、同時に翻弄もされる。

劇場版は、普通のサラリーマンのお話なのに、激しく暴力的な映画になっている。くわえて蒼井優とのセックス描写も過激。先週だったかの「スナックラジオ」でBABIが

「日本映画のセックスは“遅い”」

と卓見を吐いていたが、この映画はその反証だ。

ピエール瀧が出演していたことで助成金が打ち切られて騒動になっている。しかしそんなこと以上に、まず池松壮亮を見ろ。このすごい俳優を見ろ。

キネマ旬報ベストテン第3位。池松壮亮は主演男優賞をゲットしている。

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うまい店ピンポイント2022年夏 照月の冷やし中華

2022-08-24 | 食・レシピ

四十番篇はこちら

「チャリで職場に行ってまず着替え。市役所に外勤に行ってまた着替え。何度男子更衣室に行ってんだか」

「伍長、短パンTシャツで外勤に行けるユルさはいいんですけど、照月ではやはり……」

「冷たいのしか食べられませんでした」

……職場から市役所まではおよそ1.5キロ。往復3キロだから通勤に近い。経路はかたまっていて、坂がないのが助かる。一番町だか二番町にある公園で一服。木陰があるので助かる。

そこではわたし、コーラばかり飲んでいます。若い世代はそんなものに見向きもしない。生徒たちだってファンタを飲んでいるのを見たことがない。

スポーツドリンクやお茶を飲むって、君たちのほうがオトナだねえ。

夏休み篇最終回につづく

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うまい店ピンポイント 2022年夏 四十番

2022-08-23 | 食・レシピ

吉野家篇はこちら

「伍長、毎度のことながらひと言いっていいですか」

「どうせ言うんだろ」

「忙しいとかいいながら松山の四十番まで行くってのはどうなんです」

「女将さんにクーポン会員にまでさせられました。はい、ここを押してぇ、ここをスキャンしてぇ」

どうしてもわたしはこの店のもつラーメンを定期的に食べなければいけないんです。臓物は尿酸値を上げるのでいちばん食べてはいけない食材なのに。痛風の敵なのに。

いいのさ。尿酸値と中性脂肪を下げるために昨日も定期的に医者いったけど。

照月篇につづく

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鎌倉殿の13人 第32回 災いの種

2022-08-22 | 大河ドラマ

第31回「諦めの悪い男」はこちら

元同僚と居酒屋で飲んでいて、この大河の話になる。

「義時の最初の奥さんって、新垣結衣だったじゃん」

「うん。」

「でも俺はさ、二番目の人の方が好きかな。名前も知らないけど」

堀田真由です。わたしも知りませんでした。

「実は俺、新垣結衣ってちょっと苦手で」

好き好きというものはあるものだ。その堀田真由が、比企の縁者であることで退場。北条の嫁として実家を裏切ったにもかかわらず。

それにしても気合いの入った演出だった。二度の平手打ちが描かれるが、小池栄子と小栗旬が対峙するシーンはおみごと。

脚本も相変わらず周到で、まず善児(梶原善)の弟子トウ(山本千尋)のキレキレの体技での惨殺を描き、そして子どもの前に善児が立ちはだかる。これはもうこの暗殺者のためにまた子殺しが行われるだろうと思わせて……

逆に、善児がその子を育てている皮肉。義時に殺せと命ぜられるが、一度は断る善児の表情が悲しい。

「わしを好いてくれている」

この大河で最も恐ろしい存在だった善児をも突き放す義時。ついにこの大河におけるもっともダークな存在に義時が昇格した瞬間。

第33回「修善寺」につづく

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うまい店ピンポイント 吉野家2022

2022-08-20 | 食・レシピ

米沢熊文篇はこちら

「伍長、やっぱり疲れてたんですね。昨日は同じ画像で2回アップしてましたよ」

「帰りに一杯やりたかったー」

「んで今日は吉野家ってどういうことですか。なに日和ってるんすか」

「牛丼で日和ってるって言われてもなあ」

何度も言うように、わたしは吉野家道有段者だ。何十年通ってると思ってるんだ。やみくもに牛丼が食いたくなる瞬間がある。んで、なにもめんどくさいことは言わずに

「並と味噌汁」

オーダーはそれだけ。いいでしょそれで。つゆだくがどうしたのとかしゃらくさいこと言ってんじゃねーよ。

今回はびっくりだった。向かいのテーブル席に座った若い連中が

「りんごジュースないっすか」

クラッときた。

んで、あるらしいのもびっくり(笑)いやあ帰りに一杯やりたかったなあ。りんごジュースじゃなくてよ。

なんと四十番篇につづく

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