夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ネコを探して』

2011年05月10日 | 映画(な行)
『ネコを探して』(原題:La Voie du Chat)
監督:ミリアム・トネロット
アニメーション監督:ジェローム・ジュヴレ

フランスの女流監督によるドキュメンタリーです。
アニメーションと実写を織り交ぜた構成で、趣向が凝らされています。

まずはアニメーションでスタート。
主人公のナレーションのもと、フランスのサロンに集う文化人たち。
悪魔の化身とみなされてきたネコが、自由の象徴となるまでの過程が語られます。
ネコ‘だけ’が描かれた絵画が登場するようになった時期、
安藤広重が描いたネコ独特のポーズや夏目漱石の著作が西洋文化に与えた影響など、
ほ~、なるほどと感心することしきり。

やがて、サロンから抜け出す主人公の飼い猫、クロ。
クロは鏡の中へと飛び込み、それを追う主人公とともに、
私たちのネコを知る旅がはじまります。

イギリスの国営鉄道時代、ネコは立派な職員でした。
信号所の脇のケーブルをかじるネズミを退治するため、
ネコは付近を定期的に見回る役目を果たし、エサ代も支給されていました。
ところが、民営化されてからは、ネコのエサ代は無駄だとばっさり。
当時を知る職員たちは、ネコたちの働きぶりを称賛しています。

また、アメリカのロードアイランド州の病院には2匹のネコが常駐。
そのうちの1匹は、有名な「おくりねこ」。
死期が近づいた患者の部屋へと入り、寄り添うのだそうです。
なぜかいつも最期のほぼ4時間前。
そのような患者が二人いる場合、ネコは迷うそぶりを見せた末、
最期を看取る者がいないほうの患者の部屋へ入るのだとか。

クロを追って日本へもやって来ます。
水俣市では、漁網に近づく他の動物を追い払う役目をネコに預けていました。
人びとはとれとれの魚をネコに与え、その代わり、ネコたちは漁網を守ります。
あのチッソの事件のとき、まずネコたちの体に異変が起きたのでした。

そのほか、和歌山のネコ駅長、たまも登場。
ミネソタ州のネコと一晩過ごすことのできるホテル。
このホテルのネコは人を和ませるプロです。
京極夏彦の小説にも出てきた招き猫の逸話にもニヤリ。

猫や犬など、ペットたちが置かれた状況を描いた作品としては、
数カ月前にTV番組『人生が変わる1分間の深イイ話』でも取り上げられた、
飯田基晴監督の『犬と猫と人間と』(2009)が記憶に新しいところ。
『ネコを探して』はより世界を広げ、人類とネコの関係の歴史を窺うことができます。

旅の終わりに何を見つけますか。

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