姫ちゃんと日比谷まで行ってきました。
春花きららさん達のお店に立ち寄って、お洋服やアクセサリーもみました。
きららさんに「わっかのドレスって舞台のそでではあっちもこっちも持ち上げて色々なものにひっかからないようにすごく気を遣って着ているので、全然綺麗じゃないんです」なんてお話を聞いて、そりゃそうだなあと。
大劇場の衣装スタジオでも、せっかく着たアントワネット様の衣装を、裾を引きずることなくカメラの前に立たないといけなくてスタッフのお姉さんが二人がかりでドレスを持ち上げてましたしたね。
うたかたの恋
小柳奈緒子の潤色は大成功で、これぞ現代の「うたかたの恋」でした。
今までだらだら感が強かったハムレットのシーンや、銀橋でのやりとりなどをばっさり切って、新しいシーンを加える。
本当に見ごたえのある作品に生まれ変わって嬉しかったです。
(名作と言われる「うたかたの恋」ですけど、正直私は苦手な作品でした。皇帝と喧嘩するシーンまでがだらだらしててねえ)
演技指導に彩吹真央が入り、振付に百花沙里が入ってよかったですよね。
幕開きから柚香光も星風まどかも泣いているんじゃないか?くらいの思い入れで演じてくれてました。
今までの「うたかたの恋」のルドルフとマリーの位置づけというのは、まさしく皇帝の圧力に負ける孤独な皇太子と、マリーの純愛だったと思います。
しかし、小柳演出のルドルフはもっと政治家で感情の起伏が激しくもろくて、わずか16歳の少女に救いを求める強そうで弱い皇太子です。
ゆえに、妃のステファニーがとても気の毒になりますし、マイヤーリンクも一歩間違えばルドルフのエゴによって殺されてしまった処女娘という風に見えます。
現代におけるマイヤーリンクの位置づけは、純愛ではなくルドルフが自殺の道連れにたまたま選んだのがマリーであったというものですし、あるいは、ルドルフとマリーは暗殺されたというのも有力な説になっています。
だから、ジャン・サルバドル大公はよりルドルフと対照的な道を行き、フランツ・フェルディナンド大公はゾフィ・ホテクの為にルドルフ逮捕に向かうという関係性がより強く見えるようになりました。
フランツ・フェルディナンド大公はのちにサラエボ事件で暗殺される人です。
ハプスブルク家では貴賤結婚による悲劇は多々ありました。
皇室の厳しいしきたりをしっかり受け入れる人がいる一方で、どうしても「自由」が欲しいと貴賤結婚を選んで自ら皇室を去っていく人も多かったのです。
目新しいシーンとしては、マリーがいなくなって荒れるルドルフが酒場で飲み過ぎて銃を取りだし妄想にかられ自殺しようとしたシーンです。
彼もまたヴィッテルスバッハ家の血を引いているわけですから、精神的に問題があっても不思議ではない。繊細で理想家であるがゆえに思いのままにならないと絶望に打ちひしがれる。
そこに登場したマリー・ヴェッツエラはか弱い少女ではなく、聖母のごとく現れます。
しかし彼女を見て「いまさらなぜ?結局お前もスパイか」というルドルフの屈折したセリフが素晴らしいこと。そこからマリーにすがりついて「お前がいないとダメなんだ」という弱いルドルフの気持ちがよくわかりすぎるとか。
このシーンがあるおかげで、観客はさらにルドルフの苦しみを共有し、マイヤーリンクの悲劇の序章が開けたと思うのです。
普通に考えると30過ぎのおじさんが、16歳の少女にすがりついて「お前がいないとダメ」って言える、そりゃないでしょ~~って所ですが、16歳だからこそ騙されてしまう、素直に共感して素直に「私がいないとダメなんだわ。では一緒に死ぬの。しれが崇高な愛なのよ」と思い込む。
ここにある種、ルドルフの狡猾さというか人たらしの部分が出るんですよね。
皇帝にステファニーとの離婚を却下されて、唇をわなわな震わせるルドルフの怒りと絶望。
そしてマイヤーリンクに向かうルドルフの狂気が見えて感動しました。
死ぬ直前の二人はぼろぼろ泣いてて、星風の涙をぬぐう柚香の優しさを感じたり、銃の場面ではもう・・鼻水たらしてまで泣く・・のに感動してもらい泣きしました。
確かにこの作品は代表作になるんじゃないかなと思います。
ENCHANTMENT
野口幸作に言いたいです。
「香水」をテーマにしたまではいいけど、ショー全体に一貫性がなく、場面場面が何を言いたいのかよくわからず、多分それって二度3度見ても同じなんじゃないかと。
理由は柚香光を出ずっぱりにしたことで、音楽にふわさしい振付が出来なかったこと。平面的で総踊りばかりの作品になりました。
音楽も色々好みに合わせて選んでいるんだろうと思いましたが、お粗末。
音の一つ一つにもっとオリジナル性と工夫が欲しかった。
聞いた事ばかりあるものを聞きたくはないし、アレンジを変えて欲しいし、もっとキレのある振付で観たかったです。
「香水」を表面的に捕らえ過ぎたのではないですか?
例えば組長が調香師でそこから様々な香りが生まれるといった設定ならもっとわかりやすかったと思ったし、柚香光を「ムスク」にして、様々なものに生まれ変わっていくとか、そういう発想はなかったんでしょうかね。
ネタ切れ、想像力なし、自分の好みに走る・・こればかりやってるとスターを生かす事は出来ません。
自分はあくまで影の存在であることを忘れない様にしてください。
出演者について
柚香光・・・ますます人たらしの技術があがって、もう観客を釘付けにする力の強い事。ルドルフが憑依しているんじゃないか?という演技っぷりでした。ショーでは欠点を補おうと、必死に小技であれこれやってましたね。
みんあ柚香光に頼りすぎなの。花組の先行きが心配です。
星風まどか・・・マリーとしては可愛らしく可憐に演じていたと思います。ショーでも素敵なデュエットダンスに酔いしれました。
とにかく今は幸せそうで、全てのファンにうらやまれる娘役になったんだなと。
水美舞斗・・・マイティって少し影のある笑顔で、おっとりしてるんです。柚香光がスパークする光を優しく包む役だったのに、その姿が見られないのが残念。特に今回は専科へ行くので最後のショーでしょう?
そうせだったら柚香とマイティの激しいダンス対決くらいみたかったなと思いました。
永久輝せあ・・・苦悩にみちたフランツ・フェルディナンド大公をよく演じていました、演技派なのはよくわかるのですが、ショーでは落ち着き払って冷静に見えてしまう。もう次期2番手なんだから若手の中には入れない方がいいのでは。
聖乃あすか・・・ブラッドフィッシュのわりには育ちがよさそうで、こればかりは星組版(麻路さき)にはかなわないなと。
ショーでは美しいドレス姿を披露してマイティと「禁断の愛」を踊ったわけですが、私にはどこが禁断だったのかわかりません。
もっと若手を真ん中において頑張って貰わないと、花組に明日はないぞと思いました。