ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

戦時中の動物たち №4

2009-01-16 | Weblog
 いい本に出会いました。高島春雄著『動物渡来物語』(日本出版社刊・昭和22年3月発行)。著者の高島さんは、明治40年(1907)東京生まれ。昭和11年に東京文理科大学卒業後、同大講師をつとめ、後に山階鳥類研究所研究員、早稲田大学講師をつとめられました。動物学・博物学者。昭和37年5月31日(1962)、逝去。
 『動物渡来物語』は昭和19年10月までに原稿を書き終えられていたのですが、戦争末期に動物の物語など出版が不可能です。結局22年の刊行になったのですが、本文を読むとどうも敗戦の年、昭和20年の暮れには脱稿しておられる。
 この本を入手することはいまでは困難です。何人かの方に読んでいただきたく、今日から6回ほどの連載予定で、一部抜粋で転載させていただこうと思っています。なお文は、現代語にかえ、いくらか書きかえています。

 このように紹介してきた『動物渡来物語』です。念のため、インターネットで古書を調べてみました。すると驚いたことに、2千円とか3千円くらいの安値でこの本がみつかるのです。紙事情の悪い戦後すぐ、不思議です。わたしが手に取ったのも、図書館のボロボロの1冊です。
 調べてみて気づいたのですが、昭和30年に増補版が、学風書院から出版されていました。これは紙質もよく、内容も豊富です。興味ある方はWEB「日本の古本屋」で購入ください。増補版がおすすめです。
<2009年1月16日 阪神淡路大震災記念の前日>
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戦時中の動物たち №3

2009-01-03 | Weblog
 高島春雄著『動物渡来物語』(日本出版社刊・昭和22年3月発行)。現代語表記にあらためて、同書「猛獣渡来考」からの転載です。

 日本各地と新京[満州国首都・長春]を加えた日本動物園水族館協会は、昭和18年5月現在で19の会員を擁していた。同月下旬に名古屋市で開かれた協会第4回協議会での議題をみると、動物飼料入手の状況、ならびに対策について、飼料自給方策と代用食について、飼料の県外移出許可申請について、その他食糧問題が最も重要な事項になっている。
 象のような大食漢もいるし、小食者でも何百匹、何千羽となっては、こういう時世では飼料の調達がたいへんである。動物園へ配達してくれるどころか、園の係員が現金を持参して、中央市場へ買出しに行かねばならず(大阪市での場合)、市の農園にできる蔬菜を融通してもらい、毎日ガタ馬車で運んでくるが、それは動物園全体の需要量の半分にしかならない(東京での場合)。
 動物園や水族館も戦時下にはそれに即応した適切な経営方策を講じねばならぬが、それにしても餌料問題は常につきまとってくる。各園の当事者は極力自給自足につとめるとともに、必要な餌料の即時配給を切望した。
 関西方面の動物園で象が餓死したという話を聞くにつけ、上野動物園ですべての動物を餓死させなかった福田技師その他の方々の努力に、多大の敬意を表するものである。
 象はこれまで園から支給される食料のほかに、目の前に置かれた自由販売の餌、それに見物人がつぎつぎと投げ込んでくれるアンパン、センベイ、ビスケット、キャラメルなどの応接に暇ないほどあった。しかし戦況悪化とともに間食が完全に途絶したのであるから、園からの食料が十分でなかったら、てき面にこたえてくる。
 上野動物園における猛獣処分という非常措置を、食料問題にも関連させた人が多いが、愛犬家が自分の食物を節しても犬のご飯は事欠かさぬように、多年愛育してきた園の人々の事ゆえ、食料の最小限度は確保してやる決意に燃えていたに相違ない。<2009年1月3日 謹賀新年 続く>
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