電子書籍の普及は、出版業界にどのような影響を及ぼすでしょうか? 京都新聞ホールで京都MICフォーラム「デジタルメディアとジャーナリズム」が8月21日に開催されました。友人に誘われ、わたしも出席し話しを聞きましたが、ゲストのおふたり、藤代裕之と烏賀陽弘道両氏は「紙と電子、これからどうなっていくのか、正直なところ分からない」
出版社はすでに赤字の社が多い。超大手は、小学館・講談社・集英社だが、前2社は2年連続の赤字決算。集英社は前期、はじめての赤字になってしまった。
書店も苦しい。黒字を計上している社は少ない。全国チェーンの大手は安泰だろう、という方がおられるが、売り場面積が広いだけに家賃が高い。大手書店のほぼすべては、売り場を賃貸で借りている。
海外だが、アメリカ最大の書店、バーンズ&ノーブルはついに会社を売りに出したようだ。大手のもう1社、ボーダーズは、たばこ会社に身売りしてしまった。「B&Nとボーダーズが経営統合し、リアル店舗を大幅に閉鎖することでしか、今後の生き残り策は描けないのかもしれない」<「週刊東洋経済」2010年7月3日号>
2009年3月時点でみると、日本の電子書籍の売り上げは、年わずか464億円にしか過ぎない。全国の雑誌・書籍売上は、減ったとはいえ2兆円近くある。アメリカの電子書籍売上はそれよりも少ない150億円ほどである。現状では電子書籍はまだまだ、紙本屋の敵ではないのです。
しかし、これから電子書籍が順調に伸びれば、すでに疲弊している本屋は、持ちこたえられなくなってしまうでしょう。数年にして紙の本屋は、雪崩を打って押しつぶされていくのではないか。
新しく誕生したキンドルやアイパッドが、紙本業界を打ち破るのではない。すでに数年前から崩壊のきざしは見えていたのである。書店も多くの出版社も、将来に希望を持てない状態にあった。赤字経営が、たくさんの社で常態化しつつあったのである。これ以上、経営が悪化すれば、たくさんの本屋と出版社は、業界から退場するしかない。電子書籍のわずかの動きが、長年の大雨でゆるんでいた地盤を、あっけなく崩壊させるのである。
本格的なデジタルの電子書籍時代を迎えようとしているいま、新時代の扉が開こうとする直前に、既存の書籍業界は地崩れを起こしてしまいそうである。1990年に3万軒あった書店は、いま半分の1万5千軒ほど。あと数年にして、5千軒ほどになってしまうという予測もある。
そうなれば本を創作する著者が作品を発表するチャンスと収入が減ってしまう。すでに総合誌など、雑誌が大幅に休刊してしまい、書き手は発表の場と収入が縮小してしまった。
新作を書いても、作家は十分な印税・著作権料を得られなくなってしまう。本屋が激減することによって、紙の本は発行部数・点数とも極端に減ってしまうのである。電子書籍では著者の望むだけの権料は、おそらく獲得が困難であろう。
プロの著者・ライターが十分な収入を得られなくなると、出版文化は崩壊に向かう。著作収入以外に安定した所得のある著者、それとごく少数の売れっ子作家、著作市場は彼らの独壇場になってしまうでしょう。著者の疲弊と減少のため、紙本と電子本は、あと数年にして共倒れしてしまう可能性を感じます。そして残るのはもうひとつ、ロングテールの素人作家でしょう(わたしも?)
なぜこのような事態になってしまったのでしょうか? 新聞の苦境同様、本も雑誌も、インターネットに負かされたのだと、わたしは思います。最新のニュースも、たいていの情報も、コンパクトなかたちで、だれでもがネットで簡単に手に入れることができるからではないでしょうか。最大の原因はインターネットです。20世紀の終盤には、すでにはじまっていました。書店、すなわち出版社の売上ピークは1996年でした。
<2010年8月29日>
出版社はすでに赤字の社が多い。超大手は、小学館・講談社・集英社だが、前2社は2年連続の赤字決算。集英社は前期、はじめての赤字になってしまった。
書店も苦しい。黒字を計上している社は少ない。全国チェーンの大手は安泰だろう、という方がおられるが、売り場面積が広いだけに家賃が高い。大手書店のほぼすべては、売り場を賃貸で借りている。
海外だが、アメリカ最大の書店、バーンズ&ノーブルはついに会社を売りに出したようだ。大手のもう1社、ボーダーズは、たばこ会社に身売りしてしまった。「B&Nとボーダーズが経営統合し、リアル店舗を大幅に閉鎖することでしか、今後の生き残り策は描けないのかもしれない」<「週刊東洋経済」2010年7月3日号>
2009年3月時点でみると、日本の電子書籍の売り上げは、年わずか464億円にしか過ぎない。全国の雑誌・書籍売上は、減ったとはいえ2兆円近くある。アメリカの電子書籍売上はそれよりも少ない150億円ほどである。現状では電子書籍はまだまだ、紙本屋の敵ではないのです。
しかし、これから電子書籍が順調に伸びれば、すでに疲弊している本屋は、持ちこたえられなくなってしまうでしょう。数年にして紙の本屋は、雪崩を打って押しつぶされていくのではないか。
新しく誕生したキンドルやアイパッドが、紙本業界を打ち破るのではない。すでに数年前から崩壊のきざしは見えていたのである。書店も多くの出版社も、将来に希望を持てない状態にあった。赤字経営が、たくさんの社で常態化しつつあったのである。これ以上、経営が悪化すれば、たくさんの本屋と出版社は、業界から退場するしかない。電子書籍のわずかの動きが、長年の大雨でゆるんでいた地盤を、あっけなく崩壊させるのである。
本格的なデジタルの電子書籍時代を迎えようとしているいま、新時代の扉が開こうとする直前に、既存の書籍業界は地崩れを起こしてしまいそうである。1990年に3万軒あった書店は、いま半分の1万5千軒ほど。あと数年にして、5千軒ほどになってしまうという予測もある。
そうなれば本を創作する著者が作品を発表するチャンスと収入が減ってしまう。すでに総合誌など、雑誌が大幅に休刊してしまい、書き手は発表の場と収入が縮小してしまった。
新作を書いても、作家は十分な印税・著作権料を得られなくなってしまう。本屋が激減することによって、紙の本は発行部数・点数とも極端に減ってしまうのである。電子書籍では著者の望むだけの権料は、おそらく獲得が困難であろう。
プロの著者・ライターが十分な収入を得られなくなると、出版文化は崩壊に向かう。著作収入以外に安定した所得のある著者、それとごく少数の売れっ子作家、著作市場は彼らの独壇場になってしまうでしょう。著者の疲弊と減少のため、紙本と電子本は、あと数年にして共倒れしてしまう可能性を感じます。そして残るのはもうひとつ、ロングテールの素人作家でしょう(わたしも?)
なぜこのような事態になってしまったのでしょうか? 新聞の苦境同様、本も雑誌も、インターネットに負かされたのだと、わたしは思います。最新のニュースも、たいていの情報も、コンパクトなかたちで、だれでもがネットで簡単に手に入れることができるからではないでしょうか。最大の原因はインターネットです。20世紀の終盤には、すでにはじまっていました。書店、すなわち出版社の売上ピークは1996年でした。
<2010年8月29日>