佐渡のトキがすくすく育っているようです。ヒナ3羽の性別はまだわかりませんが、三兄弟あるいは姉妹の巣立ちが楽しみです。またほかにも、たくさんのペアが抱卵中。もしかしたら今夏、若鳥たちの乱舞が島のいたるところで見られるかもしれません。ちなみに自然繁殖は36年ぶりだそうです。
サンクチュアリという言葉があります。わたしはてっきり野生動物たちの楽園くらいに思っていました。辞書を見てみましたが、鳥獣の保護区禁猟区とあります。またゲリラの安全な隠れ場所というのには苦笑してしまいました。要は、ほかから攻撃などが加えられない特別区域なのでしょう。本来は、ヨーロッパ中世に法律が及ばなかった教会や神殿などの聖域だそうです。
ところで佐渡島ですが、住民がトキとともに暮らしています。釧路湿原の丹頂鶴ことタンチョウや、舞鶴沖の冠島のオオミズナギドリ、鳥島のアホウドリなどは、人間から隔離されています。マレーシアで年初に保護された冠島のオオミズナギドリは足の標識から、40歳以上だったそうです。野鳥の長寿日本記録を塗りかえたそうです。ちなみに日本産最後のトキだった愛称「キン」は2003年に死亡しましたが、年齢は36歳とみられています。大型の野鳥は結構長生きですね。キンさんギンさんもびっくりでしょうね。
人間と共生する地域での野生動物たちは、生きるのがたいへんだろうと思います。佐渡市では農薬や化学肥料の使用量を大幅に減らしておられる。トキが好むのはドジョウ、サワガニ、カエル、ミミズや昆虫など。それらが健全に育たねば野生トキは滅びます。
しかしトキは本来は害鳥です。餌を求めて田畑を歩き回り、長いクチバシを泥に突っ込み稲苗を荒らす。だが住民はトキとの共生を決意しました。いま環境保全型農業は結実しつつある。4年前から発売を開始した佐渡島産コシヒカリ「朱鷺と暮らす郷米(さとまい)」は好評で、作付面積は数年で3倍以上に増えたそうです。ドジョウやタニシ、トンボもバッタもあらゆる生物が、豊かな生態系のなかでどんどん増えています。害のある薬品の使用量を減らしたトキにやさしい環境は、すべてのひとと動物に健全な恵みを与えています。ヒトも動物ですが。
野の鳥を「野鳥」とよんだのは中西悟堂(1895~1984)です。野鳥の観察や保護に先鞭をつけた「日本野鳥の会」の創設者です。彼の短歌に朱鷺がいくつもあります。
狭間には水田ありて幾なだり 丘につづくなり朱鷺くる山は
高松の梢のこの巣は国あげて 十となき巣ぞ朱鷺のかけし巣
ところでサンクチュアリですが、地球上で最長の楽園があります。延々248キロ、幅は4キロと狭いのですが面積は東京都の約半分にもなります。その場所は意外なことに朝鮮半島。だれも立ち入ることのできない地雷が埋まった南北朝鮮非武装地帯です。もう60年間、動植物の完全な聖域になっています。
鹿児島県の出水平野はナベヅルとマナヅルの越冬地として有名です。シベリア近くから飛来する彼らの渡り中継地に、38度線が重要な位置をしめているのです。ツルは体重が6キロほどと軽いため、地雷の被害は受けません。それにしても皮肉なことに、南北対立の結果設けられた臨戦地帯が、半世紀以上にわたって完璧な聖域になっているのです。
ツルの渡りをはじめて宇宙から調べた本があります。少し古いのですが、興味ある方におすすめです。日本野鳥の会・樋口広芳編『宇宙からツルを追うーツルの渡りの衛星追跡』1994年 読売新聞社
<2012年4月29日>
サンクチュアリという言葉があります。わたしはてっきり野生動物たちの楽園くらいに思っていました。辞書を見てみましたが、鳥獣の保護区禁猟区とあります。またゲリラの安全な隠れ場所というのには苦笑してしまいました。要は、ほかから攻撃などが加えられない特別区域なのでしょう。本来は、ヨーロッパ中世に法律が及ばなかった教会や神殿などの聖域だそうです。
ところで佐渡島ですが、住民がトキとともに暮らしています。釧路湿原の丹頂鶴ことタンチョウや、舞鶴沖の冠島のオオミズナギドリ、鳥島のアホウドリなどは、人間から隔離されています。マレーシアで年初に保護された冠島のオオミズナギドリは足の標識から、40歳以上だったそうです。野鳥の長寿日本記録を塗りかえたそうです。ちなみに日本産最後のトキだった愛称「キン」は2003年に死亡しましたが、年齢は36歳とみられています。大型の野鳥は結構長生きですね。キンさんギンさんもびっくりでしょうね。
人間と共生する地域での野生動物たちは、生きるのがたいへんだろうと思います。佐渡市では農薬や化学肥料の使用量を大幅に減らしておられる。トキが好むのはドジョウ、サワガニ、カエル、ミミズや昆虫など。それらが健全に育たねば野生トキは滅びます。
しかしトキは本来は害鳥です。餌を求めて田畑を歩き回り、長いクチバシを泥に突っ込み稲苗を荒らす。だが住民はトキとの共生を決意しました。いま環境保全型農業は結実しつつある。4年前から発売を開始した佐渡島産コシヒカリ「朱鷺と暮らす郷米(さとまい)」は好評で、作付面積は数年で3倍以上に増えたそうです。ドジョウやタニシ、トンボもバッタもあらゆる生物が、豊かな生態系のなかでどんどん増えています。害のある薬品の使用量を減らしたトキにやさしい環境は、すべてのひとと動物に健全な恵みを与えています。ヒトも動物ですが。
野の鳥を「野鳥」とよんだのは中西悟堂(1895~1984)です。野鳥の観察や保護に先鞭をつけた「日本野鳥の会」の創設者です。彼の短歌に朱鷺がいくつもあります。
狭間には水田ありて幾なだり 丘につづくなり朱鷺くる山は
高松の梢のこの巣は国あげて 十となき巣ぞ朱鷺のかけし巣
ところでサンクチュアリですが、地球上で最長の楽園があります。延々248キロ、幅は4キロと狭いのですが面積は東京都の約半分にもなります。その場所は意外なことに朝鮮半島。だれも立ち入ることのできない地雷が埋まった南北朝鮮非武装地帯です。もう60年間、動植物の完全な聖域になっています。
鹿児島県の出水平野はナベヅルとマナヅルの越冬地として有名です。シベリア近くから飛来する彼らの渡り中継地に、38度線が重要な位置をしめているのです。ツルは体重が6キロほどと軽いため、地雷の被害は受けません。それにしても皮肉なことに、南北対立の結果設けられた臨戦地帯が、半世紀以上にわたって完璧な聖域になっているのです。
ツルの渡りをはじめて宇宙から調べた本があります。少し古いのですが、興味ある方におすすめです。日本野鳥の会・樋口広芳編『宇宙からツルを追うーツルの渡りの衛星追跡』1994年 読売新聞社
<2012年4月29日>